~New Yorker’s English Expressions~ ニ&
自身の子供の進学経験と制度理解をもとに、海外教育コンサルタントが入試制度から学生生活、大学院進学まで、米大学の全体像を解説します
アメリカの大学入試は今、大きな転換期を迎えています。
かつては「SAT・ACTの点数」と「高校の成績」が合否を左右するわかりやすい構図でしたが、この数年で入試のルールも、大学が求める学生像も、多方面から同時にアップデートされつつあります。
SAT・ACTの「テストオプショナル」シフトの現在地
コロナ禍をきっかけに、全米の大学は一気にSAT・ACTの必須提出を停止し、「スコアは出しても出さなくてもよい」というテストオプショナル方式へと舵を切りました。その結果、ここ数年テストスコアを出さなくても出願できる大学が大幅に増えました。出願数が増え、多様なバックグラウンドの学生に門戸が開かれたというポジティブな変化が生まれました。
一方、2025〜 26年度 の入試に向けては、もう一段階進んだ変化も見え始めています。大学の一部は、「やはり学力の指標としてテストは必要」としてスコア提出必須に戻し、別の大学では「当面テストオプショナルを継続」、さらに「テストフリー(スコアを見ない)」へと移行するなど、方針が大学ごとに分かれ始めています。ここで大事なのは、「テストオプショナル=テストがいらない」ではないという点です。実際、高いスコアを持つ受験生にとっては、依然として大きなアピール材料になります。テストが苦手な受験生は、GPAやエッセイ、課外活動で勝負しやすくなったという意味で、「テストをどう使うかを自分で選べる時代」になったと捉える方が正確です。
また、同じテストオプショナルでも、提出の有無に関係なく同等に評価する大学もあれば、建前は任意でも、合格者の多くがスコアを提出している、実質テスト推奨の大学もあります。受験生側としては、志望校ごとの最新ポリシーを確認することをおすすめします。

留学生枠と「欲しい学生像」の変化
アメリカの大学で学ぶ留学生数は再び増加傾向にあり、特にSTEM(理工系)やビジネス、コンピューターサイエンスなどの分野で、国際学生が占める割合が非常に高くなっています。大学ごとに、「どんな国際学生に来てほしいか」というメッセージが明確になってきており、「学力+人柄+活動歴+価値観」のバランスで学生を選ぶ傾向が強まっています。
さらに、アメリカ在住者にとって重要なのが、国籍やビザによって、違いがあるという点です。アメリカ市民・永住者(グリーンカード保持者)は「国内生」として扱われ、州立大学では州内授業料やニーズベース奨学金の対象になりやすいです。保護者の駐在員ビザなどで滞在している子供は、多くの場合「留学生」枠に入り、学費や奨学金の条件も別枠になります。
つまり、「アメリカの高校に通っている=みんな同じ条件」ではありません。どの区分で評価されるのかによって、合格の基準や学費の負担、奨学金の可能性も変わってきます。日本人家庭にとっては、早い段階で「自分の子供はどの枠で見られるのか」を理解しておくことが、進学戦略を立てるうえで欠かせません。
多様な入学経路―コミカレ編入という選択肢
3つ目の大きな変化は、入学ルートは一つではないという考え方が一般化してきたことです。最初から名門4年制大学を目指すだけでなく、コミュニティーカレッジ(コミカレ)からの編入や、専攻選びを重視した進学など、さまざまなルートが存在します。
最初の2年間を少人数制のコミカレで学び、英語や数学、一般教養の基礎を固めてから、希望する4年制大学の3年次に編入するというルートがあります。この方法であれば、
•コミカレの授業料が比較的安く、トータルの学費を抑えやすい
•コミカレで良いGPAを取りながら必要科目をクリアすることで、編入時に学力を証明できる
など、メリットがあります。
一方、「コミカレに行けば自動的に4年制大学に上がれる」というわけではありません。実際には、
•志望する大学・専攻がどのコミカレの単位をどう認定するか
•何年以内にどの科目を、どの成績で取る必要があるか
といった要件を調べたうえで、逆算して履修計画を立てる必要があります。
コミカレから大学編入ができること、つまり専攻やキャンパスを途中で変更しながら、自分に合う進路を探していくといった〝段階的なステップアップ〞が制度として整っていることは、アメリカの大学システムの大きな強みです。
矢島美紀
海外教育コンサルタント
海外出産や自身の子供の米英私立校受験の実体験を基に、アメリカから教育コンサルティングを提供。米国教育・大学入試制度に精通し、セミナーやオンライン相談、現地スクールツアーを通じて進路設計を支援。著書『日本のアタリマエを変える学校たち』掲載。医療現場に携わり、医療的視点を取り入れながら、生活・将来設計まで見据えた実践的なアドバイスを行う。



