巻頭特集

NY市長選とZ世代ー ゾーラン・マムダニ旋風を読み解く

5問でわかる! 
ゾーラン・マムダニ入門

credit: lev radin / Shutterstock.com

Q1. どんな人?

A.

1991年ウガンダ生まれのミレニアル世代。インド系移民を両親に持つイスラム教徒。幼少期をウガンダ、南アフリカで過ごした後、7歳でニューヨーク・マンハッタン区のモーニングサイドハイツ地区に移住。2021年、クイーンズ区アストリア地区などを地盤にニューヨーク州議会下院議員に初当選した。

Q2. どんな政策?

A.  主な公約として家賃凍結、公営バスの無料化、幼児保育の無償化、最低賃金の時給を30ドルに引き上げ(30年まで)などの生活支援を掲げる。また社会住宅の新設、市運営食料品店の展開など「Zohranomics(ゾーラノミクス)」と呼ばれる都市の再分配モデルを提案。財源は大企業や富裕層への増税、市債発行を想定する。

Q3. どんな支持層?

A.  Z世代を中心とした若年層の支持が強く、さらには多様なバックグラウンドを持つ有権者の共感を得ている。SNSなど活用し、現場に足を運び、有権者視線で課題に向き合う姿勢が評価される。一方、一部の経済界や富裕層からは「企業活動を萎縮させる」「富裕層の課税強化は人材の流出を招く」といった否定的な反応がある。

Q4. マムダニ氏の豆知識。

A. 父は著名アフリカ政治学者のマフムード・マムダニ氏、母は『モンスーン・ウェディング』(ベネチア国際映画祭金獅子賞)で知られる映画監督・ミーラー・ナーイル氏という、教育・文化への関心が高い家庭で育った。 20代の頃には「Mr. Cardamom」などの名でラッパーとして活動し、移民としての経験などを歌った楽曲『Sidda Mukyaalo』をリリース。現在も演説やSNSで時折リズミカルな言い回しを披露する。

Q5. トランプ大統領との関係は?

A. マムダニ氏はドナルド・トランプ大統領を一貫して批判。一方でトランプ大統領はXやTruth SocialなどのSNSで「100%コミュニストの狂信者」「当選したら逮捕する」などと中傷した。マムダニ氏は「民主主義に対する威圧行為だ」と反論した。

・・・・・・・・・・・・・・・

SNSから読み解くマムダニ氏 

マムダニ氏は、TikTokやInstagram、X(旧Twitter)などを駆使し、市民との距離を縮める選挙戦を展開した。政策をビジュアル化し、生活に根差した課題を分かりやすく語る姿勢が、多くの有権者の心をつかんだと言える。

SNS上の反応はどうだっただろう。民主党左派のバーニー・サンダース氏やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏は公然とマムダニ氏を支持した。モデルのエミリー・ラタコウスキー氏やZ世代の活動家デビッド・ホッグ氏など、若年層の著名人らもSNSを通じて声援を送った。

一方でトランプ大統領はSNS上で「100%コミュニストの過激派」などと非難し、「市長になれば即刻逮捕だ」と断じた。賛否が交錯するSNS上の反応は、マムダニ氏が象徴する新たな政治潮流への関心の高さを物語る。

SNS上の著名人の反応

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(民主党下院議員/X)

「働く家庭が希望を持てる、誰にとっても手が届き歓迎される、安全なニューヨーク市を実現しようとするあなたの献身は、市中の多くの人々に感動を与えました。億万長者やロビイストたちは、あなたとわれわれの公的資金制度に対抗して何百万ドルも投じました。それでもあなたは勝利をつかんだのです」

エミリー・ラタコウスキー(モデル・俳優/Instagram)

「この選挙を決めるのは若い有権者です。ニューヨーカーの平均年齢は38歳。前回の市長選はわずか7000票差で決まりました。つまり、あなたの一票が本当に重要なんです」(選挙中に映像でマムダニ氏と登場)

ドナルド・トランプ(大統領/X・Truth Social)

「ゾーラン・マムダニは100%コミュニストの過激派。彼はアメリカとわれわれの価値を全て憎んでいる。彼がニューヨーク市長になったら即刻逮捕されるだろう」(ファクトチェック後、コミュニストという表現などは虚偽とされた)

               

バックナンバー

Vol. 1323

ホリデーを彩るワインの魔法  ─クリスマス・年末年始・大切な人と集う時、 “美味しい”を超える体験を、ワインと─

ホリデーシーズンは、家族や友人と集まる特別な季節。そんな時間をより豊かにしてくれるのが「ワイン」である。 今回は、ワインのスペシャリスト監修のもと、基礎知識からフードペアリング、ギフト選びまで幅広く紹介。初心者から上級者まで堪能できる、“ホリデーを彩るワイン”の楽しみ方をお届けする。

Vol. 1322

私たち、こんなことやってます!

睡眠時無呼吸症候群の治療に注力する、パーク・アベニュー・メディカル・センターのジェフェリー・アン院長と、保険対応も万全の総合ヘルスケアを提供するE.53ウェルネスの川村浩代さんに話を聞きました。

Vol. 1321

サンクスギビング特集 ニューヨーカーに愛される手作りパイ 〜ケーバーズの舞台裏〜

ウエストビレッジの一角に、どこかノスタルジックな空気をまとったパイ専門店「ケーバーズ」がある。ロングアイランド地区で生まれたこのブランドは、“農場から都会へ” をテーマに、素朴な焼き菓子をニューヨークの街へ届けている。季節のパイはもちろんビスケットサンドなど魅力は尽きない。今回は同店のミシェルさんに、人気の理由やホリデーシーズンの舞台裏について話を聞いた。

Vol. 1320

どんどん変わる、ますます面白い ゴワナス探訪

ニューヨークの最旬スポットとして  ニューファミリーやレストラン業界、不動産開発業者から熱い視線が注がれるブルックリン西部の中心地ゴワナス。今週はゴワナス入門編として、その楽しみ方を紹介する。