巻頭特集

時代の荒波を生き抜いてきたコミュニティーガーデンの歴史と現在の姿を紹介

庭仕事って楽し〜い!

日本人が多く住むエリアにあるコミュニティーガーデンに参加するニューヨーカーに話を聞いた。


一般参加のイベントも充実

6ストリートとアベニューBの一角に広がる、総面積約1万7000平方フィートの緑の園。1984年から続く場所だ。

近隣住民が6つの居住用ビル跡地のがれきを撤去し、木を植えて現在の形に変えた。プロット(木枠で囲まれた花壇。使用権は希望者に先着順で与えられる)にはトマトやケール、色とりどりの花が植えられ、亀や魚が棲む池まである。春には竹林でタケノコが採れ、夏から秋にかけては桃や梨が実る。クレマチスが咲き誇るガゼボではパーティーができ、子供向けのアートクラスの他、コンサートや詩の朗読会など一般の人も参加できるイベントを随時開催している。

「都会に住んでいながら畑仕事ができるのが魅力。野菜を作るのは大変だけど、収穫の喜びはひとしお」と話すのは、92年から参加する渡部則子さん(写真下)。プロットではこれまでさまざまな野菜を育ててきたが、今はもっぱらミョウガ作りに励んでいる。「日本風庭園を作ってほしい」とのリクエストを受け石庭も作った。メンバーには、環境や政治関連の活動家が多く、月1回行われる会合ではいつも議論が白熱するそうだ。

 

6 & B ガーデン
The 6th & B Garden

E. 6th St. & Ave. B/newsite.6bgarden.org


ヒッピーチックなゲリラガーデン

地下鉄7番線ハンターズポイントアベニュー駅から徒歩約7分。旧デグノンターミナルの廃線跡地に広がる、総面積約100万平方フィートのジャングル。市内にあるコミュニティーガーデンの多くはフェンスに囲まれ、週末以外は鍵を持つメンバーしか入れないが、ここはフェンスもなくいつでも誰でも立ち寄れる。

環境活動家のギル・ロペスさんらが2011年に立ち上げた。無許可で始めたため、「ゲリラガーデン」と呼ぶ人も。「環境保全、教育、協調を通じて地域社会に力を与える」との趣旨に共鳴する人なら誰でも参加可能。メンバー全員がプロットの世話をし、収穫物も全員で分け合う。廃線沿いの小道を歩いて行くと劇場があったり、野良猫の餌場があったりとヒッピーな雰囲気。

サニーサイドから歩いて来るというシンディーさん(写真下)は、昨年5月からメンバーになった。新型コロナウイルスの感染拡大でファーマーズマーケットがコンポストの引き受けを中止したため、生ごみを持って来るようになったのがきっかけだという。「10年前はごみ捨て場だったなんて信じられない」と話した。

スマイリング・ホッグスヘッド・ランチ
Smiling Hogshead Ranch

25-30 Skillman Ave., LIC/smilinghogsheadranch.org


丁寧に管理された秘密の園

ケンジントンの住宅街の中に、ひっそりと佇む秘密の園。地下鉄F線の建設用地として1930年代に更地にされたが、結局は使われず空き地となっていた場所を利用。98年から本格的に活動が始まった。

門をくぐるとすぐにバタフライガーデンがあり、左奥に進むと噴水やぶどう棚が、右側面にはビールの原料となるホップの木もある。中央にはメンバーが所有するプロットが所狭しと並ぶ。プロットの収穫物は基本、プロットの所有者のものだが、共有スペースで採れるものはメンバー全員で分け合う。

圧巻なのは清潔に管理されたコンポストコーナーだ。コンポスト班の世話人を務めるリズ・ロイズマンさん(写真下)によると、コロナ禍で市がコンポスト用の生ごみの収集を停止した一方で、今年3月下旬から近隣住民が持ち込む生ごみの引き取りを開始。限られたスペースの中、持続的なコンポスト作りを行っている。また、2005年から参加する武原真佐代さんはこれまで、イチゴやキュウリ、フキやハーブ類などを育ててきた。今年新たに梅とジューンベリーの木を植えるという。

 

イースト4ストリートコミュニティーガーデン
East 4th St. Community Garden

179 E. 4th St., Brooklyn/eastfourthstreetgarden.tumblr.com

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