巻頭特集

楽しみ方いろいろVery Merry Christmas

世界のクリスマス、どう過ごす? 何食べる?

お国変われば祝い方も変わる。世界各地のクリスマスの過ごし方と伝統料理を聞いた。


クリスマスは聖ルシア祭からスタートスウェーデン(Kingdom of Sweden)

紀子さんの息子ペールさん(手前)、妻サラさん(奥)、孫のローバさん(サラさんの横)とルドビックさん(右奥)

スウェーデンのクリスマスは12月13日の聖ルシア祭から本格的に始まります。当日は聖ルシアに扮した少女たちが洗礼服を象徴する白いドレスと、殉教の血を象徴する赤い帯をまとい、ろうそくや花輪で作った冠をかぶり、「サンタルシア」を歌いながら行進します。これは「闇に覆われた世の中にキリストが光をもたらす」ことを意味しているとされ、別名「光の祭典」とも呼ばれています。

グロッグとジンジャークッキー。ジンジャークッキーは自家製が多いようです

プレゼントはクリスマスツリーの下に置き、イブのディナーの前後に開封します。自宅でのディナーならサンタの仮装をした男性がプレゼントを開ける役を引き受けることが多いです。

クリスマスの伝統料理

星の形をしたランプやキャンドルを窓辺に飾ります

スカンジナビア諸国の伝統的料理スモーガスボードのクリスマス版「ユールボード」を食べます。主なメニューは、サーモンの北欧風マリネ「グラバードラックス」やニシンの酢漬け、ミートボール、「ヤンソン氏の誘惑」と呼ばれるアンチョビとポテトのグラタン、シュリンプエッグ、ビーツサラダ、「ユールフィンカ」というクリスマスのポークハムなどです。そして、クリスマスに欠かせない飲み物が「ユールムスト」、ちょっと甘めのコーラのような味のノンアルコールの炭酸飲料です。グロッグは赤ワインにシナモンやレーズン、ナッツを加え温めたホットワイン。ジンジャークッキーと一緒にいただきます。

◆お話を聞いた人◆

大橋紀子さん
(ストックホルム市公認ガイド・通訳)


バドニャクと干し草、チェスニカとラキアセルビア(Republic of Serbia)

ボジッチのご馳走。手前が豚の丸焼き

正教会の信者が多いセルビアでは、ユリウス暦を採用しているため、クリスマスは12月25日から1月7日となり、イブに当たるのが1月6日になります。クリスマスはセルビア語で「ボジッチ」、イブは「バドニ・ダン」と呼びます。バドニ・ダンになったら、夜明けとともに一家の主人が森に行き、ナラの若木の丸太や小枝を斧で切り落とし家に持ち帰り、玄関横に垂直に立てかけておきます。ちなみにこの小枝は「バドニャク」と言い、教会の前庭で焼く儀式も行われます。日没後、バドニャクを家の中に持ち込み、乳香を焚きながら暖炉で燃やし、家族の健康と幸せを祈ります。居間の床には馬小屋で生誕したキリストを倣って干し草を敷きます。ボジッチの朝は家長と男たちが教会の礼拝に行き、女たちはご馳走の支度をします。

チェスニカとセルビア名物ウィートベリーのキャンドル

クリスマスの伝統料理

ボジッチ当日のメインディッシュは豚の丸焼き。前菜にサラミやチーズ、トマトとキュウリのサラダ、セルビアのロールキャベツ「サルマ」などが並びます。「チェスニカ」と呼ばれるイースト菌で発酵させない丸いパンや、プラムブランデー「ラキア」もボジッチの定番です。ラキアはつい先日、ユネスコの無形文化遺産に指定されました。

教会で炎にくべられるバドニャク

 

◆お話を聞いた人◆

オルガ・ニコリッチ-リットウィンさん
(絵画修復士)


仮面パレードでクライマックスにジャマイカ(Jamaica)

ジャマイカでは「クリスマス風」が吹く12月初旬から元旦まで、ノンストップでクリスマスを祝います。街角やヤシの木に色鮮やかなペッパーライトが飾られ、タクシーにもイルミネーションが施されます。イブは家族や友達と「グランマーケット」に繰り出してラストミニッツのショッピング。ボクシングデー(26日)や元旦には仮装して仮面をつけた人たちが音楽に合わせて踊ったり練り歩いたりする伝統行事「ジョンカヌー」が開催され、お祭り気分はクライマックスを迎えます。

クリスマスの伝統料理

ジャークチキン、魚の南蛮漬け(エスコビッチ)、ワイン漬けしたレーズンやチェリー、パパイヤ、デーツ、プルーン、シナモン、モラセスなどで作るフルーツケーキ「ブラックケーキ」、ハイビスカス科の赤い花ソレルにショウガと砂糖、スパイスを加えて煮出し、ホワイトラムを加えた飲み物「ソレル」など。

 

◆お話を聞いた人◆

© WikiPedant

シェリーアン・ケンダルさん
(看護師助手)


真夜中の連続ミサで祈りを捧げるフィリピン(Republic of the Philippines)

 

カトリック教徒が多いフィリピンでは9月から1月まで関連行事が続きます。最も重要なのが、タガログ語で「シンバン・ガビ」と呼ばれる真夜中のミサで、12月16日から24日のイブまでの9日間連続で、早朝3時から5時までの間に行われます。最終日には締めくくりの礼拝、ミサ・デ・ガロ(スペイン語で「雄鶏のミサ」の意味)があり、昔から「9つのミサ全てに参加した信者は特別な願いが叶う」と言い伝えられています。

クリスマスの伝統料理

紫芋のケーキ「プト・ブンボン」、ライスヌードル、またはエッグヌードルを野菜や肉と一緒に炒めた焼きそば「パンシット」、赤いパラフィンワックスでコーティングされたエダムチーズ「ケソ・デ・ボーラ」、パイナップル果汁でグレーズしたポークハム、バーベキューポーク(串焼き)など。

◆お話を聞いた人◆

© Ervin Malicdem

リリー・アラスコさん
(看護師)

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