巻頭特集

肉食解禁! バーベキューの季節

ニューヨーク最大の和牛を卸す「お肉屋」さんが教える

アメリカン・バーベキューの極意

とかく自己流でやって「盛り上がったけど肉の味は二の次」みたいなバーベキューが多くないだろうか? 失敗しないためのコツを肉の専門家に聞いた。


脱カルビ宣言

ニューヨークの在住日本人にバーベキューでどんな肉を焼く? と質問をすると、ほとんどの人が、「ハンバーガーかカルビ」と答える。カルビは脂分が豊富でジューシーな食感。焼肉レストランでお馴染みなので定番なのは納得できる。だが、牛肉には25以上の部位があり、バーベキューに適した「未知のビーフ」もたくさんある。

「カルビが美味しいのは当たり前、でも脂肪分が多く分量が食べられないので、バーベキューでは最後に少し出すぐらいで十分」と断言するのは、トモエフードUSAの竹重直樹社長。 同社は、ニューヨーク市内の高級レストランを顧客に抱え、和牛のシェアではナンバーワンを誇る精肉卸業のエースだ。

「僕が今いちばん推奨するのはイチボですね。モモ系の部位ですが、適度にサシ(脂肪交雑)が入っていて甘みがある上に、赤身特有のビーフらしい味わいがあります」と竹重社長。

ただし、赤身を美味しく食べるには相応の焼き方を知らなくてはならないという。ならば「ぜひ実戦で」と説得してご自宅の週末バーベキューにお邪魔した。

肉の選び方

バーベキューを美味しく楽しむための大前提は、食材の肉の選別。「正直言って、街のいわゆる「高級」スーパーで売っている赤身肉でもUSビーフでは役不足です」と手厳しい一言。

市内で買える肉は大きく分けて「USビーフ」、「US和牛(和牛とUSアンガス黒毛牛を掛け合わせた混合種)」、「和牛」の3種だが、バーベキューを成功させるためには、せめてUS和牛の赤身を用意したい。「US和牛のイチボ、ミスジ、ハラミと言った部位がとても美味しいです」と竹重社長。高級部位に負けない品質でお値段が手頃なのが魅力だ。

肉の切り方

日本人には網焼きというと薄いスライス肉をちょろっと炙るイメージが強いが、米国では肉を厚く切るのが常識だ。「赤身肉は最低1インチぐらいの厚さで焼いてください。そのために肉は塊で購入するか、肉屋さんで部位指定した時に、厚く切ってもらうことが大事です」分厚く切らないと肉は角の部分から焦げやすく、旨味を損なう。

肉は厚切りが基本。できれば塊で購入して自分で切るのが最良。写真はイチボ

肉の焼き方

火加減が何より大切だ。「最初は強火で、厚く切った肉の表面に焼き色がつくぐらい炙る」と竹重社長。「あとはこまめにひっくり返し、何度も『寝かせる』ことが肝要。」

『寝かせる』とは、焼いている途中の肉を一時グリルから外したり低温にするなどして、加熱に休憩をれること。「『寝かせる』と分厚い赤身肉の中に旨味や脂分が封じ込められ、柔かいけど適度に歯ごたえのある肉になるのです」。

焼き上がりの目安は、肉の硬さ。トングで肉の表面を押してみて反発がなければ、中はまだ生焼け。「多少経験が必要ですがやっているうちにわかります」。加熱から15分。

「これで完璧と」社長が太鼓判を押した赤身イチボ。焼きあがり後、数分冷まして、スライスしていただく。多少抵抗はあるもののゆっくり歯が沈む快感。噛むほどに染み出す肉汁は旨味に溢れ得も言われぬ満足感が口中に広がる。しかも、あとを引く美味しさで、いくらでも胃の腑に入る。夏の週末、バーベキューの真髄に触れた。

バーベキューで色々な部位に挑戦してみよう。写真はハラミ。トングで押しながら焼き上がりのタイミングを弾力で確認

こまめに肉を「寝かせる」のが美味しく焼き上げるコツ。

家庭で大勢の客を招く場合はガスが便利。竹重社長の愛用グリルはガスと炭の併用仕様

いい肉を買うならここだ!

街のスーパーでは、モモ系の良質な赤身肉はなかなか手に入らない。また店頭にあったとしても薄くスライスされていて「厚焼きバーベキュー」には適さない。精肉専門店に出向いて、直接、カットしてもらうのがベスト。例えば、ハーツデールにあるこのお店など。

Frontier Market Japanese Food & Deli

TEL: 914-831-3900

18 N Central Ave., Hartsdale, NY 10530

frontier-food-deli.edan.io

               

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