巻頭特集

我らのドジャース

ブルックリン・ドジャース栄光のかけら

ブルックリン・ドジャースが活躍したのは70年も前の話。もはや球場もなくファンの多くはこの世を去ったが、わずかながら市内に史跡は残る。


我が心のエベッツ・フィールド

数々の名試合の舞台となりブルックリンっ子にとっては自慢の本拠地だったエベッツ・フィールド球場。

1913年(大正2年)4月5日の対ヤンキース開幕戦で開場した。当時としては最先端の鉄筋コンクリート構造2層スタンド式のスタジアムで、収容人数25000人。球場正面にはイタリア直輸入の大理石が使われていたという。1938年(昭和13年)には照明設備も導入。同年6月15日の対レッズ戦で、初ナイターが催され、翌39年の8月26日には、大リーグ初のテレビ中継がここから行われた。

同球場はドジャース移転後の1960年2月23日に取り壊され、跡地には巨大なアパートが建つ。今では、そこに野球場があったことなど想像もつかないが「元エベッツ・フィールド」の表示を見て、失われた時代に思いを馳せるのもいい。地下鉄2、3、4、5ラインの「フランクリン・アベニュー駅」が最寄り。

住所: 55 Sullivan Place, Brooklyn, NY 11225

エベッツ・フィールド跡。ホームプレートがあった場所に記念の銅板


さらに球団史を遡る

ドジャースの公式な球団発足は1883年といわれる。米国野球の歴史は19世紀まで遡るが、60年代から野球の興行化が始まる。初期の人気プロチームの多くはブルックリン区にあり、そのうちの一つが「アトランティックス」。83年にパークスロープ地区のワシントン公園(3~4ストリートと4〜5アベニューが作るブロック)にあった野球場に本拠を移し、「グレイズ」「ブライドグルームズ」などと球団名を変えながら90年にはリーグ優勝を果たすほど大活躍した。

今でこそブラウンストーンが立ち並び「高級住宅地」と目される同地区だが、かつては庶民の街、野球の街だった。そして、球場周辺のストリートには路面電車が縦横無尽に走っていた。大人も子供もそれを器用に避けながら通りを横断。「市電を避ける奴ら」(英語でDodgers)がブルックリンっ子の自慢のライフスタイルでもあったため、そこからドジャースの愛称が生まれ、やがてそれが正式球団名となったのである。本拠地は、1913年にエベッツ・フィールドに移ったが、「ワシントン公園球場」の跡地は、現在、市民公園に姿を変えて、パークスロープ住民の憩いに欠かせない場所となっている。最寄りの地下鉄駅は、F、G、Rラインの「4アベニュー -9ストリート駅」。

住所: 3 St., 4 St. bet. 4 Ave. and 5 Ave. Brooklyn

ドジャースのルーツ。壁だけ残る旧本拠地


黄金時代の名勝負

1940~50年代のブルックリン・ドジャース黄金時代。毎年のようにリーグ優勝を飾ってワールドシリーズ出場のドジャースだったが、宿敵ヤンキースの前にはいつも惜敗。5回の敗北の後に1955年、ようやく本拠地エベッツ・フィールドでヤンキースを倒し、街は興奮のるつぼと化した。その翌年、またしてもワールドシリーズで頂上対決。2勝2敗で迎えた第5戦。ここでヤンキースのドン・ラーセン投手が、ドジャースの最強打線を相手に完全試合をやってのける。ワールドシリーズ史上では、唯一無二の野球史に残る偉業。2022年にヒューストン・アストロズが投手4人の継投で成すまでワールドシリーズでただ一つのノーヒットゲームでもあった。

ラーセンは第2戦で先発するも4四球で無死満塁を許し、結果、6点リードが台無しに。チームは13ー8でドジャースに負けたという辛酸を跳ね返しての大勝利だっただけにドジャースファンもこれには喝采を送った。投球数わずか97で達成した完全試合だが、ラーセン最後の一球がヨギ・ベラ捕手のミットに収まる瞬間を再現した実物大の銅像がヤンキースタジアム内のミュージアムに飾られている。6月の交流戦観戦の際には是非、見学したい。ちなみに、ドジャース最後の打者は生涯打率3割1分2厘の代打デール・ミッチェル。カウント2ストライク1ボールからの直球で空振りの三振に仕留められた。

ヤンキース・ミュージアム

E. 161 St., Bronx, NY 10451

mlb.com/yankees/ballpark/tours/museum

ドン・ラーセン

デール・ミッチェル


ブルックリン仕様のマーチもまだまだ健在!

公式ウェブサイトで当時のデザインをモチーフにしたアイテムが買える。

ジャッキー・ロビンソンの名前が入ったジャージ(134ドル) MLB

 

ビンテージ風のジャッキー・ロビンソンTシャツ(45ドル) MLB

1955年のワールドシリーズからインスパイアを受けたニューエラハット(43ドル) MLB

「B」が目を引くアイコニックな仕上がりのニューエラハット(41ドル99セント) MLB

 

               

バックナンバー

Vol. 1324

年末年始は日本を満喫!

お正月の日本は閉まっている店ばかり…。そんなイメージを覆す、“三が日OKスポット”をご紹介。「食べたい、買いたい、くつろぎたい」せっかくの一時帰国だからこそ、日本らしい時間を存分に楽しみましょう!

Vol. 1323

ホリデーを彩るワインの魔法  ─クリスマス・年末年始・大切な人と集う時、 “美味しい”を超える体験を、ワインと─

ホリデーシーズンは、家族や友人と集まる特別な季節。そんな時間をより豊かにしてくれるのが「ワイン」である。 今回は、ワインのスペシャリスト監修のもと、基礎知識からフードペアリング、ギフト選びまで幅広く紹介。初心者から上級者まで堪能できる、“ホリデーを彩るワイン”の楽しみ方をお届けする。

Vol. 1322

私たち、こんなことやってます!

睡眠時無呼吸症候群の治療に注力する、パーク・アベニュー・メディカル・センターのジェフェリー・アン院長と、保険対応も万全の総合ヘルスケアを提供するE.53ウェルネスの川村浩代さんに話を聞きました。

Vol. 1321

サンクスギビング特集 ニューヨーカーに愛される手作りパイ 〜ケーバーズの舞台裏〜

ウエストビレッジの一角に、どこかノスタルジックな空気をまとったパイ専門店「ケーバーズ」がある。ロングアイランド地区で生まれたこのブランドは、“農場から都会へ” をテーマに、素朴な焼き菓子をニューヨークの街へ届けている。季節のパイはもちろんビスケットサンドなど魅力は尽きない。今回は同店のミシェルさんに、人気の理由やホリデーシーズンの舞台裏について話を聞いた。