巻頭特集

【今週の巻頭特集】知りたい・見たい・感じたい『幽霊都市 ニューヨーク』

ハロウィーンまで残すところ3週間。この時期なぜか気になるのが幽霊や怪奇スポットだ。アメリカ有数の「幽霊都市」ニューヨークにも背筋がゾッとする逸話が数え切れないほど残っている。こよいはその一部をご紹介。


そろいもそろってみんなのんべえ幽霊が出るレストラン

 

幽霊は放蕩詩人
ホワイト・ホース・タバーン

夜は観光客で混雑するので、昼下がりに行くのがおすすめ

1880年代に開業。1950年代から60年代にかけてはビートニク作家やミュージシャン、社会活動家のたまり場だった。この店の幽霊は放蕩の天才詩人とうたわれたディラン・トマス(1914〜1953年)。ぜんそく持ちで重度の肺病だったトマスは、これまた伝説のホテルとして知られるホテルチェルシーからこの店に足しげく通っていたという。1953年11月3日、店で泥酔した後、ホテルの部屋に戻りさらにウイスキーを18杯も飲んだ挙げ句に体調を悪化させ6日後に死亡。幽霊となって店に舞い戻り、お気に入りだった角のテーブルに座っている姿が目撃されている。ウイスキーのショットグラスをほんの少しの間でも放置すると、振り返った時には消えているという言い伝えも。

当代一の人気作家だったトマスは、破滅的な人生を送った

White Horse Tavern

567 Hudson St.
whitehorsetavern1880.com

 

幽霊は女好きの船乗り
イヤーイン

船乗りミッキーも店での度重なる深酒がたたって死んだとか

開業は1817年、市内で最も古い酒場の一つ。ランドマーク指定のジェームス・ブラウン・ハウス内にある。1階は酒場兼レストランで、禁酒法時代はスピークイージー(潜り酒場)として大繁盛した。2階は売春宿、密輸業者のアジト、木賃宿などに使われ、18世紀頃までは港湾労働者相手の怪しい酒場だった。この店では何人かの幽霊が目撃されているが、一番有名なのは、19〜20世紀初めごろ常連だった「ミッキー」という名の船乗り。言い伝えではこの酔いどれ、店に入り浸ってばかりで、船に乗ることはほとんどなかったという。話に夢中になっている間にビールが減っていたり、ウエートレスをびっくりさせたり、2階に泊まった女性客のベッドに忍び込んだりと逸話は事欠かない。

The Ear Inn
326 Spring St./theearinn.com

 

幽霊は南軍兵士と銀幕のスター
ランドマークタバーン

幽霊はさておき、ランドマーク的な店は一見の価値あり

ヘルズキッチン(悪魔の台所)にあるアイリッシュパブ。かつてこの辺りはアイリッシュギャングの根城で、1868年の開業以来、血生臭い抗争の歴史をつぶさに目にしてきた生き証人的存在。一枚板のマホガニー製バーカウンター、ブリキの天井とハードウッドとタイルのモザイク模様の床が、なんとも言えない魅力を醸し出している。禁酒法時代はスピークイージーだったこの店も複数の幽霊が出没するとの言い伝えが。けんかで刺され、血まみれになりながら2階へ這い上がり、浴槽で息絶えた南軍兵士。アイリッシュギャングと実際に交流があった映画スター、ジョージ・ラフト(1901〜1980年)の亡霊。さらに、結核で亡くなったアイルランド移民の少女の幽霊が3階をさまよう姿が目撃されている。

ジョージ・ラフト(1933年撮影)

The Landmark Tavern

626 11th Ave./thelandmarktavern.com

               

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