巻頭特集

古き良きアメリカの象徴「ダイナー」特集 老舗から新形態まで

ニューヨーカーからされ老舗ダイナー

1925年にオープンし、今年95周年を迎える「レキシントン・キャンディー・ショップ」。オーナーのジョン・フィリスさんは、祖父、父からの伝統を守り営業を続ける、同店の3代目オーナー。アッパー・イースト・サイドの近隣住人に愛される同店でジョンさんに話を聞いた。

あと5年で100周年

店内は屋内席のテーブルが五つとカウンターだけだが、どこか懐かしく、なぜか心地よい雰囲気。伝統の味を守り、歴史の数だけさまざまな客も訪れている。

「祖父が開店した当時からずっと、少数の従業員で営業を続けています。いつものご近所さんも来ますが、ポール・マッカートニーやブルース・スプリングスティーンなど、有名スターが来たこともありますし、美しい女優さんが来店したり、思い出はたくさんありますね」

壁に飾られた、たくさんの写真がそれを物語る。

レキシントンアベニュー83丁目に大きく「95 years」と書かれた看板が掲げられた、「レキシントン・キャンディー・ショップ」入り口

新型コロナの影響は
想像以上の打撃

さまざまなジャンルのレストランが多く存在しているニューヨークでは、ジョンさんのように家族経営の店も多いが、今回の新型コロナウイルスの影響は予想以上だったようだ。

「長い歴史の中で数多くのレストランがニューヨークに誕生し、営業を続けています。しかし、今回の新型コロナウイルスの影響は想定外でした。ほとんどの店は消えてしまったし、残っている店も辛い状況です。95年も経営していれば、ビジネスにはいい時も悪い時もありましたが、今までで一番売り上げが落ちこんでいますね」とジョンさん。

そうした中で、3月の非常事態宣言が出た後も休まず営業を続けた。

「われわれは1日も店を閉めずに、近隣住人のためにもデリバリーとテークアウトだけで乗り切りました。今はガイドラインに沿って屋外と屋内で営業し、デリバリーとテークアウトも継続しています」

NYイチのミルクシェーク

店の名物といえば「ミルクシェーク」。特別な隠し味があるのかと尋ねると「それは教えられないよ」とほほえむジョンさん。

「うちのミルクシェークはニューヨークで1番、アメリカ国内でも5番に選ばれたことがあります。シェークマシンは80年も使い続けているんです。この機械も、もちろん秘密がいっぱいですよ」

この店を訪れたら、ぜひミルクシェークとチーズバーガーをセットで注文してほしいそう。「まさに、クラシックアメリカン」と、ジョンさんは笑顔で語った。

カウンター前では、常連客がいつも立ち寄り、コーヒーや料理を買いながらオーナーと世間話を楽しんでいる

 

人気のシェークを作るシェークマシンは、1940年からの年代物

 

ミルクシェークと相性抜群のチーズバーガーは、シンプルながらもハズレがない絶対のおいしさ

 

3代目オーナーのジョンさん

【店舗情報】

Lexington Candy Shop

1226 Lexington Ave.
212-288-0057
lexingtoncandyshop.com


にもあるあるオススダイナー

1959年に、MTA地下鉄の顔である「ミスサブウェイズ」に選ばれたエレン・ハート・スターム。結婚後、79年に市庁舎の向かいにオープンした「エレン・カフェ」は、喫煙と禁煙席を分けた初の飲食店といわれている。その後、タイムズスクエアに現在のダイナーをオープンした。同ダイナーでは、ブロードウェーの舞台を目指す若者たちが店員として働き、給仕の合間に歌を披露するのが恒例となっていて、観光客に人気だ。

新型コロナウイルスの影響で3月に発令された厳戒令から休業していたが、今月、屋内飲食が許可され営業も再開。ちなみに、誕生日などの記念日に来店予定の場合、歌のリクエストを事前に行うことも可能(ただし、要望が叶わない場合もあるので要相談)。詳細はウェブサイトを確認。

マッケンチーズがあふれ出るほど入った、同店人気の「Yankee Doodie Burger」(写真上下共に2020年3月撮影)

 

ブロードウェースターを目指し、毎日客を盛り上げる店員たち。現在はコロナ対策としてフェースシールドを付けて歌っている

【店舗情報】

1650 Broadway
ellensstardustdiner.com

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