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今年もサンクスギビング、感謝祭がやってきた。この日ばかりは眠らない街ニューヨークも通りから人が消えて、どこの店に行ってもガラガラだ。アメリカ人は一斉に故郷の実家に帰郷して家族で食卓を囲む。僕たちニューヨークの日本人はもちろん街に取り残されることになる。
17年前に狭いマンハッタンのアパートから広めのブルックリンのアパートに越して来てから、そんな取り残された日本人や、実家が遠すぎて帰れないアメリカ人の友人たちを、わが家に招待して感謝祭ディナーを開くようになった。近しい友達数人で始めたが「あの子も行くところがない」「ルームメイトも連れて来ていい?」とどんどん膨れ上がり、最近では20人ほどの大感謝祭ディナーになった。
僕のターキーを焼く腕も徐々に上がり、今では中までしっとりふっくら柔らかく焼き上げられるようになった。定番のクランベリーソースも作るけど日本人の口に合うようにポン酢とバターともみじおろしで作ったソースも添える。このソースはさっぱりしてコクがあり、鳥料理に合うとアメリカ人からも好評だ。
うちのカミさんをはじめ、ベジタリアンのゲストも多いので、カミさんが担当になってギリシャ風スピニッチパイやらパンプキンスープやらも作る。デザートのパイもちゃんと生地をバターと小麦粉で手作りして、スイートポテトパイとアップルクランベリーパイを焼く。
多くのゲストは大抵赤ワインを一本提げてやってくる。ちょうどボジョレーヌーボーの解禁の時期に重なるのでその年のボジョレーを持ってくるゲストも必ずいる。15〜16本のボトルワインをずらりと並べてワインテイスティングをしながら、ワイワイやるのもこの日の楽しみの一つだ。
娘ができてからは子連れの家族も増えた。別の部屋に子供用の小さなテーブルと椅子を用意して放っておけば、勝手に子供同士で遊んでくれるので楽である。サンクスギビングはアメリカ人にとっては大切な家族との時間、わが家にとっては身近な友人に感謝を込めておもてなしをしながら楽しく過ごすとても大切な日なのだ。
家族の温かさ
そんなサンクスギビングの日に家族や友人と見るのにぴったりな映画を紹介したい。前回に引き続きジョン・ヒューズ監督のファミリー・ロード・コメディーだ。70年代後半に大ヒットしたジョーズやスター・ウォーズに始まったブロックバスター映画に続けとハリウッド映画会社はこぞって大規模な予算を組んで、大ヒットを狙いアクションアドベンチャー映画を作り続けた。
80年代も後半になると、僕はシュワルツネッガーとかスタローンが戦車を吹き飛ばす、アクション映画の数々に食傷気味になった。そんな時代のジョン・ヒューズ監督のコメディー映画は、80年代のハリウッド映画史に起こった素晴らしい出来事であった。
シカゴからニューヨークに出張でやって来た広告会社のニールは煮え切らないクライアントを相手にいら立っていた。数時間後には感謝祭ディナーを楽しみにしている家族の待つ、シカゴへの便が出てしまう。やっとの思いでタクシーを拾おうとしたニールは、セールスマンで全米を旅するデルに横取りされてしまう。ギリギリ間に合って乗り込んだ飛行機は、吹雪のシカゴを避けてカンザスに。そこで再会したデルと、行けども行けどもシカゴにたどり着けない災難続きの珍道中。
全く正反対のタイプのスティーブ・マーティンとジョン・キャンディのコンビが絶妙におかしい。今年のサンクスギビングは、家族、友人と笑い転げて最後は家族の温かさを身に染みながら、43歳の若さで亡くなったジョン・キャンディをしのんでみたい。
今週の1本
Planes, Trains and Automobiles
(邦題: 大災難P.T.A.)
公開: 1987年
監督: ジョン・ヒューズ
音楽: アイラ・ニューボーン
出演: スティーブ・マーティン、ジョン・キャンディ
配信: Google Play、Amazon他
家族とサンクスギビングを過ごすため、ニールはニューヨークからシカゴへ向かう。しかし途中で出会ったセールスマンのデルと、災難続きの珍道中が始まる。
鈴木やす
映画監督、俳優。1991年来米。
ダンサーとして活動後、「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」設立。
短編映画「Radius Squared Times Heart」(2009年)で、マンハッタン映画祭の最優秀コメディー短編賞を受賞。
短編映画「The Apologizers」(19年)は、クイーンズ国際映画祭の最優秀短編脚本賞を受賞。
俳優としての出演作に、ドラマ「Daredevil」(15〜18年)、「The Blacklist」(13年〜)、映画「プッチーニ・フォー・ビギナーズ」(08年)など。
現在は初の長編監督作品「The Apologizers」に向けて準備中。
facebook.com/theapologizers
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