巻頭特集

日本人と米国の歴史の一部を学んでみよう

世界中から移民が集まる米国は日本と異なり、まだまだ歴史が浅い若い国だ。日本の先駆者たちが海をわたり、文化や社会の違いを学び、日本の発展に貢献した。しかし私たちは、その歴史をほとんど知らないまま米国に住んでいる。今号では、そういった歴史の一部を紹介していく。(取材・文/音成映舞)


より歴史日本

日本の歴史は、紀元前1400年ごろの旧石器時代から数えると、約10万年前といわれている。それに比べて、北米には恐らく紀元前1万年前に人類が生活をしていたとされ、先住民はおよそ紀元前8000ごろからいたとされている。その後、ヨーロッパから移民が入植し、時代と共に変化しながら歴史を作っていった。そして、イギリス植民地から米国が「独立宣言」を行ったのが1776年7月4日。それはわずか、245年前のことなのだ。

ニューヨークを訪れた
日本人たち

では日本人が実際に米国を訪れたのは、いつだったのだろうか。

それは1860年(万延元年)、日本初の公式訪問をしたのは、徳川幕府の外国奉行であった、新見豊前守(しんみぶぜんのかみ)率いる遣米使節団だった。彼らは、日米修好通商条約の批准書交換のためにワシントンを訪れ、その後、ニューヨークやフィラデルフィアなども訪問した。そして昨年は、そのニューヨーク訪問から160年を迎える、記念すべき年だったのだ。

また1872年(明治5年)3月、日本政府は富田鐵之助(てつのすけ)を領事心得に任命。ニューヨークに日本領事館を設置した。

米国という新しい国で、「アメリカン・ドリーム」を信じた多くの日本人たちには、現在までにさまざまな分野で活躍する者が海を渡り、さらに米国籍を取得して日系アメリカ人として日米の架け橋となった者もいる。

歴史評議会を発足

こうした先駆者たちの19世紀以降のニューヨークにおける資料の収集や保存を世界に向けて発信することや、未来へと語り継ぐことを目的に、在ニューヨーク日本総領事館を中心に、昨年12月、「ニューヨーク日本歴史評議会」が設立された。

同評議会では、政治・外交、経済、医療、文化、教育、学術、芸術、音楽、日本食などの日本コミュニティーに関連する、文書や写真、映像、書簡、報道を収集・整理し保存。同時に、埋もれてばらばらになり、忘れ去られている資料などを掘り起こして、個人や組織の功績、足跡、逸話などを記録していくという。

発起人には、在ニューヨーク日本総領事・大使の山野内勘二氏をはじめ、秋吉敏子さん(作曲家・ピアニスト)、古本武司さん(退役軍人)、キャロル・グラックさん(コロンビア大学教授)、本間俊一さん(コロンビア大学教授・JAMSNET代表)、ダニエル・イノウエさん(ニューヨーク大学客員教授)、河野憲治さん(NHKアメリカ総局長)、村瀬悟さん(弁護士)、前田正明さん(日本クラブ事務所長)、岡本徹さん(ニューヨーク育英学園学園長・理事長)、スーザン大沼さん(ニューヨーク日系人会会長)、髙岡英則さん(北米三菱商事会社社長)、ジョシュア・ウォーカーさん(ジャパン・ソサエティ理事長)、ボン八木さん(ニューヨーク日本食レストラン協会会長)、柳澤ロバート貴裕さん(米国日本人医師会会長)ら、総勢15人が参加している。

写真は発足時の様子で、活動はまだ始まったばかり。今後、収集した歴史的資料は一般市民への公開や、将来的にはニューヨーク日本歴史博物館の設置も目指しているという。

互いの歴史を知り、
未来へとつなぐ

昨年から続く新型コロナウイルスの影響から、アジア人に対する差別が過熱している。現在、多くの日本人が街を歩くことすら怖いと感じているだろう。だが米国という国は、多大な影響力を持つが、まだまだ若い国であるということを忘れてはならない。

長く培われた日本の歴史は、日本人として誇れる一つである。先駆者たちの活躍を知り、それを伝えていくことはもちろん、米国の歴史も学びながら互いを敬い、新たな歴史を共に作っていくことができるのではないだろうか。

次ページからは、近郊で歴史を感じられる場所を紹介していく。

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