歴史的名盤レコードを掘る! 今週の1枚

第28回 今週のレコード:こけざる組曲 (三保敬とジャズ・イレブン)

今、米国の若い世代の間で1970年代後半から80年代にかけて日本で大流行したシティーポップを中心に熱狂的なファンが増えている。ブルックリン区に店を構え、レアものを揃えるフェイスレコードの間宮さんが選ぶ名曲を通して、その魅力を探ってみたい。


ジャズとサイケなサウンドが交差する日本の至宝と呼ぶべきレア名盤

戦後の日本ジャズシーンの発展に大きく寄与した文化人にしてピアニストの三保敬太郎の作品で、当時の世界を席巻していたサイケデリックなサウンドを取り入れた野心的な問題作。

このオリジナルは帯付きであれば、40万円を超えるレア盤である。昨今の和ジャズブームが起こるずっと前から、すでに10万円を超えていた。

この作品は組曲になっており、ひと時も気を抜けない。日本の伝統楽器と電子楽器を、時にサイケデリックに時にジャジーに演奏している。コーラスの歌姫・伊集佳代子に加えて、鉄板のメンバー佐藤允彦、村岡建、猪俣猛、村岡実、石川晶らが参加した。

この頃のジャズは稲垣次郎などによる、外国帰りの内田裕也から影響を受けた意欲作が目白押しの年代であり、ジミヘン達のウッドストックの爆発を日本で受け止め、発散するエナジーが感じ取れる日本の至宝だ。


フェイスレコード

2018年にウィリアムズバーグ地区にオープン(営業は木曜日から日曜日の午後1時〜7時)。シティーポップをはじめ、山下達郎、竹内まりや、坂本龍一、YMOなどに代表される日本の音楽を中心に、ヒップホップや日本盤のジャズロックなども豊富に取り扱う。在庫数は8000枚、新入荷は毎週金曜日。レコードの買い取りも受け付け中。1994年に東京で創業し、現在は日本全国に全6店舗展開中。


間宮祐一

横浜市出身。脱サラし、2015年からニューヨーク在住。18年に同店をオープン。自身も筋金入りのレコードコレクター。また、ヒップホップの楽曲制作も行い、2020年に客演に『Freddie Gibbs』(グラミー賞ノミネーター)を迎えたシングルレコードを発表。座右の銘は「NO VINYL NO LIFE」。

               

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