テーマ ◆ 足の健康と転倒防止(後編)

足と歩行の悩みを解消
何歳からでも転倒予防

Q.

齢者が転倒予防のためにできることはありますか?

A.

まずは自分の転倒リスクと予防について、主治医とオープンに話し合うことをお勧めします。実際に転倒してしまった人はもちろんのこと、転倒が心配で外出が怖い、歩行時にちょっとした段差にもつまずきやすい、体が前後左右に揺れるなど、気になることがある人は主治医に相談し、自分の転倒リスクを査定してもらうといいでしょう。

転倒リスク、つまり転倒しやすさは、歩行速度や運動能力を測定することによって調べることができます。人によっては、下半身の筋力が低下し、歩行時に脚が上がりにくくなっているのかもしれないし、病気や服用中の薬の影響でめまいや眠気を起こし、転びやすくなっているのかもしれません。自分の転倒リスクを知り、その原因を突き止めることで、医師の指導の下、自分に合った予防策を講じることができます。

薬の作用が心配な人も、医師に相談してください。医師が処方した薬の服用を自己判断で止めるのは危険です。

一般的なことですが、衰えた下半身の筋肉を鍛えるには、運動とたんぱく質の摂取が欠かせません(前編参照)。運動が難しい人は、最初は椅子の立ち座りだけでもよいのです。できることから始め、少しずつでも継続することが大事です。たんぱく質は筋肉組成に必要な栄養素なので、毎日の食事で肉や魚、大豆、乳製品などを意識して取るようにしましょう。

運動は何歳から始めても効果があります。筋力低下を遅らせ、低下した身体機能やバランスを回復させることができます。

 

高齢者は転倒をきっかけに自立生活が難しくなったり、寝たきりになったりする危険がある。米政府は転倒予防策をまとめた資料を作成し(写真)、早めの取り組みを呼び掛けている

 

Q.

足の定期健診が大事なのはなぜですか?

A.

足に痛みや異常があると、歩行が難しくなり、筋力低下や転倒の原因になるからです。米疾病対策センター(CDC)は転倒予防策の一つとして、主治医または足病医による年1回の足の健診を推奨し、問題の早期発見と治療を呼び掛けています。

足病医は膝から下の足の問題をケアする専門医で、水虫、イボなどの皮膚疾患、巻き爪、爪水虫などの爪疾患、外反母趾、扁平足、リウマチなどの足の変形、けが、骨折、糖尿病による血流障害や神経障害まで、足のあらゆる病気や症状を扱います。

足の定期健診で問題が見つかることもあれば、水虫、関節炎などを理由に長期的に足病科に通う患者で、歩行速度が落ちた、動作が緩慢になったなどの変化から、下半身の筋力低下が見つかることもあります。意外かもしれませんが、タコやウオノメが転倒、ひいては骨折の原因になることもあります。患部に圧がかかると痛いので、歩き方が変わり、バランスが崩れて転びやすくなるからです。そうなる前に、タコやウオノメができた原因を突き止め、解消することが大切です。ニューヨーク州足病医学協会は、このような足病医の診断と治療により、高齢者と高リスク者の転倒を36%減らせると分析しています。

 

Q.

靴は転倒しやすさに影響しますか?

A.

影響します。CDCは足の定期健診時に、足に合った靴を履いているかについても、患者と医師が話し合うことを勧めています。

例えば、ウォーキングには横幅が広く足を締め付けない靴が適しています。ところが、アメリカの普通の靴屋では幅広の靴が手に入りにくく、きつい靴を履いている人が少なくありません。一般的に日本人はアメリカ人よりも足の横幅が広いので、足に合わない靴を履いている人も多いはずです。また、加齢とともに足幅は少しずつ広くなるので、数年に1度は足の大きさを測ることも大事です。

靴について分からないことがあれば、足病医に気軽に聞いてください。足病医は靴選びについて助言し、足の悩みに応じてオーダーメイドのインソール(靴の中敷き)を作ることもあります。靴専門店によっては、特別訓練を受けた足と靴の専門家(pedorthist)が足の形や大きさ、歩き方などを調べ、個々に合った靴やインソールについて相談に乗ってくれます。

年を取っても自分の足で歩き、自立した生活をできるだけ長く送りたいものです。「自分は大丈夫」ではなく、できることから転倒予防を始めましょう。

※次回からは歯科医のサン・ホー・キム先生に、根管治療のトラブルについてお聞きします。

 

林美香先生
Mika Hayashi, DPM

足病医学博士(DPM=Doctor of Podiatric Medicine)、米国足病医学会認定足病専門医師。
ニューヨーク大学付属関節疾患専門病院提携医師。
ニューヨーク足病医科大学卒業後、聖ビンセント病院足病外科・医科研修修了。
日本での足病ケア普及に尽力。足の悩みを持つ人もきれいに履けるハイヒールブランド「Dr Mika H. New York」を開発、日米で販売する。

 

林美香足病科クリニック
350 Lexington Ave., #501
(入り口は40th St.沿い)
TEL: 212-682-0033
212-682-0043(日本語)
www.mikahayashi.com

 

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