巻頭特集

【今週の巻頭特集】ソーバー オクトーバー:一カ月の休肝がもたらす静かな変化

お酒をやめることは、意志の強さの証しではなく、自分の調子を取り戻すためのセルフケアの一つ。世界中で広がる「ソーバーオクトーバー(禁酒月間)」は、心身のバランスを見つめ直す、穏やかな一カ月の習慣。飲まないことで見えてくる「自分」を、少しの勇気と共に体験してみませんか。(文・取材/伏見真理子)


お酒を手放し心と体を整える「リセット」という発想

お酒を一カ月だけ手放す。それだけで、体の内側では想像以上の変化が始まる。英国発祥の禁酒月間「ドライジャニュアリー」や、米国で広がる「ソーバームーブメント」の調査によれば、多くの人がこの一カ月で変化を実感しているという。数字で見る禁酒の効果について調べてみた。

睡眠の質

ドライジャニュアリーの参加者のうち、およそ71%が「睡眠の質が向上した」と回答(Forbes, 2024)。飲酒は、アルコールが分解される過程で脳が一時的に覚醒状態となり、深い眠り(ノンレム睡眠)を妨げる。そのため、寝つきは良くても夜中に目が覚めたり、朝起きても疲れが取れにくくなったりする。禁酒を続けることで睡眠リズムが整い、朝の目覚めが軽くなるとい声も多い。さらに、睡眠の質が上がることで、日中の集中力や気分の安定にも好影響をもたらす。実際に、米国の調査(NIH, 2023)では、アルコールを一カ月間控えた人の約6割が「仕事のパフォーマンスが上がった」と報告している。

体重と見た目

飲酒をやめることで〝空カロリー(エンプティーカロリー)〟が減り、代謝が整い、禁酒により58%が「体重が減った」と回答。平均で0・5〜2キロの減少が見られた。また、アルコールには利尿作用があり、体の水分やミネラルを奪ってしまう。そのため、肌の乾燥やくすみ、むくみの原因になることも。禁酒によりアルコールの利尿作用が弱まることで、水分保持力が回復。54%の人が「肌の調子が良くなった」と認めている。(Medical News Today, 2024)。

疾患リスクを減少

飲酒はがんや肝臓病、膵臓病、消化器などの疾患リスクを高める。そして、禁酒により自律神経の刺激が落ち着き、血圧や心拍数が安定してくる傾向も。毎晩の一杯をスキップするだけで肝臓は「休肝モード」に入り、肝臓の硬さが10〜20%改善したという研究結果(Alcohol Change UK, 2024)も報告されている。

節約効果&ライフスタイルの見直し

お酒の購入や外食時のドリンク代、飲み会での支出、帰りの交通費なども合わせると、飲酒にかかる金額は意外と大きなもの。一カ月禁酒するだけでも、思っていた以上の節約効果を実感できるかもしれない。さらに、飲みの誘いが減ることで夜の時間にゆとりが生まれ、お金と時間の両面で余裕ができ、生活全体のバランスを整えるきっかけにもなるだろう。

 

 

               

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