巻頭特集

今熱い「ブロス」って?あったかスープで芯までぽかぽか

プロ直伝!
お家でブロスを作ってみよう

まだまだテークアウトが主流の日々が続くニューヨーク市において、自宅で料理をする日は多い。前ページで、ブロスの栄養価の高さが身体にいいということが十分に分かったところで、実際に家で作ってみよう。ジャピオンライターが実際に自宅でのブロス作りを行った。

今回はレストラン「ミフネ・ニューヨーク」の若手ヘッドシェフとして有名な島野雄さんに指南してもらい、ブロスを作ってみた。使った材料はチキンと野菜。材料はどこのスーパーでも手に入るものなので簡単に調達でき、材料費もそこまでかからない。

またローリエやタイムといったハーブも、他の料理にも使う想定で常備しておいて良い。

プロセスとしては、具材を順番に鍋に入れて煮込みながらアクを取っていくというもので、思ったよりも断然簡単だった。ただ、深みのある味わいのブロスにするためには、最低3時間煮込むことに。弱火でじっくり煮込むことで鶏肉や野菜のエキスがじっくりと浸透していく。

ブロスはスープのベースとなるものなので、ブロス自体には複雑な味付けは不要。塩コショウで味を整えるのみ。

時間がかかる以外に取り立てて複雑なことはないが、シンプルなブロスを質の高いものにするため、島野シェフからさらに細かな注意点やコツを伺った。

このブロスを基にプロが実際に作った格別のスープは、同レストランで食べられるので、ぜひ足を運んでもらいたい。

鶏肉、栗、ショウガ、チーズとナッツを包んだ、島野シェフ特製のラビオリスープ。自宅でこのレベルは困難なので、レストランで楽しみたい

 

島野シェフ・インタビュー
焦らず、忍耐強さがおいしさの秘密?

ーーお店で作るブロスの特徴を教えてください。

本来は鶏ガラを使いますが、当店では鴨料理が人気なので、ブロスを作るときに鴨を丸ごと使っています。胸肉はロースト、もも肉はコンフィ、内蔵はレバーや炭火焼き、骨はブロスに使います。頂いた命、食材をむだなく使うことを心掛けています。

ーー家でブロスを作る際の材料と作り方は?

 手羽先など、安い部位を使用すると思います。お肉と野菜のバランスは仕上げのバランスを意識します。レストランでは野菜の甘さが邪魔だと感じる時もあるので、わざと野菜を少なめに。あくまで、うまみの相乗効果を狙うために野菜と肉の両方を入れます。家でブロスを作る場合は、お子さま向けに野菜を多めに入れ、甘味を出すのがおすすめです。

 まずはアクの多い手羽先約1キロを水から入れて沸騰させます。アクが出てきたら取ってください。それから、フランス料理でいうガルニチュールアロマティックとして、基本的には玉ねぎ、にんじん、セロリを、1対0・5対0・25の割合で入れます。あれば皮付きニンニクを半分に切ったもの(4分の1個)ローリエ、タイムも加え、再び沸騰させてまたアクが出てきたらアクを取る作業を繰り返します。

 沸騰したら氷水を入れ、アクが出やすいセ氏80度以下までに温度を下げて、もう一度アクを取り除きます。アクには不純物が含まれているので、ここでしっかり取ることで、身体にいいスープができると思います。このままごく弱火で3時間ほど、じっくり煮込んでください。

ーー調理のコツは?

 煮込んでいる際に絶対に沸かさないことです。煮詰めるとうまみが凝縮されておいしくなるイメージがあるかもしれませんが、ここの工程ではいかに水にうまみを抽出するかが大切です。

 うまみが1番出やすい温度はセ氏90度といわれています。泡がゆっくり、ポコポコ出る温度です。ボコボコと沸かしてしまうと不純物が水に乳化して、濁ったスープになってしまいますので要注意。ここで作る料理に濁りは必要ないので丁寧に作りましょう。

 水が減ってきたら少しずつ足して、煮詰めるのではなく、材料の味がスープに出るまで火を入れましょう。

 こすときもできるだけゆっくり、濁らないようにしてください。急ぎではない場合は、予熱が取れたら冷蔵庫に数時間置くと、脂が上がってきて固まるので、取り除いててください。

ーブロスはどのような食べ方がおすすめですか?

 レストランであれば、骨でとったブロスで他の部位のお肉を煮込み、その煮汁を詰めてソースに仕上げます。その各工程にスパイスを加えたり、地域の名産物の食材やお酒、季節を感じさせてくれるものなどを入れます。シェフの腕の見せ所です。家では塩を振ってストレートに飲むのも良いと思います。簡単に、あるもので作れて少し手を掛けたものであれば、水ギョーザをイメージして作るのがいいかもしれません。

ーーお店で出しているオススメのスープは?

 コンソメスープにオイスターを低温で煮込み、ポロネギのムースや季節の根菜を合わせたスープです。私がフランスで修行していた三ツ星レストラン「ギー・サヴォワ」の代表的な料理をオマージュして作ったもので、ニューヨーカーにも人気の一品です。

 

島野雄さん
フランス・パリの三ツ星レストラン「ギー サヴォア」で経験を積み渡米。2017年から「Mifune New York」のヘッドシェフを務めている。

MIFUNE New York
245 E. 44th St.
TEL: 212-986-2800
mifune-restaurant.com

 

調理の手順
押さえておくべきポイントはココ!

手羽先と水を鍋に入れる。水から煮出すのがポイント。

沸騰してきたら浮いてきたアクを取る。

カットしておいた野菜とローリエ、タイムを入れ、引き続き煮込む。

沸騰してきたところで一度氷水を入れ、セ氏80度以下まで下げ、もう一度アクを取る。このまま弱火で3時間じっくり煮込む。

冷めたスープを冷蔵庫に入れると脂身が浮いてくるので、その部分を取り除く。

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