◆節税・控除
期間限定の連載企画!米国版・確定申告の季節が今年も到来。
第二弾 よくあるトラブル事例と回避のコツ(NY/NJ編)
•「ニューヨーク市勤務=市税がかかる」と誤解(本当は「ニューヨ ーク市居住」が要件)
市個人所得税は、「ニューヨーク市居住者(resident)」に対して 課税されるもので、職場がマンハッタンにあるだけでは市税の対 象にはならない。
居住判定は、
・ニューヨーク市を生活の拠点とする「ドミサイル(本拠)」かどうか
・ドミサイルは別でも、市内に「恒久的住居(permanent place of abode)」を持ち、かつ183日以上滞在しているかどうかといっ た要素で総合判断される。
途中でニュージャージーなどへ転居した場合は、ニューヨーク市 部分居住期間の所得だけ市税がかかり、その後は 州税だけ、とい う年内の切り替え調整も必要になる。ここを会社任せにすると、ニ ューヨーク市非居住なのに市税が天引きされ続ける、あるいは逆
•リモートワーク日数の扱いを放置 → 州配賦がズレる
ニューヨーク/ニュージャージーのように州境をまたいで通勤・ 在宅勤務をしている場合、どの州で何日働いたかが源泉・申告の キーになる。
・ニューヨーク非居住者がニューヨークでの勤務分だけニューヨ ーク州に申告するケース
・ニュージャージー居住者が、居住者申告+ニューヨーク非居住 者申告を両方行うケース 勤務日数カレンダーがないと、ニューヨークに過大課税・ニュージ ャージーへの二重課税といった問題が起こりやすくなる。
最低限、「ニューヨークオフィス出社日」「ニュージャージー自宅リ モート日」「出張日」はExcelやカレンダーで年初から記録しておく と、安全に州配賦ができる。
•日本の配当・投信売却益・年金の申告漏れ
米国税法上、米国居住者(グリーンカード保持者・Substantial Presence該当者など)は、世界中の所得を合算して申告する義 務がある。
•投資信託・ファンドの売却益・分配金
•日本の企業年金・厚生年金・国民年金
•日本口座の利子、保険解約返戻金 等
は、日本で源泉徴収されていても、米国申告での計上が必要(条約や外国税額控除の検討は別途)。ここを「日本で税金払っているから大丈夫」と思い込んで申告から落とすパターンが非常に多く、過少申告ペナルティの原因にもつながる。
•扶養・配偶者区分の設定ミス(ITIN/SSNの確認漏れ)
・配偶者や子供のSSN/ITINが未取得・失効しているのに、クレジ ット(Child Tax Creditなど)を取ったつもりで申告
・夫婦別申告/共同申告の選択が、移住時期やビザ・条約の扱い と整合していない
・日米で扶養認定条件が違うことを理解せず、日本側の感覚で扶 養家族を申告
といったケースが多発。SSN/ITINに問題があると、e-file拒否・ クレジット否認・追徴につながるため、毎年の申告前に番号とステ ータスを必ず確認しておくことが重要。
•情報開示不履行(FBAR/FATCA):高額の民事罰 → 最優先 で適正化
外国金融口座残高が一定額を超えると、
・FBAR(FinCEN Form 114)
・FATCA(Form 8938)などの別途報告義務が発生する。
FBARの場合、法律上は、
・非故意の違反でも1違反あたり最大1万ドル
・故意と判断されると、「10万ドル」または「口座残高の50%」のい ずれか、高い方まで民事罰が認められている(インフレ調整あり)。
金額・年数・口座数によっては、元本を上回るレベルのペナルティ ーになり得るため、「所得税の申告より先に、外国口座の報告義務 を洗い出す」くらいの意識で早めに対応するのが安全。
2) 失敗回避チェックリスト
•居住区分(居住/非居住/部分居住)の確定
・米国税法上の居住者か非居住者か(グリーンカードテスト・Substantial Presence Test 等)
•ニューヨーク/ニュージャージーの州居住者かどうか
•ニューヨーク市居住期間(部分居住を含む)
を最初に整理しておくと、どのフォームをどの組み合わせで出すかが明確になる。
•日本の所得・税金・口座の網羅表作成
Excelで、少なくとも以下の一覧を作ると便利。
・口座名/金融機関名
・年間の利子・配当・分配金
・売買損益(株・投信・FX等)
・その所得に対して、日本で源泉徴収された税額
・口座の最高残高(FBAR・8938 用)
•NY/NJ 配賦(勤務実態・日数・PPA/183 日)
・ニューヨーク州・ニューヨーク市の居住判定(183日ルール等)
・ニューヨーク勤務日数 vs 他州勤務日数
・在宅勤務の場所(ニュージャージーの自宅か、ニューヨークのア パートかなど)を、カレンダーや勤怠データをもとに一覧化してお く。年末にまとめて思い出そうとすると、ほぼ確実に記憶違いが出 るため、できれば月次で記録しておくのが望ましい。
•SALT・住宅・教育・クレカ/医療・寄附の控除集計
・州・地方税(SALT)
・住宅ローン利息(Form 1098)
・学費・学生ローン利息(Form 1098-T 等)
・医療費・保険料
・寄附金の領収書
など、「後から探すと行方不明になりやすい」書類を年内からフォ ルダ分けしておくと、締切直前のストレスが大きく減る。
*締切日に確定申告が間に合わない場合、まずは延長申請を。詳細は専門家への相談が望ましい。



