巻頭特集

オーダーメードで制作するアーティストや教室で教える講師の「縫う、編む、織る」作品

刺しゅう、手芸、編み物、キルト、洋裁、和裁……。布と糸を使った創作は幅広いが、今号は、オーダーメードで制作するアーティストや教室で教える講師の「縫う、編む、織る」作品にフォーカス。オリジナル作品をオーダーしたり、自宅で実際に作ってみたりしながら、創作の世界を感じてみよう (取材・文/音成映舞)


世界に一つだけの「織物」を作る

世界中からさまざまな人種が集うニューヨークには、自分だけの創作作品を世界へ発信している人々が数多くいる。2009年に来米したおかのみかさんも、「MIKAORI〈三香〉」を通じて自分の思いを人に伝えている一人だ。

伝統的な織り方ではなく、誰でも楽しく自由に織ることができるという「さをり織り」をベースに、みかさん独自の織り方を融合した「MIKAORI」を始めたきっかけは、何だったのだろうか。

「友人が『さをり織り』の織り機を持っていて、その友人宅に遊びに行くたびに織り方を教わりました。スカーフや帽子など、作れば作るほど楽しくなり、ハマってしまって」とみかさん。「それから、完成したスカーフなどを身に付けて街を歩いていたところ、通りですれ違う人や友人たちから、『すごくステキだね!』と褒められたことで、『織る』ということを真剣に始めてみようかなと考えるようになりました」

 

みかさんオリジナルのスカーフ

 

一大決心で
織り機も購入

日本では役者をやっていたというみかさん。来米後は全く違う仕事をしながらも、何か自分らしく打ち込めるものを探していたという。

「友人にも恵まれ、生活にも満足していました。でも、何か物足りなさも感じていて、そういうときに出合えたのが織物でした。型にはまったものでなく、自由に織れるというところも魅力でしたし、これなら一生続けられるかなと思って、17年の末に織り機を購入しました」

突然の織り機購入に友人たちも驚いたかと思いきや、新たなキャリアを応援されたというから、長く大切に築いたみかさんの人望は厚い。

「翌年には、周囲に『織物を一生の仕事にする!』とアーティストとしての活動を宣言しました。でも皆、反対するのではなく、心から応援してくれたのはありがたかったですね。本当に友人に恵まれているなと思ったし、やる気がフツフツと湧き上がりました(笑)」

コンセプトは
三つのエネルギー

既製品と違い、1点もののオリジナル作品を制作するみかさん。作品の販売も行っているが、オーダーメードで制作することも多いという。

「オーダーメードの場合は、制作期間が1カ月程度掛かります。『MIKAORI』は、『さをり織り』をベースにしながらも、私の作品に触れる人のエネルギー、私自身、そして、ニューヨークの三つのエネルギーと波動を織り混ぜながら織る独自の織り方。それはオリジナル作品を作る場合も同じで、こういう人が身に付けてくれたらいいなと想像しながら、それぞれのエネルギーを折り込みながら織っています」

日本でも展示会を行い、完売するほど活発に活動するみかさん。

「展示会などで購入してくださった場合も、オーダーの場合も、身に付けてくれる人になぜかピタリとハマるので、その姿を見るとすごくうれしくて…」

創作を始めて数年だが、順調に活動を続けるみかさんの未来は明るい。

 

 

おかのみかさん

日本での役者活動を辞め、2009年来米。
18年から「MIKAORI〈三香〉」を本格的に開始。
オリジナル作品の販売だけでなく、オーダーメードも受け付けている。

 

【問い合わせ】

instagram: @399newyork
399newyork.com

次ページからは、自宅でできる「実践編」を紹介していく。

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