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ニューヨークで活動する注目の若手アーティストを紹介
2022年の渡米当初、慣れない土地での仕事に戸惑うことも多かったという、メイクアップアーティストの佐藤栞さん。日々の撮影や作品制作を重ねる中で気が付いたのは、技術以上に大切なのは「自分の感覚に正直でいる」ということだった。メイクを通して自分らしさを表現し、日々更新し続ける佐藤栞さんの価値観と、その信念に迫る。
メイクと向き合う日々
メイクには「これが正解」という形はないと思っています。基礎技術はもちろん必要ですが、自分自身の感覚や判断力を磨き続けることが何よりも大切だと感じています。普段ファッション誌やアートブック、美術館からインスピレーションを得ることもありますが、ふと目に入った夕焼けの色やその重なり方、さまざまな場面で目にする物の配置やバランスなど、意識しなければ通り過ぎてしまう瞬間にも、自分なりの「美」があると感じています。ただ漠然と美しいと思うだけでなく、その理由を自分で考え言語化することが、表現を磨くための大切な鍛錬だと思っています。
アシスタントとして現場に入る中で、技術だけでなく、細かな手の動きや立ち振る舞い、周囲への気配りも意識して観察してきました。そうした経験から、自身に合ったやり方を少しずつ取り入れ、自分なりの表現を探し続けています。
撮影現場にて、モデルと向き合いながらメイクを施している様子
仕事を通して得る喜びと達成感
自分のメイクを気に入ってもらえた瞬間や、「自分にできる最善の技術や表現ができた」と感じられたときには、何にも代えがたい喜びを感じます。一方で、うまくいかないことや反省もありますが、「もっと良くするには」と常に考えることを大切にしています。成功だけでなく、失敗や反省も含めて考え続けることで、少しずつ自信が育まれます。その姿勢はメイクの現場だけでなく、日常の物の見方にも影響を与えており、自分が日々更新し続けている感覚があります。
モデルとフォトグラファーの写真に合うバランスで仕上げたメイク
ニューヨークで変わった価値観
日本で活動していた頃は、今よりもずっと自分が幼く、無意識のうちに周囲の目を気にしすぎていました。人から良く見られたいという気持ちがどこかにあり、それが生きづらさにつながっていたのかもしれません。
今でもふとした瞬間に、人の顔色を伺ってしまうことがありますが、さまざまな人と出会う中で、「それも自分なんだ」と受け入れられるようになりました。弱さや不器用さも含めて自分を認めた上で、自分の感覚や考えを大切にしていきたい。そう考えられるようになったことが、価値観の大きな変化であり、メイクの表現や日常の選択にも影響しています。
Women’s Magazine掲載。モデルの個性と自分らしさを重ね、シンプルさの中に強さを込めた作品
自分らしい表現の信念
一番大切にしているのは、自分の感覚に正直でいること。正解を探すよりも、自分がどう感じ、「この人にとって何が自然か」を基準に判断します。違和感と向き合うことで、自分にしかできない形で相手の個性を引き出せると考えています。
また現場では、その場の空気や状況に合わせて柔軟に対応することも必要です。大切なのは、合わせる中でも自分らしさをどう取り入れるか、試行錯誤し続けること。そうした姿勢でいることで、自分に合わない人がいても、自然に受け入れられるようになります。全員に理解される必要はなく、自分らしい表現や在り方を大切にすることが、信頼関係につながるのだと思います。
今後の展望
これまで大切にしてきた感覚や姿勢を忘れず、メイクの表現を一つひとつ丁寧に積み重ねていきます。まだ模索中ですが、「自分らしい表現」を問い続け、現場や作品、関わる人に誠実に向き合っていきたいです。また、私の表現や在り方に対して少しでも共感してくれる人が「自分を肯定してもいい」と思えるきっかけになれば嬉しいです。そんな思いを胸に、これからもニューヨークで表現を続けていきたいです。
佐藤 栞 (Shiori Sato)
東京都出身。バンタンデザイン研究所で2年間 メイクを学ぶ。在学中から撮影現場などでアシ スタントとして経験を積み、卒業後も約10カ月 間アシスタントとして活動する。2022年1月に 渡米し、現在はニューヨークを拠点にメイクアッ プアーティストとして活動する。ファッション誌や ファッションウィークなど、さまざまな現場で経 験を積み、アシスタントワークと並行しながら、 自身の作品制作に取り組んでいる。



