オペラってこんなに面白い!

〈第五回〉オペラってこんなに面白い!

オペラの舞台裏と日常を、現役歌手がリアルに届ける連載。


奥深いオペラの声の種類 

こんにちは。5月になり、春らしくなってきましたね。今月は「テノールとかソプラノとかよく聞くけど一体どうやって決まるの?」という質問に答えたいと思います。オペラの声の種類は声種、欧米のオペラ界では Fachと言います。声種は大きく分けると声の高い順から、ソプラノ、メゾソプラノ、コントラルト、テノール、バリトン、バスの6つになります。自分の声がこれのどこに当てはまるかという生まれつきの声の資質と、その他の色々な要因によって決まります。ただ、声種は「基本的には生まれつきの声の性質で決まるけれど、一生完全固定されるものではない」のです。

Hawaii Opera Theatreの蝶々夫人の舞台より

 

声帯と喉がつくる“自分だけの声”

まず生まれつきの声の資質というのは、声帯の厚さや長さ、そして喉の構造によって決まってきます。ギターやヴァイオリンを弾いたことがある人は分かると思いますが、長い弦のままだと音は低いですが、指を抑えて短くすると音が高くなりますよね。それと同じように声帯の長さが長い人は低音が出しやすく、短い人は高音が出しやすい傾向があります。厚さも同じように、音色に影響してきます。そして喉の構造も大きな要因です。一つ一つの音楽ホールによって響きが違うように、喉の内側の構造の少しの違いによって音の響き方が変わってきます。だから声というものは一人一人違うとてもユニークなものなのです。

声種を左右するテクニックとメンタル

その他の声種を決める要因は、テクニック的な部分とメンタル的な部分。高音あるいは低音をうまく使えるテクニックを持っているか、また、単純にどんな声を出して歌うのが好きかという自分の好み、これらも大きく影響してきます。オペラとなるとソプラノやテノールは高い声でずっと歌わないといけないことが多いので、精神的にも高音を歌うのが好きであり、それが自分が心地よく自信を持って歌える音域かというのも重要なのです。僕の場合だと、昔から高音を出すのが好きで、声変わりをしても小学校ではソプラノに無理やり入れてもらったり、カラオケに行ったら高音を挑戦するというのがとても好きでした。高音が綺麗だねと言われることも多くて、そこに力を入れて練習してきた部分はあると思います。

そしてさらに年齢によっても声というものは変わってきます。有名な例ですと、三大テノールと呼ばれたプラシド・ドミンゴは60代の時からバリトンのレパートリーを歌い出して、70代以降はバリトン中心の活動にシフトしていきました。なので、声種は基本的には生まれつきの音色で変わってくるけれども、後天的な要因でも変わってくるということですね。

アイデンティティーとしての声種

またオペラ界ではこの六つの声種の中でもさらに細かく分類されています。例えばテノールの中でも大きく4つに分類され、声質が軽い順に、レッジェーロ、リリック、スピント、ドラマティックです。レッジェーロのレパートリーは軽く繊細な音質を求められ、ドラマティックは重量のある劇的な歌唱を求められます。声種によってレパートリーも変わってくるので、テノールはテノールでもレッジェーロとドラマチックでは歌うオペラが全く違うのです。声種というのはオペラ歌手にとってアイデンティティーでもあり、仕事をする中でもとても重要なカテゴリーなのです。

少しマニアックな回になってしまいましたが、ご理解いただけたでしょうか。日本だとカラオケで原曲キーで歌うのがかっこいいなんていう風潮もあったりしますが、読者の皆様も生まれ持った声を大事にして、自分の美しい声の音域を見つけて歌ってみてください。

次回はオペラ歌手の1日ってどんな感じなんだろうという話をしていきたいと思います。では素敵な5月をお過ごしください。

<公演情報>


今月はミシガン州のOpera Grand Rapidsにて【蝶々夫人】の公演に出演します。今回の演出は第二次世界大戦の直後の長崎を舞台に描かれ、普通の蝶々夫人とは違う戦後の日米の関係の様子、当時の文化的そして政治的な摩擦も描かれているので、日本人として大切にゴロー役を演じられるようにお稽古をしています。もし機会があればぜひいらしてください。

 

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駒形貴之/Taka Komagata

テノール歌手。東京都出身。米ロンジー音楽院大学院修了。ボストン・グローブ紙、LAタイムズ紙に歌声を称賛される。ニューヨークを拠点に北米各地でオペラ公演に出演。クラシック音楽を広める団体、「バルコニーシリーズ」を創設し活動を広げている。

Instagram: @takakomagata

HP: takakomagata.com

               

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