冬のランニン&#
在米日本人の健康と医療をサポートする「FLAT・ふらっと」がお届けする連載。アメリカで健康な生活を送るために役立つ情報を発信します。
私が渡米してまず驚いたのは、米国に住む人々の肥満の深刻さでした。実際、日本人の平均BMI(ボディマス指数)は約23・6と標準範囲内ですが、米国人の平均は約29・1と肥満に近い水準にあります。その結果、心筋梗塞の罹患率は日本では約0・06パーセントですが、米国では約4・8パーセントと高いのです。
心臓病をはじめ生活習慣が発症や進行に影響する疾患は、生活改善と早期対応で予防できます。今回は、そのための五つのポイントをご紹介します。
①高血圧症
高血圧は血管に持続的な負荷をかけ、血管壁を傷つけて動脈硬化を進行させます。米国では高血圧の基準は130/80ミリメートル・エイチジー以上(米国心臓協会)、日本では140/90ミリメートル・エイチジー以上(日本高血圧学会)です。
米国人の約47パーセントが高血圧といわれていますが、日本人でも男性の約60パーセント、女性の約41パーセントが高血圧とされています。原因の一つは塩分の摂りすぎで、日本人は1日平均約10グラム、米国人は約8・5グラムの食塩を摂取しています。日本高血圧学会は1日の食塩摂取量について6グラム未満を推奨しています。
日頃から減塩を心がけ、外食や加工食品は塩分が多く含まれているので注意しましょう。
②糖尿病
持続的な高血糖は血管内皮を傷つけ、動脈硬化を進行させます。糖尿病の診断基準は米国・日本ともに、空腹時血糖126ミリグラム・パー・デシリットル以上、またはヘモグロビン・エー・ワン・シー(過去1〜2カ月の平均血糖値)6・5パーセント以上です。
米国では成人の約11・6パーセントが糖尿病であり、日本では男性が約7・1パーセント、女性が約4・5パーセントとされています。
塩分だけでなく、糖分の過剰摂取にも注意が必要です。たとえば、500ミリリットルの炭酸飲料(ソーダ等)には約55グラムの糖分が含まれ、角砂糖13〜14個分に相当します。糖分摂取を抑えるには水や無糖茶、小分けスナックの利用が有効です。
③脂質異常症
悪玉コレステロール(LDL)の増加は血管内にプラーク(脂の塊)を形成し、動脈硬化を進行させます。一方、善玉コレステロール(HDL)には、余分なコレステロールを肝臓に戻し、動脈硬化の進行を抑制する働きがあります。
米国心臓病学会では、LDLが100ミリグラム・パー・デシリットル以上であれば、心血管リスクをふまえて治療が検討されます。特に高リスク群(すでに心筋梗塞の既往)では、LDLを70ミリグラム・パー・デシリットル未満に抑えることが治療目標です。日本の基準も同様の内容です。一般的にHDLは40ミリグラム・パー・デシリットル以上が正常値です。
米国の成人の約53パーセント、日本は男性の40パーセント、女性の48パーセントが予備群を含め脂質異常の状態にあります。脂質異常の改善には、食事の見直しが必須です。特に赤身肉を控え、魚やナッツを中心とした「地中海式食事」が推奨されています。
④喫煙
喫煙は血管を収縮させ、酸化ストレスを高めることで動脈硬化を加速させます。また、肺がんをはじめとしたがんや呼吸器疾患のリスクも高まります。米国では成人の喫煙率は約11パーセントにまで低下しました。一方、日本では男性25・6パーセント、女性6・9パーセントが喫煙しています。電子タバコも心血管系に悪影響を及ぼすとされており、禁煙の代替手段としての使用には慎重さが求められます。ニコチンガムやパッチといった補助製品や、禁煙外来などの支援を活用しましょう。
⑤運動
運動不足は代謝や血流を低下させ、動脈硬化のリスクを高めます。肥満の要因でもあります。
日本人の1日の平均歩数は男性6628歩、女性5659歩ですが、米国では5900歩程度。ただし車の移動が中心の地域では、平均より歩数がはるかに低い人もいるでしょう。日本の「アクティブガイド」では1日8000歩以上、米国心臓協会は中強度の運動(息が弾むが、会話はできる程度)を週150分(1日30分×週5日)行うことを推奨しています。
適度な運動は骨粗鬆症の予防にもつながり、健康増進の重要なカギです。
また年に一度、プライマリケア医による定期健康診断(Annual Wellness Visit)を受け、健康管理をしてもらうことをお勧めします。
相馬真子
日本循環器学会循環器専門医
2024年に渡米し、現在はメリーランド大学大学院にて生命情報学を学ぶ。FLAT・ふらっとでは、患者サポートミーティングのファシリテーターなどを務める。
●サポートミーティング情報●
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「FL AT・ふらっと」は、がん患者や慢性疾患、高齢者、特別支援が必要な子どもを持つ保護者、介護者など、在米日本人の健康を、広い範囲でサポートする団体です。
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