2016/07/08発行 ジャピオン872号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第2回 パートナーシップ

協賛効果を数値化
対等関係で戦略考案

 今回は、スポーツビジネスにおいてよく耳にする「スポンサーシップ/パートナーシップ」について解説します。

 日本語では「協賛」と言い、「事業・催し物などの趣旨に賛成し、協力すること」という意味です。確かにその意味で間違いはありませんが、ビジネス関係ですからスポンサーになる、つまりお金を出す企業側はリターンを求めます。最近はスポンサーという表現よりも「パートナーシップ」という言い方が一般化していて、スポーツ球団側と企業側の対等な関係が明確になっています。

 では球団側は企業に何をリターンとして返すのか。スポーツビジネスに携わる者は、常にこの質問を向き合うことが求められます。また「パートナー」というだけあって、どちらか一方が提案するのではなく、球団と企業が一緒に考案する作業が必要となります。

 パートナーシップの一つの形として、皆さんもスタジアムで目にするロゴや商品の看板の掲出があります。ですが、果たしてそのロゴを見ただけで、その企業の製品への関心、購買意欲を高められるのでしょうか。前回、球場観戦した際に、どんな企業のロゴが出ていたか覚えていますか?

取得権利は目的ごと

 現代では、もはや看板の掲出だけで効果を期待する戦略は通用しません。パートナーとなることで設定した目的がどれだけ達成されたかを測定する時代です。その中で特に重要視されるのは、「アクティベーション」という概念です。

 パートナーシップの目的は多種多様あります。ブランドイメージの伝達、特定分野における企業の存在感の提示、購買責任者たちからの好印象、メディアバリュー、売上増加、独占契約による競合他社との差別化、ホスピタリティーや接待、また社内向けの特別な機会の創出、ネーミングライツなどが挙げられます。それに対して、特定のイベント、リーグ、チーム、選手などのパートナーになった場合には、交渉の末、目的に合った諸々のライツ(権利)を手にします。

 その際、リターンを測定するためには、期間を設定し、効果を可能な限り数値化して測定可能にします。企業が受けるリターンをROO(Return On Objectives)と表現します。算出にはKPI(KeyPerformanceIndicator/重要業績評価指標)、「Objective(目的)」、そして「Metrics(測定基準)」などの数値化可能な設定が必須となります。

 企業が、ROOを得るために権利を効果的に活用する活動が「アクティベーション」です。例えば試合会場でサンプル商品を来場者に配布したり、コンテンツをチームと共に制作し商品を購買するページに誘導したり、お得意さん限定のパーティーに選手を参加させたり、VIP席に見込み客を招待したり、社内の営業コンテストに利用するなどアクティベーションは千差万別です。

考え抜いてウィンウィン

 スポーツマーケターは企業側と相談をしながらニーズに合わせて、ライツパッケージとアクティベーションプランを考案します。前回お話ししましたが、勝利も選手の活躍も不確定な要素ですから、それに影響を受けないアクティベーション戦略を立案することが大切です。球場観戦の際、なぜこの企業がこのチームのパートナーになったのかと考えてみるのも面白いと思います。また、これから球団とパートナーシップを、と考えているのならば、単純に強いからとかスター選手がいるからといった理由で球技やチームを選ぶのではなく、自社のROOに照らし合わせ、どんなライツを入手し、どのようなアクティベーションを実施すると効果的かと考えてみるとスポーツの見方も随分と変わります。

 一つの球団には、たくさんの熱心なファンがいます。企業はパートナーになることで、他では得られないメリットが生まれます。もしそこに価値を見出せるならば投資する金額も大きくなり、それに伴い企業が求めるリターンの要求も高くなります。球団側も測定可能な価値やリターンを創意工夫して提供することが必要となってきます。そして相互に価値が創出されることで、真のパートナーとなり、ウィンウィンの関係が構築されていくのです。

トラクターの製造販売などで知られるヤンマーはMLSレッドブルズとパートナーシップ契約を結んでいる。ピッチの芝を整えるのも同社のトラクター

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

今週の用語解説

スポンサーシップ/パートナーシップ

スポーツビジネスにおけるスポンサーシップ/パートナーシップは、球場の命名権から、球場、ユニフォームでのロゴ掲出のほか出資に対するリターンなど、近年、さまざまな形態が生まれており、スポンサー企業の業態も多種多様となっている。フォーブス誌の調べによると、プロスポーツビジネス業界でのスポンサーシップによる収入は増益し続けていて2019年までには180億ドルに達すると報じている。最近ではNBAが来シーズンから、ユニフォームの企業ロゴ掲出を認め、新たなパートナーシップの可能性を広げた。

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