巻頭特集

飲み方を楽しめる魅惑的なお茶の世界を旅してみよう

今ひそかにブームとなっている中国茶。お茶の発祥の地、中国で生まれた奥深い中国茶を知って、さまざまな香りや味、飲み方を楽しめる魅惑的なお茶の世界を旅してみよう。(取材・文/キム・クンミ)


ニューヨーカーも大注目
歴史と共に進化する中国茶の魅力

近年ニューヨーク市内でも中国茶を楽しめるティーハウスが続々とオープンし、コロナ禍の自粛生活や雑多な都会生活の中で、ストレスを抱える人や違ったライフスタイルを求める人たちに人気が高まりつつある。そんな中国茶について、中国茶の普及につとめるNGO団体「ニューヨーク・ティー・ソサエティー」の代表、ロイ・ランバーティさんに話を伺った。

種類豊かな中国茶

中国茶の種類は実に数百にも及ぶ。発酵の有無やその過程などの製造法をもとに主には「青茶、緑茶、黒茶、紅茶、黄茶、白茶」と6種類の「色」で分類される。日本でもなじみ深いウーロン茶は青茶、プーアール茶は黒茶に分類され、中国で最も飲まれているのは緑茶なのだそうだ。ジャスミン茶や花を結んだ加工茶も緑茶がベースになっているものが多い。

紅茶は中国福建省の武夷山(ぶいさん)が発祥の地とされている。イギリスが中国で買い付けていた紅茶の決済手段をもとにアヘン戦争が起こったり、米国がイギリスから独立するきっかけにもなったボストン茶会事件など、中国発祥の紅茶が世界の歴史に与えた影響を考えてみるのも面白い。ロイさんは、「独立戦争当時にはイギリス的なものを避ける傾向があったのが、米国でコーヒーが飲まれるようになった要因の一つ」と話す。

日本でダイエット茶として人気のあるプーアール茶は、主に生茶と熟茶がある。生茶はおいしく飲めるようになるまで少なくとも5年はかかるために比較的高価なものも多い。人工的に発酵させる熟茶は1年目から飲むことができ、かび臭いイメージがあるが、丁寧につくられたおいしい熟茶もあるので試してみてもいいかもしれない。

中国茶が好まれる理由

「近年、中国茶に人気が集まってきたのには三つの理由があります」とロイさん。一つには世代間で嗜好が変わってきたこと。中国では生活に根づいたお茶よりコーヒーに人気があり、米国では反対に、若い世代は新しい飲み物としてお茶を求めるようになった。

また、お茶はソーシャルツールとして機能すること。5ページで紹介する「お茶会」を通して、仲間との出会い、茶器や茶葉にまつわる話などを通じてどんどん世界が広がっていく。

そして最後は、精神的な憩いとなること。中国茶は主に都会で親しまれている。忙しい生活の中で、お茶を味わうゆっくりとした時間を持つことは、ある意味、瞑想と通じるものがあるのだろう。お茶会の中には瞑想と組み合わせたセッションもあるほどだ。

市内でお茶を楽しむ

ニューヨーク市内で中国茶を楽しむ方法は二つある。まずは4ページでも紹介する中国茶を専門に扱うティーハウスだ。コロナ禍で店内でお茶を楽しめるのはイーストビレッジの「ティードランク」のみだが、その他のティーハウスも順次店内での提供を検討中なので、電話で確認してみるといい。

もう一つの方法は「お茶会」。コロナ禍で対面式のお茶会を避けるためバーチャルでお茶会を開催している団体もある。バーチャルお茶会に参加を申し込むと、自宅にお茶が届き、決められた日時に参加者と一緒にお茶を楽しむことができる。中国茶を愛好するコミュニティーとの出会いの場としても、一度参加してみるのもおすすめだ。

 

 

 

 

ロイ・ランバーティさん
ニューヨーク・ティー・ソサエティー代表

シェフとして30年以上のキャリアを持つ。
香港で35年物のプーアール茶と出会い、人生が変わる。
以後、機会があれば中国のお茶の原産地に出かけ、ニューヨークでも中国茶の普及と促進に努めている。
同団体の創始者。
newyorkteasociety.com


蓋碗を使った中国茶の基本的な入れ方

まずは蓋碗、茶海、茶杯を用意する。1〜3人でカジュアルに飲むのがおすすめ。

 

1. 温めた蓋碗(がいわん)に茶葉を投入する。1回に煎じる茶葉の量は約5〜8g。

 

2. お湯を沸騰させ適温になったら、茶葉の上から注ぐ。

 

3. 蓋をして数分蒸らしたら、お茶を茶海に全て注ぐ。

 

4. 茶海から茶杯へ分けながら注ぐ。3煎から5煎、繰り返しながら飲む。

 

Photos by M’CHA

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