巻頭特集

夏の和野菜

盛夏のニューヨーク。色鮮やかな野菜たちが街中に溢れ、目を奪われるが、私たち在留邦人はどうしても和野菜が恋しい。実は、よく探せば、こんなアウェーな土地でも本格的な日本の野菜が手に入る。グリーンマーケットや野菜宅配サービスの賢い利用法など、今回の特集ではとっておきの和野菜情報をお届けする。(取材・文/中村英雄)


採れたて和野菜を最短24時間以内に宅配する「ベジ家(や)」

「ベジ家」はニューヨークに本拠を置く和野菜専門のオンラインストア。同社ウェブサイト(左記)からの注文は超簡単。近郊農場で採れたての新鮮な和野菜を最短24時間以内に宅配してくれる。和野菜を扱う青果店は市内に幾つかあるが、鮮度で言ったらベジ家にかなう店はないだろう。オーナーの高田理紗さんに話を聞いた。

─今の時期、御社で扱っているおすすめの和野菜は?

まずは日本のキュウリ。味がしっかりしているので丸かじりできます。お塩も不要。同じく、水茄子も水分豊富で生でいただけます。そして、まん丸の京ナス。加熱しても型崩れしないので味噌焼きや、ナスステーキなどに最適です。

─葉野菜も豊富ですね。

葉が柔らかく甘みがある小松菜は年間を通して人気です。さっと炒めただけで美味しく食べられるし、リンゴと一緒にミキサーにかければ離乳食として最適です。春菊はシーズン後半になりますが、水菜は通年栽培です。ドレッシングであえてサラダで食べるものもおすすめです。冷しゃぶの時に、お肉を巻くのにも使えます。梅干し作りに欠かせない赤シソもあります。シロップに作り置きしておくと便利ですよ。

─手に入りにくい和野菜だけでなく、常備菜も扱っていますね。

はい。ピーマンやトマトでも日本の種や育成技術を使ったものを取り揃えています。ソラマメや、さや入りグリーンピース(Shell Peas)も「日系」ではない品種ですが、粒が大きくほっこりして味に深みがあります。キャベツは日本の「春キャベツ」があります。ふわふわで千切りにしてサラダで食べると甘みとシャキシャキ感がたまりません。

 

高田さん自ら注文を受けた野菜を箱詰めしていく

 

─もともと青果業に関心があったのですか?

出身が千葉県の農村地帯にある人口1万2千人の町なので子供の頃から土や野菜には親しんでいました。祖父が福岡県で巨峰の栽培農家を営んでいて小・中学校時代は毎年夏休みになると、出荷の手伝いに行っていました。英語が好きでカナダに留学した後、ニューヨークに移住して、国際ビジネスの勉強をしていますが、和野菜に特化したサービスは誰もやっていないからこそ価値があると思います。オンラインストアの利点を生かしユーザーさんとの繋がりを大切にしています。

─とはいえ苦労も多いのではないですか?

最大の難点は、天気など自然現象の影響で想定通りに配達が進まないことです。事前に受けた注文通りに収穫できないことも起こりうるので、宅配の当日はハラハラドキドキです。

─和野菜はどこの農場から仕入れるのですか?

デラウェア州にある鈴木ファーム(P4参照)が中心ですが、一部ニューヨーク州北部の農家からも仕入れています。通常、毎週木曜が配達日なのですが、鈴木さんの農場では水曜日に収穫した野菜を、夜通しかけてトラックで運送。木曜の早朝にこちらに届きます。

 

初心者に便利な「おまかせセット」。単品でもオーダーできる

 

─文字通り、採れたての産地直送ですね。

はい。なので、ユーザーさんが喜んでくださると本当に嬉しいです。配達直後に「旬の野菜、新鮮でおいしかった」「木曜日が待ち遠しい」「この事業やってくれてありがとう」といったメールが舞い込んで来ると涙が出ます。

 

高田理紗さん

「ベジ家」オーナー

2023年。コロナ禍で買い物に出られない人のためのオンラインストア「NY農場フレッシュ(2021年閉鎖)」の手伝いをしたことがきっかけでこの世界へ。パンデミックが収束してもさまざまな理由から外出が難しい日本人ユーザーが大勢いることを知り同社を一人で設立。現在、会員は600人。

veggieya.nyc

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