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観客には決して見えないブロードウェイのリアル。現役ブロードウェイベーシストが、仕事の流れ、現場の空気、そして“プロとして生きる”ということを、自身の視点で綴る連載。
プロ・ベーシストとして
私は茨城県出身で、2004年に渡米しました。テキサス州にあるUniversity of North Texasにて大学および大学院で6年間ジャズを学び、2010年にニューヨークへ拠点を移しました。それ以来15年間、この街を拠点にプロのベーシストとして活動を続けています。
現在の主な活動は、ミュージカルのオーケストラでの演奏です。また演奏活動に加えて、Maestraという団体を通じたメンタープログラムにも力を注いでいます。ブロードウェイを夢見る若い世代に、ニューヨークで実際に働く中で学んできたこと、普段は表に出ることの少ない舞台裏の現実、そしてキャリアを継続していく上で大切にしてきた考え方などを伝えています。
目標はブロードウェイではなかった仕事が導いたキャリア
振り返ってみると、私は当初からブロードウェイで演奏することを目標にしていたわけではありません。ただ純粋に、ベースを弾くことが好きで、目の前にある仕事に一つひとつ誠実に向き合ってきただけでした。ジャズの演奏を続ける中でキャバレーの仕事につながり、そこからオフ・ブロードウェイの現場へ、さらにツアーの仕事へと広がっていきました。そして気がつけば、ブロードウェイのショウに継続的に呼んでいただけるようになっていました。
地道さがチャンスに繋がる街、ニューヨーク
努力した分だけ必ず結果が返ってくるとは限りません。しかし、謙虚に自分のできることを地道に続けていれば、どこかで必ず誰かが見てくれている。ニューヨークが「チャンスの街」と呼ばれる理由は、まさにそこにあるのではないでしょうか。多様な価値観が共存し、「mind your own business」が自然に成り立つこの街だからこそ、自分の強みを理解し、自身の信念を持つことが何より重要になるのだと感じています。
『CHESS』の舞台で担う演奏と見えない役割
現在私は、ブロードウェイミュージカル『CHESS』に参加しています。オーケストラは18人編成で、ドラムとパーカッションを除く16人のミュージシャンがステージ上に配置される、コンサートスタイルのショウです。1970年代を代表するスーパーグループABBAのメンバー二人によって作曲された作品であり、非常に音楽性の高いミュージカルです。
上演中のミュージシャンの視界
私たちミュージシャンには、Aviomという個人用ミキサーと、指揮者の映像が映るスクリーンが設置されています。自分の音量やバランスを微調整しながら演奏できるこの環境のおかげで、毎回安定したパフォーマンスを届けることができます。観客の目には見えない細やかな準備と工夫が、ブロードウェイの舞台を支えているのです。
さらに私は、ベースを演奏するだけでなく、In House Contractor(IHC)という役割も担っています。IHCは、オーケストラの演奏以外の運営全般を管理するスーパーバイザーのような存在です。ミュージシャンが安心して演奏に集中できるよう、他部門との連絡や給与管理など、舞台を円滑に進めるためのさまざまな仕事を担当しています。裏方の仕事も、舞台の高いクオリティを支える大切な役割です。
近道はなくても、前には進める
15年間ニューヨークでベースを弾き続けてきて、音楽の道に近道はないという思いは年々強くなっています。しかし、目の前の仕事を大切にし、自分を信じて歩み続けていれば、思いもよらない場所に辿り着くこともあります。
次回は、ミュージシャンがブロードウェイで演奏するにはどうしたら良いのか、また舞台裏のリアルな様子についてお話ししていきたいと思います。

Yuka Tadano / Bass Player
茨城県出身。2004年に渡米し、テキサス州のUniversity of North Texasで学部・大学院あわせて6年間ジャズを専攻。2010年よりニューヨークを拠点にプロのベーシストとして活動を開始。ジャズ、キャバレー、オフ・ブロードウェイ、全米ツアーなど幅広い現場を経て、現在はブロードウェイ・ミュージカルのオーケストラを中心に活躍している。演奏活動に加え、次世代の育成にも力を注いでいる。
IG: @yukatadano



