テーマ ◆ 歯の根管治療と、そのやり直し(後編)

初の治療が肝心
歯予防も徹底を

 

Q.

管治療のやり直しが必要になるのは、どんな場合ですか?

A.

根管治療(root canal treatment)とは、細菌に感染した歯髄(神経や血管の束)を取り除き、歯を再び使えるようにする治療です(前編参照)。根管治療後の歯が何らかの原因で細菌に再感染すると、治療のやり直し、つまり再根管治療が行われます。

根管治療では、歯を支える根(歯根)の中を通る細い管(根管)から歯髄を除去し、根管を消毒後、細菌が再び入り込まないように充填剤で根管を密封します。しかし、歯根は必ずしも真っ直ぐでなく、先が曲がっていることもあれば、枝分かれしていることもあります。根管の先端部まで歯髄を取り切れなかったり、充填剤が行き届いていなかったりすると、再び炎症や感染を起こし、痛みや歯茎の腫れの原因になります。

再根管治療になると、初回治療時に作った被せ物(クラウン)と、その下に入れた「土台」を外さなければいけません。根管の清掃と消毒、充填剤の詰め込みをやり直し、その後に新しいクラウンを被せます。

 

Q.

何年も前に根管治療を受けた歯の周辺歯茎が腫れてしまったら?

A.

根管の先端部が細菌に再感染し、周囲に感染が広がっている可能性があります。細菌が出す毒素によって膿が出て、歯茎が腫れ、噛むだけで痛みが生じたりします。細菌感染が原因なので、根管治療のやり直しが必要です。

疲れがたまったときや、体調を崩しているときに、膿の袋が風船のように膨らみ、体が元気になると自然に小さくなります。しかし次第に、膨らんだままなかなか元に戻らなくなり、さらに悪化すると、毒素によって顎骨が溶けてしまうこともあります。レントゲン写真を撮ると、歯根の先端の骨が溶け、膿が溜まった部分が黒く写ります。

難しいのは、根管の先端に石灰化物が沈着し、根管が閉塞したケースです。歯髄を掻き出すための極細の器具を入れることができず、無理やり入れようとしてその器具が折れてしまうこともあります。

この場合、病巣があまり大きくなければ、歯茎の腫れた部分を切開し、顎骨に穴を開けて歯根を露出させ、石灰化した歯根の先端部を切除する外科処置を行います。

下顎と上顎の奥歯のケースでは、歯科医の技術力が特に求められます。下顎の奥歯の場合、頑強な顎骨に穴を開けて処置しなければいけないからです。上の奥歯の場合は、歯の上に骨の空洞部分があり、治療器具や材料が粘膜を突き抜けて空洞に届くと、細菌が入り込み感染する可能性があります。処置には細心の注意が必要で、歯の場所によっては治療ができないこともあります。

 

Q.

日本人の再根管治療で特に注意することはありますか?

A.

最初の根管治療を日本で受けた人の場合、クラウンを固定するために根管の上に装着する土台が、根管の幅に対して大き過ぎる人が多いという印象があります。

再根管治療のためには、クラウンと土台を外す必要がありますが、土台が大きいと、外すときに歯根にひびが入ったり、折れてしまったりする恐れが、それだけ大きくなります。歯根が損傷すると再治療は不可能で、その歯は抜くことになります。

参考までに、アメリカでは最近、歯をなるべく削らないように、土台をできるだけ小さく作る傾向があります。

Q.

再根管治療は何回でもできますか?

A.

神経を取った歯は、そうでない歯に比べてどうしても弱くなるので、寿命が短くなってしまいます。根管が石灰化し、歯根の先端を切り取ってしまった歯の場合はなおさらです。再治療のたびに治療の成功率は下がること、費用もかかることから、再治療は1回に留めるのが妥当だと思います。

抜歯した場合には、歯科インプラントという歯の機能を取り戻す良い治療選択肢もあります。再治療をするかしないかについては、主治医とよく相談してください。

大事なのは、初回治療を信頼できる根管治療専門医の下で受け、再治療の必要性を極力減らすことです。主治医による定期健診と日頃のケアを徹底し、新たに虫歯を作らない努力も欠かせません。

※次回は、遊馬吉右衛門先生と林なおみ先生に目のトラブルについて伺います。

 

 

サン・ホー・キム先生
Sun Ho Kim, DDS

歯科医師(DDS=Doctor of Dental Surgery)。
ソウル大学歯学部卒業後、韓国米空軍病院勤務を経て来米。
ニューヨーク大学(NYU)補綴歯科コース、同インプラントコース修了。
一般歯科のほか、歯列矯正治療に定評がある。
ワイヤーを利用する従来の矯正方法と、透明で取り外し可能な矯正装置「インビザライン」の両方を手掛ける。
NYU歯周病学・インプラント学部臨床助教授。日本語堪能。

 

サン・ホー・キム歯科グループ
30 E 40th St., #602
(bet. Park & Madison Aves.)
TEL: 212-370-0101
(診療は日本人スタッフがサポート)

 

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