ニューヨーク&#
ニューヨークで活動する 注目の若手アーティストを紹介
昨年春にニューヨークで始動した新生デザインスタジオ「Koyubi studio」。Rhode Island School of Design(RISD)グラフィックデザイン科の同級生だった髙坂美桜さん、花田美月さん、冨川もねさんの三人で設立した。代表の髙坂さんにデザインへの思いについて話を聞いた。
──なぜ、ニューヨークを活動の拠点として選びましたか?
書籍出版もデザインもデジタル化が進む中、アナログなもの、手で触れるものへの揺り戻しが世界的に起きていると感じています。コロナ禍が明けて人々が再び集まれるようになり、直接交流できるアートブックフェアが世界中で勢いを増しています。その中でもニューヨークは、最大規模の「New York Art Book Fair」をはじめ、「Brooklyn Art Book Fair」、「Press Play」などのブックフェアが継続的に開催される、アートブック文化の中心地です。南米やアジア、ヨーロッパからアート出版社やZINE愛好家たちが集まり、本という形を通してトレンドやアイデア、リサーチをシェアします。異なる文化や視点がアートブックという媒 体のもとで交じり合う光景が、とても美しく面白いと感じています。そういう場所でものづくりをしたかったというのが、ニューヨークを選んだ大きな理由のひとつです。
──友人同士で夢を追いながら制作を続けることの喜びと難しさ、その両面があるそうですね。
様々なクリエイターが集うニューヨークで、出版を通してコミュニティーの人たちと対話する機会が増えました。特にアートブックフェアに出展すると、来てくれた方から直接反応や感想を聞けるのがとても嬉しいです。そしていつかKoyubi自身のコミュニティーができたらいいなと思っています。日々、様々なクリエイターからインスピレーションをもらえるのは、ニューヨークならではだと感じます。
三人とも日中はデザイナーとして会社で働いているので、時間の確保が一番の課題です。生活や仕事が忙しくなるとプロジェクトが止まりがちなので、アートブックフェアなどに積極的に応募して締め切りを作り、制作の推進力にしています。職場でも家でもデザインに向き合う毎日ですが、自分たちがいいと思ったものを作る時間は楽しいです。また、始動して1年も経っていないので、資金のやりくりは難題です。赤字を出さないよう、クライアントワークの収入を制作費に回しています。
──デザインをする上でどのような点にこだわっていますか?
知的好奇心を掻き立てるデザインが好きです。意識しているのは、「Familiar」と「Unfamiliar」の混在です。見た瞬間に親しみを感じるけれど、よく見ると少し不思議で、知らない世界へ引き込まれるような感覚です。まず親近感で引き寄せて、そこから未知への好奇心につなげる。そのバランスを大切にしています。
──多文化デザイナーとしてのアイデンティティについて、制作や生活の上で感じることについて教えてください。
日本、アメリカ、中国で生活したことがある私にとって、多文化であることはデザインの現場で活きています。日本語・英語・中国語それぞれのタイポグラフィーには独自のルールや美学があり、その知識を横断しながらデザインできることは大きな強みだと感じます。それぞれを行き来しながらミックスしていくことで、ひとつの文化に収まらない独自のスタイルを作りたいです。また、歴史や社会のコンテクストを意識することも、私のデザインの根底にあります。デザインはコミュニケーションのひとつなので、異なる文化や価値観の間で、どのように架け橋となれるかを考えながら制作しています。
──今後取り組みたいテーマや挑戦について教えてください。
自分の文章とデザインをもっとミックスさせた作品を作りたいです。現在、紀行文を執筆中で、地図のデザインや写真、イラストなどを組み合わせ、旅の足跡をたどるような体験を本のデザインを通して表現したいと考えています。また、実験的な本のアイデアもたくさんあります。「The Book of Somnivexillology」という、人々が夢の中で見た架空の旗を集めた本を現在制作しています。「Archive of Archives」は、世界中のニッチな資料館や研究所を取材し、アーカイブという行為とその重要性について考える本です。デザインと好奇心が交差するような、これまでにないものを作り続けていきたいと思っています。






