現在、インペリアル劇場で上演中のミュージカル『CHESS』。1980年代の冷戦時代を舞台に、政治と人間関係の駆け引きを描いた本作は、88年のブロードウェー初演以来、約37年ぶりとなる本格的なブロードウェー・リバイバルとして2025年秋に開幕し、大きな注目を集めている。今回編集部が実際に観劇し、その魅力を体感してきた。
豪華キャスト陣。(左)フレディ・トランパー役を演じるアーロン・トヴェイト、(中央)フローレンス・ヴァッシー役を演じるリア・ミシェル、(右)アナトリー・セルギエフスキー役を演じるニコラス・クリストファー
本作は、豪華なキャスト陣に加え、トニー賞受賞のマイケル・メイヤーが演出を担当。脚本の改訂にはエミー賞受賞のダニー・ストロングを迎え、1988年版をベースにしながらも、現代の観客に向けて再構築された新演出版となっている。
物語の舞台は1979〜80年代の国際チェス選手権。米国代表の傲慢な天才プレーヤー・フレディ、ソ連の冷静な名人・アナトリー、そして二人の間で揺れる女性フローレンスを軸に、愛と対立、さらには国家の思惑が複雑に絡み合っていく。
そんな物語をより印象的にしているのが、本作ならではの音楽の存在感だ。舞台はオーケストラの演奏で幕を開け、ピラミッド型に配置されたオーケストラの音が劇場に響きわたる。俳優が登場する前の数分間、音楽だけで空気を支配し、観客は一気に作品世界へ引き込まれた。その演出には、自然と鳥肌が立った。
楽曲を手掛けているのは、ABBAのメンバーであるベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァース、そして『ライオンキング』や『アラジン』など数々の名作を世に送り出してきた作詞家ティム・ライス。ポップやロック、ドラマチックなバラードが融合した楽曲は、本作ならではの世界観を鮮やかに描き出している。
中でも、80年代に世界的ヒットとなり、米ビルボードチャートでも上位にランクインした『One Night in Bangkok』は、本作を象徴するナンバーの一つ。舞台上でも強いインパクトを放ち、客席の熱気を一気に高めていた。観劇前に公式サイトなどで楽曲をチェックしておくのもおすすめだ。
第2幕の幕開けを飾るのは、人気ナンバー『One Night in Bangkok』
政治や人間関係を描くドラマ性の高い作品でありながら、音楽の力と俳優陣の圧巻の演技・歌唱によって、ブロードウェー初心者でも最後まで楽しめる一作。特にABBAや80年代ポップやロックが好きな人にはぜひ注目してほしい。
アンサンブルのエネルギッシュなダンスも見どころ
なお、編集部が注目したオーケストラには、日本人ベーシストの姿も。次号からは、ブロードウェーで活躍するベーシスト・但野友香さんの新連載がスタートする。連載では、舞台裏の様子を彼女の視点から紹介。俳優とオーケストラの出演環境の違いやミュージシャンがブロードウェーに立つまで道のり、週8回公演のルーティーンなど、普段はなかなか知ることのできない舞台の裏側を届ける予定だ。こちらぜひもお楽しみに。
〈公演スケジュール〉
火・木・金:午後7時
水・土:午後2時/午後7時30分
日:午後3時
Imperial Theatre
249 W. 45th St.