あちこちに花も咲き乱れ、4月に入りニューヨークにも春が到来した。本号ではこれからの季節、屋外でも楽しめるピックルボールを紹介する。テニスよりも狭いスペースで出来るピックルボールはここ数年、ニューヨークでも人気だ。
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困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。
角の生えた黒の覆面姿に、「牛」の字がひときわ目を引くキャラクター、その名もWagyuman。そんなWagyumanに扮し、A5ランク和牛やトロを全米48州の一般家庭に届けるオンラインストアを運営するのが、ダイ守屋さんだ。
起業家として和牛の魅力を全米に伝えることをミッションに掲げながら、男気溢れる熱い素顔をマスクの下に隠しつつ、自ら広告塔としても活躍している。
日本人が誇るべき産業で戦う
もともとは日本で鉄鋼資源の国際貿易に従事していたという守屋さん。出張で50カ国も飛び回る商社マンだったが、入社当初から宣言していたニューヨーク勤務を実現するため、当時の部署に自らニューヨーク支局をつくり、念願の当地での駐在生活を始めたのが2007年だった。
その後同業の米系企業を経て、5年後に起業すると同時に、未知の食品業界に足を踏み入れることとなった。食品業界に目を付けたのは、もともと興味があったことに加え、「これだけテクノロジーが発達している中で、食品産業は物流一つ取ってもまだまだアナログ。深掘りすればきっとビジネスチャンスがあるはず」と感じたからだそう。
今でこそ和牛の認知が広まってきたが、当時はトップシェフでさえ和牛を理解しているアメリカ人は少なかったといい、当初はニューヨークのシェフから売り込んでいった守屋さん。だが、商社マン時代に養ってきたビジネス感覚から、「全米をマーケットにするなら、まずは“川下”となる一般消費者からアプローチしていかなければ」とボトムアップ方式に切り替え、今のBtoC業態が生まれた。
競合他社が「宮崎牛」「近江牛」といったブランド牛を売っている中で、同サイトはあえて銘柄を表示していないが(配達される商品には産地情報が添えられる)、そこには、「日本全国の農家の人たちを応援したい」という守屋さんの日本人としての思いがあるそう。
「どの農家さんも誇りを持って仕事しているプロですから、海外市場に出すならブランド関係なくフェアでいいと思うんです。ただもちろん品質が良いものであることを条件に厳しく選定しますが」と語るその表情は真剣だ。
日本人の誇るべき産業だからこそ、ただ自社の利益を求めるのではなく、供給者に寄り添うビジネスのやり方をするのが守屋さんのポリシーだ。
大人もヒーローを求めている
華々しいキャリアを持ちながらも、奇抜な覆面キャラクターに扮する理由を聞くと、「これだけ物が溢れている世の中、何かを売るなら売り子が前に出て覚えてもらう方が早い。それに、『マーベル』映画を見ればわかるように、大人だってどこかでヒーローを求めていますから」と守屋さん。
そんな新たなヒーロー像を目指しつつ、最近は自ら肉を切ることも始めたという。「頭で考えるより、まずは手や足を動かすタイプです」と笑みを見せる守屋さんは、アメリカ在住歴15年になるが、アメリカにいればいるほど日本人としての心が強くなっているという。「Wagyumanが有名になるかより、業界が盛り上がってくれればそれでいいです」と目を細める彼が、日米の和牛業界に欠かせない立役者になる日はきっとそう遠くないだろう。
ダイ守屋さん
「WAGYUMAN Inc.」CEO
来米年: 2007年
出身地: 京都府
好きなもの・こと: 料理
特技: 肉磨き
大手総合商社で鉄鋼資源の国際貿易事業に携わり、2007年に同社のアメリカ法人本社のニューヨーク支局に赴任。
13年、同業他社の米系会社に転職後、19年に全米の家庭に和牛、トロなどの高級食材を配達するEC事業「WAGYUMAN Inc.」を設立。
22年には全米向けの卸業もオンラインで開始。
wagyuman.com
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