巻頭特集

進化し続けるトイレの世界

トイレについて学ぼう①

世界に誇れる日本のトイレ。その代表とも言えるTOTOニューヨークのギャラリーショールームに勤める細川和宏さんに話を伺った。

 

1989年創業、91年に設立されたTOTO USA。当時は日本と違い、まだ米国内の知名度もほとんどなかったという。それから30年以上経ち、日本ならではの高い技術、品質を取り入れた製品は、今やローカルの人々にも愛されている。同社の歴史や進化し続ける製品は、どのように米国市場で浸透していったのだろうか。

洗浄水量の規制により米国内でも注目の的に

米国市場では、米国および欧州のブランドと競合しています。92年に「エナジーアクト法」が施行され、これがTOTOの追い風となりました。この法律は、1・6ガロン(約6リットル)の水量でトイレ洗浄しなければならないというものです。当時、さまざまなメーカーが1・6ガロントイレを発売しましたが、多くのお客様から「一回の洗浄で流れない」という不満の声がありました。

そのような中、一回で洗浄できるTOTOトイレがお客様の信頼を勝ち取り、それ以降、高い品質を誇るブランドとして認知、評価されてきました。現在では、一回あたりの洗浄をさらに少量の水で流せる1ガロン(約3・8リットル)トイレも発売しており、環境に優しい商品の開発をさらに進化させています。

機能性の高さは業者もお墨付き!?

日本では、一世帯あたりのウォシュレットの設置が8割程度といわれていますが、米国では数割しかまだ設置されていません。現在は、高級ホテルやコンドミニアムなどを中心に米国市場にもウォシュレットの設置が拡大していますが、潜在市場規模としてさらに売上が増大すると推測しています。

最近はウォシュレットの洗浄便座機能だけではなく、その他の高機能と一体となった「ネオレスト」シリーズが人気です。同製品は今年8月に全ての機種をフルモデルチェンジし、全5機種となりました。それを目当てにショールームに来館されるお客様もいらっしゃいます。弊社の製品は、設置後もきちんと洗浄できる、故障しにくいことで知られており、アフターサービス網も全米で拡大しております。それが設備業者にも喜ばれている一つの理由となっています。

 

新商品の「ネオレスト」シリーズ

ネオレストは全5機種。1ガロン洗浄の他、さまざまな機能を有している。特質すべきは、EWATER+によってノズルやボール内をきれいに保つこと。便座のオート開閉やトイレ使用後の自動洗浄機能もあり、極上の日本式おもてなしを家で体現できる。写真(左からネオレストNX2、NX1、LS、AS、RS)

 

コロナ禍で注目 知名度も売上も上昇

新型コロナウイルスの発生により、トイレットペーパーの需給バランスの問題や接触に対する懸念に注目が集まり、ウォシュレットの他、非接触商品である自動水栓やセンサー式大便器、小便器の売上が大きく伸長しました。また、人々が自宅で過ごす時間が多くなったことや、郊外や他州に移る人が増加し、リフォームに着手する人が増えたことも要因だと思います。

徹底したリサーチ こだわりの強い顧客も

ショールームを訪れるお客様のほとんどは、エンドユーザーの方です。米国人はトイレにあまり関心がないのかと思っていましたがそんなことはなく、品質、機能、デザインにとても興味を示してくれます。事前に、当社や他社製品をいろいろと調べてくる方が多く、自分なりのこだわりトイレを設置したいという意思が伝わり、こちらも紹介しがいがあります。そして、購入への決断力も早いですね。

 

TOTOのセフィオンテクトは、ナノレベル(髪の毛の太さの10万分の1のサイズ)でトイレ表面を超平滑にできる技術。これにより汚物が付きにくく、付着しても簡単に取り除くことができる。

写真(左:従来の陶器表面、写真右:セフィオンテクトの表面)

 

歴史的な建物への設置 日本と違う苦労も

他州や郊外に住む場合と異なり、ニューヨーク市の歴史ある建物は全体的に狭く、賃貸アパートが多いためコンセントがバスルームにない、もしくは洗面台にコンセントがあってもトイレから離れているという場合もあります。ウォシュレットの設置をお客様が希望されても、まずコンセントの確認が必要となります。

また、トイレの大きさにはエロンゲートサイズ(大型)とレギュラーサイズの二つの大きさがあります。そのトイレの座面の大きさに合わせたウォシュレットをお選びいただくことも肝要です。

 

行列のできるブライアントパークの公衆トイレは、TOTO製品を設置している

 

トイレは清潔なもの 意識の変化を今後も期待

日本の場合は、きれいなトイレ作りをすることで本業の商売につなげようとする日本企業の思惑があります。

例えば、デパートにパウダールームを作ったり、フロア毎にコンセプトを変えたきれいで美しいトイレを作るなど、お客様が気軽に利用でき、そのついでに買い物もしてもらうという集客への狙いが考えられています。しかし米国では、公共トイレに対するそのような意識はなく、店で何か購入したらトイレを使用できるといったケースが多いように思います。トイレはきれいで心地良い空間であるべきという風潮が、この先も世間に浸透していってくれたらと思っています。

 

TOTO New York Gallery Showroom

20 W. 22nd St./TEL: 917-237-0665

totousa.com

営業時間: 月〜金曜 午前10時〜午後12時 午後1時〜4時30分(午後12時〜1時は清掃のため閉鎖)

               

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