河野澄男さん &
抗議活動で描かれるウォールアート
ニューヨークで活躍する日本人アーティスト、ドラゴン76さんに現在の活動について聞いた。
自粛生活中の変化
ニューヨークに移住して3年半。昨年は、ブロンクスのギャラリーで初の個展も開催。まさに順調に活動していた中で、コロナが拡大し、外での制作活動もできず、自粛生活を余儀なくされたというドラゴンさん。
「最初の頃は、自分のテンションを上げていくことが難しかったですね。でも途中から、自分ができることをやろうと思い、家にこもって新しい作品の制作や、筆のタッチを進化させた新たなスタイルを開発しながら過ごしていました。また、1年半くらいかけて作っていたフィギュアやTシャツなどのグッズ販売にも力を入れた結果、おかげさまで即完売したり、ファンにも好評でした」
作品のコンセプトは
「共存(coexist)」
憧れの街、ニューヨークへの移住という夢を叶えたドラゴンさん。作品のコンセプトは、まさに今の時代にぴったりな『共存』だ。
「さまざまな人種、性別を問わず、人類と自然、テクノロジーとの共存などを大きなテーマにしています。そこに、ニューヨークらしさを織り交ぜながら、いろんな人から受けたインスピレーションも織り交ぜることで、新しいものが生まれ出てくる。ポジティブになれるよう、暖色系の色をよく使って描いています」
フロイド事件から
派生した抗議活動
コロナによる世界的不安が人々を襲う中で突然起きた、ジョージ・フロイドさんの事件。ドラゴンさんは自分の思いを発信した。
「僕自身、作品を制作している中で、ブラックカルチャーやヒップホップなどの影響を多大に受けていますし、仕事を通して、本当に出会いにも恵まれました。白人、黒人、ヒスパニック、アジア人、皆、本当にやさしく素晴らしい人たちも多くて、友達がたくさんできました」
そんな中で、自分もこの問題に対してポジティブな何かを発信できないかと考えたという。
「各地で略奪や窃盗も起きていて、本来の抗議活動とは別の問題にとても悲しくなり、いてもたってもいられなくて。描ける場所を探していたところ、以前にも壁画の仕事をしたことがあった『一番亭』さんに相談したら、空いたスペースを提供いただけました」
ドラゴンさんが描いたフロイドさんの壁画前では、写真を撮る人が今も後を絶たない。
「フロイドさんの事件をきっかけに、人種の違いを超えた、尊敬し合える未来が来ることを願っています。そのために、今後もさまざまな場所で、僕なりにメッセージを発信し続けながら描いていきたいですね」
Dragon76さん
1976年滋賀県生まれ。
2016年来米。移住後、参加した「アートバトル・イン・ニューヨーク」で2回連続優勝。
「共存」をテーマに、街中で作品を描いている。
2019年6月には、NYで初の個展「coexist(共存)」をブロンクスのcompoundにて開催。
オンラインで、オリジナル商品の販売を手掛けるなど、精力的に活動中。
dragon76art.com/IG: dragon76art