毎年の長い夏&#
オペラの舞台裏と日常を、現役歌手がリアルに届ける連載。
オペラって、そもそも何だろう?
一回目のコラムを読んでいただき、ありがとうございました。たくさん反響をいただけて、嬉しかったです。二回目の今回は、まずオペラってなんだろう? というお話をしていきたいと思います。
みなさん、オペラといったらまず頭に何が浮かぶでしょうか。有名なパヴァロッティやマリアカラスなど、歴史的に偉大なオペラ歌手を思い浮かべる人も多いと思います。また大きい声で外国語の歌を歌っている歌手、というイメージも大きいのではないでしょうか。なんだかつまらなそう、眠くなりそうと思われている方も多いと思います(笑)。しかし僕は、オペラはこれからの現代社会において、とても大切な芸術になってくると思っています。「大袈裟な! 本当かよ!」と思われたそこのあなた、もう少し読んでいただけるとありがたいです。
まず、オペラというのは歌劇であり、歌と音楽で物語を伝える、イタリアで生まれた舞台芸術です。劇場、舞台美術、衣装、物語、オーケストラ、そして歌手、全てが揃ってオペラが成立します。セリフも感情も全て歌で表現します。ミュージカルは歌とセリフがありますが、オペラは歌だけで物語が進んでいきます。物語がなければオペラではないのです。オペラが劇ということを知らない人も多く、演技の勉強や役作りをしていると、「え、オペラにお芝居は必要なの?」と聞かれることも多々あります。普段、聞くオペラの歌(アリア)というのは、劇の中のシーンの一つなのです。オペラ歌手は歌う役者。お稽古の中で、演出家の先生やキャストと自分の役を形成していく作業はとても重要なプロセスです。音楽大学のオペラのプログラムでは、歌はもちろん、アクティングメソッドを学ぶ演劇の授業もあります。
2023年ハワイオペラ劇場での公演『愛の妙薬』ネモリーノ役
オペラって昔に作られたものだから古い話だし、つまらないでしょ? と、思う方も多いと思います。あまり知られていないのですが、結構過激なんですよ。裏切り、不倫、復讐、嫉妬、殺し…全部出てきます(笑)。昼ドラ、大河ドラマと少し似たようなところがあると思います。怒り、悲しみ、絶望など、ネガティブな感情も甘美な音楽を通して表現することで、美しいものになります。失恋した時に、悲しい失恋の歌を聞くとなんだか心が軽くなる事があると思います。オペラは人間のドラマチックな感情を呼び起こし、美しい音楽で癒してくれる、そんな力があると思います。前回お話した通り、僕自身も初めて観たオペラで、内容も分からず感情が湧き上がり、嗚咽が止まらないぐらいに泣いて感動した一人なのです。
デジタルでは届かない感動
オペラと他の舞台との大きな違いは、マイクを使わないところです。歌手もオーケストラも生音で演奏します。近年ではオートチューンや口パク、AI補正などが当たり前になってきた音楽界。オペラはデジタルの機械を通すことをしないので、全てが生音で、誤魔化しが効かないのです。生の本物の歌声を、体で直に音の振動として感じる事ができる、それがオペラなのです。
マイクがない時代に生まれたオペラ。だからこそ大きな劇場でも生の声で響き、観客に届く独特な発声のテクニックが必要になります。オペラの発声のトレーニングには、最低でも10年ほどかかると言われています。元々、録音や録画で楽しむものではないので、デジタルではキャッチできない、生でしか感じられない素晴らしさがあるのです。デジタルで加工されたものが多いこの現代、ぜひ劇場に足を運んでオペラというものを直接肌で感じていただきたいです。きっと皆さまも何か新しく感じることがあると思います。
次回は「オペラってスポーツ?」というトピックでお話をさせていただきたいと思います。ではまた来月!
<公演情報>
『The Big Swim』

2月20日(金)〜22日(日)
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Taka Komagata
テノール歌手。東京都出身。米ロンジー音楽院大学院修了。ボストン・グローブ紙、LAタイムズ紙に歌声を称賛される。ニューヨークを拠点に北米各地でオペラ公演に出演。クラシック音楽を広める団体、「バルコニーシリーズ」を創設し活動を広げている。
Instagram: @takakomagata
HP: takakomagata.com



