巻頭特集

寒い夜にはオーブン料理

オーブンは私のパートーナー

「オーブンなしの生活は考えられない」そう語るニューヨーカーが大勢いる。今回は、読者3人3様のオーブンとの付き合い方を探ってみた。


オーブン料理で和洋折衷・季節の料理を家庭で本格ピザ作り

本紙の連載コラム「レトロ作品まったりレビュー」でおなじみの俳優・鈴木やすさんもオーブン・ファンの一人だ。感謝祭の七面鳥からクリスマスのチキン、焼き魚から焼き豚、ナスのパルミジャーノそしてパンやプリンまでほとんど毎日のようにオーブン料理を作っている。コツは?「予熱をしっかり作ること。肉を焼くときには早めに冷蔵庫から出して室温に戻してやること。和食で魚を焼く場合は、下のブロイラーが便利。フライパンをアルミホイルで覆ってその上に同じ口径の焼き網を置いて焼くと後始末が便利ですよ」どれも実践に根ざした貴重なアドバイスだ。そんなやすさんに最も自慢のオーブン料理「自家製ピザ」を実演してもらった。

生地もソースも自家製フライパンで焼く本格ピザ

「自家製」なだけにトマトソースから手作りだ。30個のローマ・トマトを湯むきにしたら果肉を粉砕。コトコト煮ること2時間半。「アクはあえて取らないほうが旨味が出ます」とやすさん。これに、ニンニクやバジル、鷹の爪で味付けし超低温で煮込んだオリーブオイルをたっぷり合わせてソース完成。

その間、小麦粉1.5カップ+塩少々を水2カップとイースト、砂糖を合わせたものでこねてピザ生地を作る。塊がべたつかなくなったら湯煎にして1時間、発酵を待つ。食べる時間から逆算して20分ぐらい前にはオーブンを450°Fに設定。予熱を作っておく。

生地ができたら指で広げながら鋳物(いもの)製フライパンの上に伸ばす。その上にトマトソース、生モッツァレラチーズ(市販の半量を大きめの6つに切り分けたもの)、そしてやすさんのおすすめ薄切りトマトをのせていよいよオーブンの出番だ。フライパンごと一番下の直火が当たる鉄板の上にセットする。ジャスト7分間焼いたら、後半は庫内のラック上に置き換えてさらに7分。トータル14分で焼き上がったピザは、本場イタリアみたいに、生地の裏に焼き色がついて香ばしい。自宅で育てているバジルをあしらって完成。

歯ごたえがパリパリでソースは、とことんナチュラル。トマトの風味がたまらない。こんなカラダにいいピザも自宅にオーブンがあるからこそできる。「オーブンは暖かくて自然でとにかく楽しい。オーブンのおかげで世界が広がりました」と言うやすさん。今の夢は自宅に煉瓦造りのピザ釜を自作することだそう。

生地はよくこねたら湯煎にかけて発酵させる

湯むきトマトを潰して自家製トマトソースを作る

潰したトマトに自家製味付けオリーブソースを混ぜる

鋳物のフライパンいっぱいに広げた生地に自家製トマトソースを塗る

 

鈴木やす

映画監督、俳優。愛知県出身。1991年来米。「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立者。短編映画『Radius SquaredTimes Heart』(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。下積み時代には市内の日本料理店で働いた経験もあり料理の腕前はプロ級。

 


家庭のオーブンで愉しむ本格パティスリーの味わい

オーブンの魅力は家庭の台所で市販品に負けない美味しいお菓子が焼けること。ペイストリー・シェフの笠木れいさんにお話を聞いた。

来米してからオーブンの虜になり今ではほぼ毎日使用するという笠木さん。頻繁に焼くのはパンもしくは焼き菓子。お料理だとグラタンをよく作るそうだ。専門のお菓子ではクッキーやマドレーヌ等がギフトに喜ばれるので出番が多いのだとか。また季節のフルーツタルトはおもてなしの時に重宝しているそう。

焼き始めの20分前から高めで予熱

「下火が強い、庫内温度が表示より低い、などオーブンによって全く違うので『くせ』を知ることが大事です。専用の温度計で庫内温度を計ってみたり、クッキーを天板一面に並べて焼き、焼きむらを見てみるとよく分かります」と笠木さん。なるほど、プロは視点が違う。自宅でお菓子やパンを焼いても「よく膨らまない」「焦げてしまう」「味が悪い」など初心者には難しい点が多く挫折しがちだ。「失敗の原因にはさまざまな要因があるのですが、オーブンの観点からいうと予熱不足は原因の一つです。家庭用オーブンは予熱完了の合図が鳴っても実は庫内の温度が低いことがあります。私も家では必ず20分前位から50°F〜60°Fほど高めで予熱を入れるようにしています」

 

<笠木さんがよく作るお菓子のレシピをジャピオン読者に伝授!>

簡単なバターサブレ

材料(4cm丸型約18枚分)

塩………………………………………………………….1g

無塩バター(常温でやわらかい状態)……100g

グラニュー糖 (Granulated Sugar)…….. 60g

中力粉(All-purpose flour)……………….135g

作り方

①ボウルに粉以外の材料をいれて泡立て器でよくすりまぜる。

②粉をふるいながらボウルに加えて、ゴムベラでさっくりとまぜる。はじめはポロポロしているが、切り混ぜしているとまとまってくる。手でひとまとまりにしたらラップで包んで約5mm厚にのばす。冷凍庫で30分ほど休ませる。

③オーブンに予熱を入れる。その間に好きな型で型をぬいて天板に並べ、338°Fで15分〜18分こんがり焼き色がつけば完成。

※冷たい状態で焼くと形がきれいに焼けます。

※クリスマスのクッキー作りにぜひ! アイシングをしても楽しいです。

 

笠木れい

ペイストリーシェフ、マクロビオティックインストラクター。東京・青山の自然派料理教室で講師を約8年間勤め、カリフォルニアのオーガニックレストランChez Panisseでのインターンを経て、渡米。現在はマンハッタン区のベーカリーで働きながら、自身ではパヤパヤ・ベーカリーという屋号で製菓の販売やポップアップ、ケータリングなどを行う。

               

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