巻頭特集

紅茶をめぐる冒険

初秋の訪れとともに飲みたくなるのがポットで淹れた紅茶。茶葉やブレンドによって異なる香りと味は、私たちをくつろぎと恍惚の世界に誘い、またある時は懐かしい記憶を辿る道標にもなってくれる。極上の一杯を求めて、ニューヨーク紅茶めぐりの旅、はじまりはじまり。(取材・文/加藤麻美)


まずは、ニューヨークを代表する専門店へ

世界中の産地から厳選した最高品質の紅茶や中国茶、緑茶は、300種類以上。マンハッタン区ソーホー地区にある直営店で270種類の茶葉やブレンドティーを販売するのが、ニューヨークを代表する専門店、ハーニー&サンズファイン・ティー(以下、ハーニー&サンズ)だ。英国の伝統とニューヨークのモダンな感覚が融合した洗練されたパッケージでお馴染み。紅茶好きの人へのお土産としてもダントツの人気を誇る。

 

創業は1983年。紅茶研究家で茶葉のブレンドマスターだったジョン・ハーニー(1930〜2014)が6種類のセレクションからスタート。ジョンは、ティーバック入りの紅茶しか飲んだことがない米国人に、ルースティーが持つ香りやコク、複雑な味、後味のニュアンスを紹介し、米国紅茶協会の会長から「紅茶の宣教師」と呼ばれた人。

現在は、子どもたちと孫がビジネスを引き継ぎ、世界中で約250人の従業員を抱え、年間売上高は5000万ドルを超えている。

人気のブレンドは「パリ」と「ニューヨーク」

ソーホー店のいちばん人気は、同社のシグネチャーブレンドである「パリ」と「ニューヨークブレンド」。「『パリ』は、アールグレーをベースにバニラ、キャラメル、ベルガモットのフレーバーを加えたフルーティーな味わい。『ニューヨークブレンド』は、リラックス効果のあるカモミール、鎮静効果のあるジンジャールート、リフレッシュ効果のあるペパーミントを配合。もちろんノンカフェインです」とモリスさん。マンハッタンのスカイラインをモチーフにしたイラストが描かれたティン缶はキッチンに飾っても様になる。

秋から冬にかけて飲むなら、これも同社のシグネチャー「パンプキンスパイス」がイチオシ。ルイボス、天然のパンプキンフレーバー、シナモン、クローブ、ナツメグを配合。季節限定・数量限定販売なので早い者勝ちだ。

カウンターでは1時間ごとに異なる種類の茶葉のティスティングができる

 

CBD配合の紅茶とコーヒー

近年は、本拠地ミラートン(ニューヨーク州ダッチェス郡。コネティカット州境)にオーガニックのCBD飲料を生産する、ヘンプ部門も設立。また、ヘンプの自社栽培も行っている。店内にもブッダのディスプレーが目を引くCBDコーナーがあり、ハーブや紅茶と配合したCBDティーや、抽出液をコーヒーに染み込ませたコーヒー豆(粉)を販売している。モリスさんによると、「リラックスさせたり気分を上げたりするCBDの作用が紅茶やコーヒーに含まれたカフェインの作用をよりメロウにしてくれる」とのこと。試してみる価値は大いにありそうだ。

笑顔にできる紅茶だけを売る

環境保護や安全な労働条件、持続可能な生活、強固で透明なサプライチェーンを促進するフェアトレード慣行に則った認証紅茶のみを扱っているのも特徴。売り上げの1%を環境保護に寄付する世界的ネットワーク組織「1%フォー・ザ・プラネット」にも参加し、これまでに400万ドル以上を寄付している。

消費者を「笑顔にできる紅茶だけを売る」、それがハーニー&サンズ躍進の本当の理由かもしれない。

 

〜ジョン・ハーニーの紅茶を美味しく淹れるルール〜

1983年、ニューヨークタイムズのインタビューに語ったルールはたったふたつ。「猛烈に沸騰したお湯」を使うこと。そして、きちんと蒸らすこと。「5分だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

<お話を聞いた人>

ティーガン・モリスさん

ハーニー&サンズ、ソーホー店マネージャー

TPOや好み、フレーバーなど顧客に合った茶葉を見つけてくれる他、正しい淹れ方やおすすめのアレンジ、保存方法などもアドバイス。自宅では、煎茶に梅酒を、ジャスミンティーに日本酒を加えるなど新しい試みを楽しんでいる。

Harney & Sons

433 Broome St./TEL: 212-933-4853

harney.com

               

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