心と体のメンテナンス

テーマ ◆ 顎関節症に対する全身アプローチ(前編)

あなどれない顎の問題
全身の慢性痛の原因に

Q.関節症について教えてください。

A.

顎(あご)の異常や、それが原因で起こるさまざまな症状を総称して顎関節症といいます。聞きなれない病名かもしれませんが、日本人の約75%にその兆候があり、約33%が実際に患っているとされます。女性に多く、発症率は男性の2〜3倍といわれます。

主な症状は、口を大きく開けるのが難しい、口の開閉時に顎関節からカクンという音が出る/顎関節がカクカクと動く/顎がゆがむ(下顎が左右にずれる)、顎やその周辺が痛む、などです。食事のとき顎に違和感や痛みがあり、左右どちらか片方の歯でしかかめない人は、顎関節症が疑われます。

しかし、症状は顎だけに出るとは限りません。原因不明の耳鳴り、めまい、慢性的な頭痛や首、肩の痛み、鼻詰まりなども、実は顎関節症が原因かもしれません。これは、顎関節の構造や筋肉が、首、頭蓋骨、口内の構造、顔の感覚を司る三叉(さんさ)神経、自律神経、耳の構造などと密接にかかわっていることと関係しています。顎関節の異常が歯並びに影響することもあります。

顎関節症は、歯のかみ合わせの異常、顎のけが、歯ぎしり、ストレスによる顎周辺の筋肉の緊張、全身の姿勢や骨格、筋肉の問題など、複数の要因の積み重ねによって起きると考えられています。

 

Q.全身の骨格や筋肉の問題と、顎関節症の関係は?

A.

これまでの経験から、打撲や転倒などによって顎をけがした場合を除き、顎関節症が骨格や筋肉の問題と無縁に起こることはまずないと言えます。首、肋骨、背骨、骨盤などを中心に、顎関節症の人の全身の骨格や筋肉の状態を調べると、何かしらの問題が見つかります。

顎の痛みを理由に来院した人のケースを例に説明しましょう。

姿勢や歩き方から、この人は右足に体重をかける癖があることが分かりました。右足に体重をかけると、骨盤は右に傾き、骨盤がゆがむと、背骨も、頭蓋骨を支える首もゆがんでしまいます。顎関節は、頭蓋骨と下顎の骨をつなぐ関節です。首が不安定だと頭蓋骨も安定せず、顎関節にも影響が及びます。

このケースは、骨格のゆがみから顎関節に過度の負荷がかかり、さらに顎関節周囲の筋肉のバランスが崩れたことで、かみ合わせが悪くなり、顎に痛みが起きたと考えられます。

顎関節症は、全身の骨格や筋肉の問題が原因で起こることもある。患者には骨格の模型を使い、痛みが起きる仕組みを説明する

 

Q. かみ合わせや顎関節の問題が原因で、全身症状が出ることもありますか?

A.

意外かもしれませんが、腰痛や股関節などの下半身の痛みも、突き詰めれば顎の問題に行きつくことは多々あります。

例えば、先ほどの例と逆のパターンです。虫歯や歯並びの乱れ、顎関節の問題などでかみ合わせが悪くなると、両足に均等に体重を乗せることができません。右の奥歯がかみ合わない人は、右足にうまく体重を乗せることができず、左の奥歯がかみあわない場合はその反対です。

左足に体重をうまく乗せられない人は、無意識のうちに腰から上の左半身の筋肉で体を支えようとしています。左半身に過度の負荷がかかり、腰や背中、肩を痛めてしまいます。

顎関節のずれが、首の骨のずれや骨盤のゆがみを引き起こし、頭痛をはじめ、腰や首、肩の痛みなど、さまざまな症状を引き起こすこともあります。

ただ気を付けてほしいのは、体はもともと左右非対称にできているということです。脚の長さや、骨盤の高さが左右多少違うことがあってもいいし、「利き腕」や「利き目」があってもいいのです。これは自然なことであり、無理に矯正する必要はありません。問題は、体が左右どちらか片方に極端に頼ってしまい、左右の切り替えができなくなることです。ショルダーバッグも持ちやすいからと右肩ばかりにかけていると、骨格のゆがみや筋肉の凝り、摩耗の原因になります。

 

Q. 顎関節症は治療できますか?

A.

できます。顎のゆがみや異常音は、「普通に起きること」でも「仕方ないこと」でもありません。顎関節症の症状や兆候がある人、慢性的な頭痛や肩凝り、腰痛などに悩まされている人は、顎関節症治療の経験が豊富な理学療法士や専門家に相談することをお勧めします。

※次回は、顎関節症の治療についてお聞きします。

 

 

 

 

 

高田洋平先生
Yohei Takada, DPT, OCS, SCS

理学療法士(DPT)。
米国理学療法士協会(ABPTS)認定整形外科臨床医学療法士(OCS)/スポーツ臨床理学療法士(SCS)、
フィジカル・アート研究所(IPA)認定機能的徒手療法士(CFMT)など。
Func-Physiotherapyニューヨーク/東京分院代表。
体の痛みの治療やリハビリ、予防ケアを手掛け、ゴルフなどスポーツ愛好家や選手のケアに特に定評がある。

Func-Physiotherapy

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www.funcphysio.com

 

 

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