共感マーケティング

第236回 気付く力

〝共感〟をキーワードに独自のマーケティング理論を展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。


2000年、脱サラしてニューヨークへ渡り、起業しました。手元には退職金80万円。マンハッタンの高い家賃には参りました。すぐお金が底を付きました。

スターバックスやリッツカールトンといった、著名企業出身なら、その看板でしばらくは食べていけるのかもしれませんが、そういうものはない。実際はマルハダカでした。

そんな私が20年、この世界でやっていけているのは、たった一つ「気付く力」を磨き続けたからだと思っています。

定点観測する

同じものを見ても、視点のバリエーションがあるから違う見え方をする。ただこれは、才能とかをいうのではなく、誰でも習得可能な「技」です。

現在、日本は新型ウイルスのおかげで大騒ぎです。コンビニをはじめ、あらゆる店の棚からマスクが消えました。しかし私は、「マスク、ないねー」で終わらせない。「では、この騒ぎの結果、増えたものは何だろうか」という視点で、棚を見てみます。

すると、ウエットティッシュが増えていることに気付きました。理由は分かりませんが、従来1段だったのが、現在は2段に増えています。

定点観測をする店を決めているので、こうした変化に気付けます。気付く技の第一は、「定点観測し、変化を見る」ことです。

変わらないものに「気付く力」

私は過去に、老舗の研究をしたことがあります。明治屋(創業1885年)、虎屋(創業室町時代後期)、養命酒(創業1602年)、歌舞伎(400年の歴史、養命酒と同じくらい)、能(650年の歴史)、ウエッジウッド(創業1759年頃)…。

分かったことは、「老舗」とはただ歴史が長いだけではなく、一つのテーマを徹底的に追い求め、実現する企業行動の結果に対して与えられる称号だということです。

言い換えれば、「変わらず、変わり続ける達人」。時代環境が変わっても、変わらない部分、あるいは変わる部分がある。

歌舞伎の世界でいうと、古典だけではなく、三代目猿之助(現・猿翁)の『スーパー歌舞伎』や、故18代目、中村勘三郎が始めた『平成中村座』、また最近では宮崎駿の名作を歌舞伎化した『風の谷のナウシカ』など、時代の流れを取り入れた新しい演目にも挑戦し続けています。

ですが新しいものに挑戦はしていても、歌舞伎の魂といえるもの、例えば「舞台上のあらゆる所作、せりふを話すテンポは、音と合っていなければならない」という、「変わらないもの」がしっかりと守られています。スーパー歌舞伎は、古典以上に「歌」と「舞」が強調され、だからこそより華やかさ、美しさに魅了されます。このように、歌舞伎の楽しみ方は、「変わらず、変わり続ける」部分に気付く楽しみがあるのです。

第二の「気付く力」とは、「変わらないものに気付く」ということです。気付く力は無料で、使えば使うほど磨かれていきます。ですから、気付いたら発信していきましょう。SNS、ブログ、社内ミーティング…。そうやって発信することで、完結していきます。

そのために、スマホでマメにメモをするようにしょう。写真が一番簡単ですので、後からでも使いやすいです。

 

今週の教訓

目に複数のレンズを入れましょう

阪本啓一
ブランディングコンサルタント。
大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。
2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。
06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社長。
地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。
「ブランド・ジーン〜繁盛をもたらす遺伝子」(日経BP社)などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp



読めばわかるこの一冊

志の輔の背丈
立川志の輔

「じゃあいったい世間って誰と誰と誰? と考えて指を折ってみたらば、案外、片手ですむ五人ぐらいだったりするんです」(本文より引用)

 

志の輔師匠の語りにほれています。毎日新聞で18年続いた連載コラムのベスト版です。

どの一編にも、師匠の独創的な視点があって面白いのですが、特に印象的だったのが「学校へ行かない理由」です。

日本では、不登校が毎年増えています。実は、私の子どもも不登校児でした。ただ、赤ん坊の頃から「人と違うことをやれ」というのが育児方針だったので、「みんなが行く学校だけど行かない」選択も支持してました。

結果、自分で受験資格を取り、大学生になった今では、フリースクールで不登校児の相談相手になっています。

師匠の見方も同じで、「一般的な世間から外れることが長所になる場合もある」ということですね。

 

 

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