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当コラムでは、食ビジネス戦略のスペシャリスト、釣島健太郎が米国食ビジネスを現在、過去とさまざまな観点から検証。その先の未来へのヒントやきっかけを提示していく。
米国の一般的な寿司屋に絶対欠かせない寿司ネタ御三家(Top 3)はマグロ、サーモン(鮭)、ハマチである。皆様が米国内のどの地域の寿司屋に行ってもTuna、Salmon、Hamachiは必ずメニューに載っている。
この御三家ネタに共通ているのは、脂がのっている事。この御三家ネタで日本からの仕入が主力であるネタは実は一つしかない。本マグロは日本から空輸されている量は多いが、ボストン沖、南インド洋、地中海と世界中で天然魚が獲れ、また世界中で養殖魚が生産されている。キハダマグロはフィリピン、インドネシア等、東南アジア諸国である。
一方サーモンは養殖が多く、ノルウェーが養殖世界第一位で、チリが第二位である。サーモンはノルウェーの養殖魚が普及した事で生食が一気に普及した。
米国で食べられる脂ののったハマチは日本での養殖がほぼ全てで、鹿児島、愛媛、長崎県等が主要な生産地である。
米国向けハマチと日本向けハマチの違い
「脂ののったハマチ」と上述したが、米国向けのハマチは日本で一般的に売られているハマチと違い、米国仕様になっている。日本のハマチは身が締まり、歯ごたえがあるが米国向けのハマチは日本のものより脂ののりがしっかりとしていて、柔らかい。これには歴史的な背景がある。
1980年代、寿司が米国中に広がっていくにあたり、脂ののった旨い白身魚が手に入らなかった。赤身魚はマグロはボストン沖の天然魚、サーモンはアラスカの天然魚等が出回っており、当時はあまり仕入に困っていなかった。しかし白身魚は供給、値段など様々な理由で米国に入っていなかった。米国人好きの脂ののった赤身魚にも引けを取らない白身魚はないか。そこで米国の日系鮮魚業者が注目したのが脂ののったハマチであった。
当時日本でもハマチの養殖魚が更に広く普及し始めた頃であった。また養殖ハマチは国内では一年から二年物の小さい魚体のハマチが取引されていた。しかし脂がのった米国向けはハマチは二年から三年物となり、高値で取引が可能であった。日本国内とすみ分けが上手く出来た事から日本の養殖業者にとっては新たなビジネスチャンスとなった。
1980年代当時の日系鮮魚業者の読みは当たり、ハマチは米国の寿司ネタ御三家へと成長したのである。物事が広がり、定着していくには味の良し悪しだけではなく、流通の理由、都合が時代にマッチする事も重要であると言えるだろう。
日本の魅力をニューヨークへ
話しは少し変わるがこの五月、ニューヨークは「JAPAN MONTH」である事をご存知だろうか。在ニューヨーク日本国総領事館とJETROが共同で主催し、ニューヨーカーに日本の食や文化、魅力を伝える事を目的とした様々な企画、プロジェクトが実施される。
「日本の地方料理」に焦点を当てた特別メニューが5月1日から31日まで、20店舗以上のレストランで提供される。それらのメニューを対象としたSNSコンテストが実施され、特別メニューを楽しんでいる料理写真の投稿を募集している。(ハッシュタグ:#mayisjapanmonth)コンテスト優勝賞品は日本へのペア往復航空券。
またJAPAN MONTHの最大の目玉は5月13日のジャパンパレードとストリートフェア。セントラルパークウェスト81〜67丁目がパレードで、72丁目は日本食ストリートとしてベンダーが出展。パレードではアニメ、太鼓、極真空手等日本の様々な文化が紹介される。一カ月間を通したこのプロモーションは食文化とサブカルチャーが一体となって、日本の魅力を伝える官民一体となった取り組みである。皆様も是非レストランを訪問する等して、自分でも気付いていない、日本の魅力を再認識して頂ければ幸いである。
釣島健太郎
Canvas Creative Group代表
食ビジネスを中心とした戦略コンサルティング会社Canvas Creative Group社長。
「食ビジネスの新たな未来を創造する」をコンセプトに、現在日本からの食材・酒類新事業立ち上げ、現地企業に対しては、新規チャネル構築・プロモーションから、貿易フローや流通プロセスの最適化、物流拠点拡張プランニングまで、幅広くプロジェクトを手掛ける。
canvas-cg.com
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