渡邉先生の教育広場

<第8章>「公立なのに格差?」 NYCの学校選びで親が知るべき現実

多様な人種や文化の違いなど、日本人の親御さんにとって、ニューヨークで子育てすることは、時に孤独で難しいこともある。そんな方々のお力になりたい、子育ては地域みんなでするもの、渡邉先生のそんな思いを届けます。


先月は新学期が始まったお子さんのメンタル面でのサポートや日常生活を整えることの大切さについてお話ししましたが、もう次の学校選びを視野に入れる時期が迫っています。

日本の常識が通じない? NYCの学校事情

日本の常識とは全く違い、NYCでは公立校の質が学区やその学校によって驚くほど異なります。充実したESL、STEM、アートプログラムを持ち私立校に匹敵する学校がある一方で、基礎的なリソースすら不足している学校も存在します。学校選び・学区選びは、子供の教育を考える上で最重要課題です。

なぜこれほど差が生まれるのか

高所得層が多く住む地域では、保護者からの寄付やPTA活動で学校が潤沢な資金を集められます。その資金で追加教員を雇用し、設備投資や特別なカリキュラムを購入することで教育の「厚み」が増します。対照的に財源が限られる学区ではプログラムや特に人員面で差が出やすく、これが学校間格差を生む大きな要因です。

まず押さえるべき申請スケジュール

先日、Office of Student Enrollmentが今学年の主要な申請スケジュールを公表しました。ハイスクール出願は10月7日、ミドルスクールは10月15日、キンダー(2021年生まれ対象)は12月9日、3-K/Pre-K出願は1月14日、Gifted & Talented(Grades 1–4)出願は4月21日開始です。該当期間の案内メール登録で更新を見逃しません。問い合わせ先(ESEnrollment@schools.nyc.gov、電話718-935-2009)も公開されていますので、困ったときは公式窓口へ。

今日から始める具体的なステップ

まずMySchools.nycに登録しご自身の住所を入力し、学区内や近隣の学校を調べましょう。3Kから高校まで調べられます。その後、GreatSchools.orgやInsideSchools.orgなどの第三者評判サイトで学校の特徴や保護者の声を比較できます。 Private Schoolで3-K/UPK(Pre-K)を提供するプログラムは、DOE(市教育局)と契約し「NYC Early Education Centers(NYCEEC)」やコミュニティーベースのプログラムとして運営されています。公的情報と先程のサイトで保護者の声を組み合わせて調べると実態が見えます。その後興味のある学校のウェブサイトでの詳細確認が情報収集の第一歩です。ご自身で調査を進めるにつれ、どの地域が優良学区かがみて取れるかと思います。

次回予告:志望校リストの「戦略的な組み立て方」

情報を集めた後、「結局どの学校を、どの順番で志望すればいいの?」と悩みは続くもの。次回は学校の種類(zoned/choice/G&T/charterなど)の違いを整理し、志望順位をどう組み立てるかの考え方を具体的にご紹介します。お子さんにベストな選択をするための羅針盤を一緒に作っていきましょう。


渡邉敦子
Friends Academy of JCS
エデュケーショナルディレクター

米国にて教育学修士課程を取得。ニューヨーク州普通学級、特別支援学級教員免許、および国際モンテッソーリ協会(AMI)の資格を所持。ニューヨーク現地のプリスクールを始め、米国公立小学校や日本語学校での勤務経験が豊富。日本語での教育相談や発達に関する親御さんの悩み解決のお手伝いに尽力している。

Instagram: @kaigai_kosodate_ari

               

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