ニューヨークで活動する 注目の若手アーティストを紹介

ニューヨークで活動する 注目の若手アーティストを紹介 – ダンサー・振付師 小野由利加さん

ニューヨークを拠点にダンサー、振付師として活躍する小野由利加さん。先日行われた自主公演では、米国の映画史に残る名作をオマージュしたパフォーマンスを披露、スタンディングオーべーションで幕を閉じた。そんな彼女のダンスへ対する想いを聞いた。


観光バスの中から鑑賞する『The Ride』の街頭パフォーマーや、『Batsu』というコメディーショーのオープニングアクト、そして仕事の合間を縫ってクラスやオーディションを受ける多忙な日々を送っている小野由利加さん。得意なジャンルは、ジャズダンスを軸としたシアターダンスやヒップホップ、1970年代のディスコ全盛期に誕生したワッキングや、フラダンスと多岐にわたる。「実は幅広いジャンルでダンスの経験を培うことができたのは、大学時代のダンスサークルのおかげなんです。本当にさまざまなジャンルの動き、表現方法を学ぶことができたあの環境には、本当に恵まれていたと思います」。それでも、仕事やオーディションでは、新しいジャンルのダンスを求められることもあり、幅広く対応できるように日々レッスンに励み、技術を磨いているという。

 

パフォーマーとして参加する『The Ride』の前で

ダンス撮影での一コマ

 

本格的にプロを志すきっかけは両親からの一言

母親の影響で幼少期から米国映画を見ることが多かったという小野さんは、米国文化やエンターテインメントの世界への関心が自然と高まっていった。特にダンスやミュージカルに興味をもち、学生時代にはダンスの練習に没頭するようになったそう。「大学生の頃、就活前のタイミングで、今までじっくり自分の将来について考えられる時間がなかったのですが、このまま就職することに戸惑いを感じて、どうせならダンスをやりきって就職しようと思いました。休学について両親に相談したところ『どうせだったら、ダンスの本場、ニューヨークで思いっきりやってみたら?』と言われ背中を押してもらいました」。そして、その時に参加したダンスプログラムがきっかけとなり、プロのダンサーとしてニューヨークで挑戦することを決心した。

「オーディションを受けて返事をただ待っているだけでは、受け身状態なので、自分からアクションを起こしていかないといけません。今回、ご縁があり、異なるジャンルで活躍する若い日本人アーティストを応援するプロジェクト『TimeCapsule Project』に参加させてもらえることになりました。そこで初めて、自分が脚本から振付、衣装など全てを手がけるダンス公演『Step Into…』を企画させていただきました」。米国映画史に残る名作を集め、その世界観をダンスで表現することを思いつき、全てを手がけた小野さんは、同プロジェクトでは大トリとして出演し大成功を収めたそうだ。

 

自主自演『Step into…』で披露されたオープニングダン

 

ダンサー、振付師として、そして演出家としての才能を開花

自主公演で披露されたパフォーマンスでは、映画の歴史に擬え、1920年代のサイレント映画の先駆け、チャールズ・チャップリンの作品や、『トップハット』、『風と共に去りぬ』、『紳士は金髪がお好き』、『メリーポピンズ』といった歴史的名作をはじめ、SF映画、近年のヒット作品などを盛り込み、フィナーレは小野さんの大好きな『オーバー・ザ・レインボー』の曲で幕を閉じた。「映画だけでなく、歴史も好きで、エンターテインメントってその当時の時代背景を垣間見れると思うんです。そんなところも表現してみたかったんです」と、研究熱心で歴女としての意外な一面を見せる。「リハーサルの工程で、ダンサーたちと一体感を生み出すため、互いの気持ちや、熱量のレベルを合わせることの大変さを学びました。不安もありましたが、本当に素晴らしい経験になり、今はメンバーやスタッフに感謝でいっぱいです」と語る小野さんは、演出家、そしてプロデューサーとしての才能を見せつけた瞬間だった。

 

今後の展望

どんな時も初心を忘れないことを心がけているという小野さんは、現在、ブロードウェーでの活躍を目指しているそうだ。ミュージカルをはじめ、エンターテインメントの世界において「アジア人、かっこいいって思わせたいです」と気迫を込めて話す。また、ショービジネスにも興味があるそうで、いつか日本文化を融合させたヒップな夜遊びスポットを作るのも夢なんだそう。パフォーマーとしてだけでなく、プロデューサーとしての先見性をも感じさせる彼女から今後も目が離せない。


小野由利加 Yurika Ono

東京都出身。日本女子大学卒業。ダンサー、振付師。メイシーズ・サンクスギヴィング・デイ・パレードオープニングナンバーにダンサーとして出演。2019年にはWorld of Dance世界大会にチームで出場し、Crowd Favorite賞(日本で言うオーディエンス賞)を受賞。現在は『TheRide』の街頭パフォーマンスや『Batsu』というコメディーショーのオープニングアクトなどを務める。

               

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