巻頭特集

寒い夜にはオーブン料理

日本のキッチンではオーブンの設置が一般的ではないため「ほとんど使っていない」といった声をよく聞く。しかし、食材にじっくり時間をかけて火を通すオーブン料理は美味しく、しかも脂の処理、調味など料理中の面倒がほとんどかからない利点もある。何かとせわしない歳末にはうってつけのオーブンの簡単で賢い利用法をご紹介。(文・取材/中村英雄)


プロが語るオーブンの魅力

和食とユダヤ料理のフュージョン・レストラン「シャローム・ジャパン」を経営するシェフの大河内佐和子さん(以下:S)とアーロン・イスラエルさん(以下:A)夫妻にとって、オーブンはお店でも家庭でも欠かせない存在だ。

オーブンの魅力とは?

S:日本の家にはあまりない大きなオーブンは、感謝祭の七面鳥の丸焼きや、厚いステーキ、マック&チーズなどのグラタン料理をするのに欠かせない調理器具です。クッキーやマフィンも焼けますし、出来た揚げ物を低い温度で保温したり、ブロイラーと合わせて、わざと少し焦がしたり、使い方は多様です。オーブンを使うと家も温まって冬にはいいですよ。物置にしておくのは勿体無いです!

オーブン料理を作るときの一般的な注意事項は?

A:まずしっかりと温めて、必要な温度にしてから使うことです。ピザを焼く時は500℉程に、作りたての天ぷらやパンケーキなどを保温するなら200℉以下が目安です。鍋は厚手のホーロー鍋など、保温性の高いものを選ぶといいです。シートトレイも2〜3枚あると便利です。あとは、火傷しないように、鍋つかみや厚手の乾いたタオルを用意。少しでも濡れているとスチームが出て火傷の原因になります。

「シャローム・ジャパン」ではどのようなオーブン料理を提供していますか?

S:オーブンで作る代表的な料理は、まず「ハラ」というパン。うちでは酒粕を練り混ぜてあります。ホタテのローストもオーブン料理です。セルリアックとパースニップのピューレの上に舞茸のローストを載せて、その上にホタテを入れ、グラタンのようにオーブンで火入れして、最後に味噌パン粉バターを載せて、色よく焼いてレモンをかけてお出ししています。

ユダヤ料理ではどのようなオーブンの使い方が多いのですか?

A:ユダヤ教では金曜の日没から始まるシャバットという安息日があり、「機械に触ってはならない」慣習があるため、オーブンに入れてあとは出して食べるだけというチョレントという料理が代表的なオーブン料理ではないでしょうか。牛肉や芋と豆などを煮たいわゆるシチューですが、オーブンでゆっくり煮込みます。日本のおでんにも通づるところがあるような気がします。オーブンで火を通すと全体から温まるので、ガスレンジと違って鍋の下の方の物が煮崩れるということがありません。

オーブンの掃除の仕方にコツはありますか? 魚を焼くと匂いがつきませんか?

S:掃除には「イージー・オフ」というスプレーが便利です。何かこぼしたら早めに拭くこと。後で焦げてこびりつかずに済みます。魚の匂いはあまり気にしたことはないですが、オーブンを使うときはファンを回してください。

 

アーロン・イスラエル

ニューヨークで生まれ育ち、美大の卒業制作に料理本を作る。ニューヨークの有名シェフ、アンドリュー・カルメリーニのもとで修行した経歴をもつ。

大河内佐和子

広島出身。大学留学で来米し卒業後にニューヨークへ。料理学校で研鑽を積みデイビット・ワルタックやアニータ・ローの下で腕を磨く。アーロンと出会いシャロームジャパンを始める。

 

「我が家で食べているレシピをまとめた本」と夫妻が今年出版した料理本『LOVE JAPAN』。朝食からサンドイッチ、麺類、鍋などの卓上料理やご飯もの、デザートなど80ものレシピが紹介されている。

 

<佐和子さんオススメのオーブン料理レシピ>

白身魚の包み焼き

 

①オーブンを350°Fに温める。

②カレイなどの白身魚の切り身の上にしめじや舞茸などのきのこ類と塩麹、バター、レモンを載せてパーチメント・ペーパーで包む。

③食べる直前にオーブンで10分焼き、取り出して5分休ませて完成。

(分量・詳細などは『LOVE JAPAN』P177ページに記載)

 

Shalom Japan

310 South 4th St., Brooklyn, NY 11211/TEL: 718-388-4012

shalomjapannyc.com

               

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