ジャピオン編&#
観客には決して見えないブロードウェイのリアル。現役ブロードウェイベーシストが、仕事の流れ、現場の空気、そして“プロとして生きる”ということを、自身の視点で綴る連載。
レジェンドダンサー ケイティー・ウェバーさんにインタビュー
第四回目は、現在一緒にミュージカル『Chess』に出演しているブロードウェイダンサー、ケイティー・ウェバーさんにインタビュー。
以前、友人が冗談交じりに「ブロードウェイシアターからケイティーは取り除くことはできない」と言っていましたが、笑い話ではなく本当にその通り。『Chess』は彼女にとって11作目のブロードウェイ作品で、舞台が変わっても常に存在感を放つ、不滅の存在です。
さらに、ブロードウェイの伝統であるレガシー・ローブの受賞回数は6回。史上最多を誇り、アンサンブルとして舞台を支え続けた彼女のキャリアは、静かに、しかし確実に、将来語り継がれるレジェンドの領域に足を踏み入れています。
――今回でブロードウェイ出演は11作目になりますが、長く舞台に立ち続けられている理由は何だと思いますか?
クリエイターのビジョンをしっかり理解し、それを自分の身体を通して表現することだと思います。振付師から与えられたものを、自分らしく昇華しながらも、作品本来のコンセプトは決して崩さない。そのバランスを取ることが、私の強みです。また、舞台で求められるものを常に出せるよう、心身のコンディションを整えることを生活の一部として大切にしてきました。
――アーティストとして最も成長できたと感じる作品は?
4作目のブロードウェイ作品『ジャージー・ボーイズ』です。それまで私は主にダンサーとして起用されていましたが、この作品では歌と演技が中心で、複数の役やソロで歌う場面もありました。自分の殻を破り、表現の幅を大きく広げるきっかけとなり、初めて「ブロードウェイ女優として認められた」と感じた作品です。
――レガシー・ローブを受賞したときの思いを教えてください。
レガシー・ローブは、私のキャリアの中でも特別な存在です。新作の初日に、最も多くブロードウェイのアンサンブル出演歴を持つ人に贈られ、ローブを着て劇場を回り、公演の成功を祈ります。私はこれまでに6回レガシー・ローブを受賞しており、これは史上最多です。私にとって、これ以上ない名誉です。アンサンブルは時に見過ごされがちですが、この伝統は、私たちがブロードウェイを毎晩支えている大切な存在だと再認識させてくれます。このローブを通して、「ここに居場所がある」「ブロードウェイでやってきたんだ」という実感を得ることができました。
――母でありパフォーマーでもある生活は、どのようにバランスを取っていますか?
正直に言うと、完璧なバランスはありません。夜遅くまでの公演や、祝日や特別な日に働くことも多いです。だからこそ、今いる場所に集中することを大切にしています。家では娘との時間を、舞台では全力のパフォーマンスを。そして、すべてを完璧にできなくても自分を責めないようにしています。
――開演前のルーティンは?
通勤中の電車で静かに過ごし、気持ちを舞台に切り替えます。劇場ではアンサンブル仲間と音楽をかけながら支度をする時間が好きで、舞台に立つ前の大切なひとときです。
――公演を新鮮に保つ秘訣は?
観客の皆さんは毎回初めて観ているということを忘れないことです。それが自然と集中力を高めてくれます。
――著書について教えてください。
2020年のブロードウェイ休止期間に、植物性レシピの料理本をセルフパブリッシュしました。プラントベースの食生活が私の人生を大きく変えてくれたので、忙しい人でも簡単に作れる健康的な食事を伝えたいと思ったのがきっかけです。
――最後に、ブロードウェイを目指す人へ。
自分自身であることを大切にしてください。個性を恐れず、自分をアートに持ち込むこと。そして、訓練を怠らず、努力を続け、時間を守り、常に優しさを忘れないこと。それが何より大切だと思います。
IG: Katie Webber

Yuka Tadano / Bass Player
茨城県出身。2004年に渡米し、テキサス州のUniversity of North Texasで学部・大学院あわせて6年間ジャズを専攻。2010年よりニューヨークを拠点にプロのベーシストとして活動を開始。ジャズ、キャバレー、オフ・ブロードウェイ、全米ツアーなど幅広い現場を経て、現在はブロードウェイ・ミュージカルのオーケストラを中心に活躍している。演奏活動に加え、次世代の育成にも力を注いでいる。
IG: @yukatadano




