巻頭特集

チーズ!チーズ!!チーズ!!!


ニューヨークで食べるなら、ニューヨーク産のチーズでしょ! チーズ専門家らが、生産にかける熱意とその奥深さを教えてくれた。


「ビーチャーズと学ぶ丁寧なチーズ作り

「アメリカではシャープで、若い味わいのチーズが好まれると思います。ソフトチーズや塩気のあるものが人気ですね」

そう語るのは、フラットアイアンにあるチーズ工場兼バーレストラン「ビーチャーズ」のエグゼクティブシェフ、クリストファーさん。

「数年ほど前までは、アメリカ産のチーズはヨーロッパ産に勝てないなんていわれていた。今ではヨーロッパ産にも引けを取らないほど上質なアメリカ産チーズが、たくさん作られるようになったんですよ」

 

「ビーチャーズ」の特製チーズコレクションと、各種ペアリング。ペッパー入りには、甘酸っぱいドライチェリーがぴったりだ

 

チーズはとても敏感

シアトル発の「ビーチャーズ」のニューヨーク支店は、2011年にオープン。特製のチェダーチーズはマイルドながら塩気のきいた、オールマイティーな逸品だ。

原材料となる乳は、アップステートのショーダック・ランディングにある「ダッチ・ホロー・ファーム」のジャージー牛のもの。脂肪分を豊富に含む品種だ。これに、バレーシェにある「A・オームス&サンズ・デイリーファーム」で育った、脂質の少ないホルスタイン牛の乳を混ぜ合わせる。

発酵させてから低温殺菌し、バクテリアを配合。成形したものを乾燥・熟成させればチーズの出来上がりだ。その生産量は、実に毎日5万4000ポンド(約24・5トン)!

「冬の牛乳は脂肪分が豊富なので、一層深い味わいですよ」と、プロダクションマネジャーのクリスティンさん。通年で一定の品質を保つのは大変だそうだ。

あなたは何と食べる?

丁寧に作られたチーズを一層おいしく食べるペアリングとは? クリストファーさんいわく、「一番いい組み合わせは、自分の鼻が知っている(“Your noes knows”)」。物は試しと、テースティングプレートを用意してくれた。同店のフラグシップ(オリジナルフレーバー)チーズには刻んだピクルス、スモーキーな薫製チーズにはキャラメルマスタード。そして味の濃いブルーチーズの相手は、なんとチョコレート。これがなかなかいける。

ワインのお供にするなら、同じくニューヨーク産の銘柄を選ぶのも一興だ。

ピュアフードの概念

同店には、「ピュアフード」という理念がある。

「私たちのチーズは、牛乳、塩といった自然の材料だけで作っています。おいしい食べ物に、読めもしない(化学調味料などの)材料が書かれた、長いリストは必要ない。子供たちにそういったことを教えたいんです」(クリスティンさん)

チーズ作りのスタッフですら農場に行ったことがないという、大都会ニューヨーク。「ビーチャーズ」はチーズを通して、現代人が忘れかけた自然本来の「おいしさ」を伝えている。\

カフェテーブルの背後で、チーズを作成中

 

(左から)ミア・ミグノットさん(ゼネラルマネジャー)と、クリストファー・ヘンセルさん(エグゼクティブシェフ)。チーズに情熱と愛を注ぐ、明るい2人だ

 

Beecher’s Handmade Cheese

900 Broadway (at E.20th St.)
TEL: 212-466-3340
beecherscheese.com
地上階はチーズ販売や軽食を提供するカフェ、地下はレストランになっている。

 


発酵物だけに、衛生面の扱いは慎重だ。「人体に有害なバクテリアをブロックするため、殺菌消毒は念入りに」(クリスティンさん)ということで、編集部も手袋にブーツと完全防備で中に。


チーズ製造ラインに潜入!

低温殺菌

乳をカ氏163度(セ氏約73度)で24秒間、急速加熱して有害なバクテリアを除去。その後、カ氏89度(セ氏約32度)まで冷ます

 

発酵・分離・チェダリング

食感を整えるバクテリア、その後に味わいを整えるバクテリアを加えて発酵させる。丁寧に混ぜていくと、カード(curd)と呼ばれる凝固物と、乳清(whey)に分離する。

 

水気を切ったカードがある程度固まったら、ブロックごとに切り分けて積み重ねることを繰り返し、さらに乳清を排出。このプロセスが、チェダーチーズ独特の「チェダリング」というもの。この後、さらに圧縮したチーズを、ニュージャージーにある同社倉庫で5カ月熟成させて完成!

 

クリスティン・バリーさん

ある程度は機械化されているけど、人の手を使って丁寧に作るプロセスが、おいしいチーズ作りにかかせません!

               

バックナンバー

Vol. 1342

完全保存版 フードトラック ベスト8

街角から漂う香ばしいスパイスの香りに思わず足が止まる春のニューヨーク。今、フードトラックは単なる「手軽なランチ」を超え一流シェフたちが腕を振るう「動く美食レストラン」へと進化を遂げている。

Vol. 1341

世界で最も多様な街 ジャクソンハイツへ

マンハッタン区から地下鉄で約20分。クイーンズ区ジャクソンハイツ地区は、数ブロック歩くだけで、文化も言語もめまぐるしく変化する、多様性の極地のようなエリアだ。かつてニューヨークタイムズは「世界で最も多様な地域の一つ」、BBCは「ニューヨークを体現する街」と評した。本特集ではこのエリアの魅力に迫る。

Vol. 1339

NYでK-POPカルチャーを思う存分に楽しむ方法

K-POPを代表するアーティスト・BTSが先月、兵役を経てグループとして約4年ぶりに活動を再開した。先月21日に韓国・ソウルで行われたコンサートは世界配信され1840万人の視聴者を集めた。先月15日にはNetflixアニメ『KPop Demon Hunters』がアカデミー賞長編アニメ映画賞などを受賞。近年盛り上がりを見せて久しいK-POPだったが、その勢いは止まるところなく、新たなフェーズへと突入している。その大きな波が押し寄せるのがニューヨークだ。