巻頭特集

大学進学を考える日本と米国、二つの国で 学び暮らす選択

日本で唯一3カ国をまたいで米国大学の学位を取得
テンプル大学ジャパンキャンパスの新たな試み

ペンシルベニア州フィラデルフィアに本拠を置くテンプル大学の日本キャンパス(以下 TUJ)は、未だ知る人ぞ知る存在。その中身をアドミッションディレクターの竹本さんに聞いた。

昭和女子大と共有する新キャンパス

─TUJの存在意義

ユニークな点は、東京にありながら、米国の大学の教育が受けられること。現在約1850名の学生が在籍し、約40%が米国籍、約40%が日本国籍、残りの約20%は60カ国を超える国から集まっています。また教授陣も米国を初め、様々な国籍の教授がいます。キャンパス内にいると、ここが日本であることを忘れるような場所です。多文化に触れ、多様性を身につけることができ、毎年大学ランキングで上位グループにランクインされているので、質の高い教育を日本で受けることができます。

世界的なパンデミックが起きた後、人々の意識にも変化があり、これからは多様な価値観を身につけることが大切だと考えています。米国で生まれ育ち日本にルーツを持つ若者が、日本に来て母国と日本の違いに触れることは大変意義のあることです。東京は世界的なビジネスの中心地であり、その変化を目の当たりにすることができます。エンターテイメント業界でも独自のアプローチがあり、例えばアメリカと日本のディズニーランドを比較体験することで学べることも多い筈です。「違い」を実際に体験することで新たな価値観を身につけることができるのです。

「みんなのこと待ってます!」と学生たち

─米・日・欧で学ぶ大学

最大の特徴は、3つのキャンパス(フィラデルフィア、東京、ローマ)を自由に移動して学ぶことができることです。TUJの学生は、「Fly to Philly Program」に参加することで、最長1年間、TUJの学費のままフィラデルフィア本校に留学することが可能になりました。加えて、フィラデルフィア本校に出願する学生が、最初の1年間を日本やローマのキャンパスで過ごす「ジャパン・ファーストイヤープログラム」や「ローマエントリープログラム」を選ぶことで留学オプションが加速しています。この3つのキャンパス間の学びは、学生の成長を促進し、多角的な視野を養うことを支援するだけでなく、パンデミック後の社会変化に対応する教育の新しいアプローチとして注目されています。

─アカデミック支援

小規模ゆえに可能な、きめ細かいアカデミックアドバイジングは特筆すべき点です。学生一人一人に割り当てられるアドバイザーが、入学から卒業までの間学生達を支援します。アドバイザーは、常に学生の学業成績や活動を把握し、専攻や科目の選択などの相談に乗り、卒業時期や進路の具体的なプラン作成も、親身に対応します。

─就職での取組み

日本でも通年採用を行う企業が増えているため、就職時期は多様化しています。TUJでは、学生個々の卒業時期に合わせて、個別に就職活動の支援を行っています。就職部スタッフが、エントリーシートや面接対策のアドバイスを提供し、学生の目標やニーズに基づいたキャリアプラン作成を全面的にサポートしています。また、年に数回、多くの企業をキャンパスに招き、キャリアフェアを実施しています。業界をリードするプロフェショナル達と直接対話しながらネットワーキングができる、貴重な機会となっています。卒業生座談会も毎年開催され、在学生が就職活動に役立つコミュニケーションスキルやネットワーキングスキル向上のヒントを得る機会となっています。

─企業や就職先がTUJの学生に期待していること

企業は優れたコミュニケーション能力、対人スキル、問題解決能力を持ち合わせた人材を求めています。リモートワークの定着や離職率の増加により、新しい環境への順応性や異文化間の協調性が求められています。TUJで異なる文化的背景を持つ学生達と共に学び、日々異なる考え方に直面することで、問題解決能力を伸ばすことができるのです。

─これからの指針

AIの時代、大学のあり方も問われています。TUJでは、教授陣がチャットGPTを活用した勉強法を模索するティーチングサークルを作り、より良い指導法を共有しています。また、2023年夏学期からEスポーツ修了証明書プログラムを導入し、23年秋学期からは新たに「観光・ホスピタリティマネジメント学科」を追加するなど、教育の進化に果敢に挑戦しています。

キャリアフェアの様子

 

竹本正二郎さん
テンプル大学ジャパンキャンパス国内アドミッションディレクター

〈テンプル大学ジャパン〉
東京都世田谷区太子堂1-14-29
tuj.ac.jp/jp
〈フィラデルフィア本校〉
temple.edu


海外在住でも申し込める!海外の大学で学ぶ日本人学生を支援する給付型奨学金 

柳井正財団および笹川平和財団は、世界の舞台で活躍する新しいリーダーを輩出すべく、日本人学生がグローバルな水準で学ぶことを支援している。米国在住の日本国籍の高校生も、米国の大学進学のために申し込むことが可能。具体的な応募条件やプログラムに関する詳細は、各財団の公式ウェブサイトを参照。

通常、大学進学には高校の成績や入学試験(SATやACT)、エッセイ、推薦状などの書類が必要となるが、多くの大学が独自の入学要件や申請手続きを持っているので、米国大学進学に興味がある場合は、まず希望する大学の公式ウェブサイトで入学要件や申請手続きに関する情報を確認することが重要になる。

柳井正財団
yanaitadashi-foundation.or.jp

海外奨学金プログラムで、2017年より始まった返済不要の奨学金。公募制学校推薦海外大学奨学金(予約型)と公募制海外大学奨学金(合格型)がある。詳細はウェブサイト参照。

笹川平和財団スカラシップ
scholarship.spf.org

社会課題の解決に意欲があり、海外で学ぶことで成長したいとの考えを持つ者であれば、年齢や年収の制限なく申し込める給付型奨学金制度。


大学のダイバーシティー推進宣言

米国では、1960年代から70年代にかけて LGBTQ支援や発達障害を持つ学生などの、多様性・包括性に関する取り組みが各大学でスタートし今に至っている。日本ではようやく2010年後半から多くの大学で「ダイバーシティー&インクルージョン推進宣言」が始まった。その推進の理解とシステム進化のスピードは早く、期待と注目が高まっている。 具体的な取り組みとして、異なる性別・性的指向、民族・文化的背景、身体的な能力や特性を持つ人々の受け入れやサポート、アクセスの改善、 LGBTQに関する啓発活動やイベントの開催、学生団体の支援などが挙げられる。

発達障害の学生のニーズに応える取り組みは、各大学に設けられた「学生支援センター」「学生相談室」へ事前に問あわせることも可能である。

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