あちこちに花も咲き乱れ、4月に入りニューヨークにも春が到来した。本号ではこれからの季節、屋外でも楽しめるピックルボールを紹介する。テニスよりも狭いスペースで出来るピックルボールはここ数年、ニューヨークでも人気だ。
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困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。
※これまでのビジネスインタビューのアーカイブは、nyjapion.comで読めます。
「将来の夢を、舞台俳優か保育士かで悩んだ」という森永明日夏さん。俳優の道を選び、日本で「一番になること」に情熱を燃やしてきた。ところがニューヨークで、子供が好きという理由で幼児教育のパートタイムを始めたことがきっかけで、ティーチングアーティストという職業に魅せられた。子供の教学活動をサポートするティーチングアーティストが掲げる標語は、「演劇の技術は、人生を生きる技術」。
「演劇教育では、子供が自分自身を発見する瞬間に立ち会えるんです。その瞬間が、何物にも変え難い」
子供の自己形成を支える
日本ではあまり知られていないが、米国では普及しつつある、演劇教育というアイデア。ゲームや対話といったアクティビティーを通じて、子供の共感性や、己と他者の肯定力を豊かにする。森永さんは現在、ニューヨークを拠点に活動する「ピンチョン+カンパニー」でレジデンス・ティーチングアーティストを務めている。
「特に日本では、これまでの教育で『正しい方に行くこと』に重きを置いていました。自由な答えを出したり、自分のことを話したりすることが苦手な子供も多いと思います」と森永さん。「でも、自分を知ってもらうことは、子供にとってうれしいですよね」
誰かの苦悩を知る時、専門のトレーニングだけでなく、自身に似たような経験があれば寄り添いやすくなる。演劇について悩み、挫折や苦しみも味わっている森永さんのキャリアが、今のティーチングアーティストとしての仕事に生きているのだという。
ティーチングアーティストとして歩み始めた折に、この教育を取り入れようと日本からやって来た視察団と出会った。そこから思いがけない人の縁がどんどんつながり、気が付けば、日本に演劇教育を普及させる活動の中枢に。「運命ですよね。でも、人生にはそんな時がありませんか?」と、森永さんはほほ笑む。
ようやく変わる風向き
クイーンズ区という多様性のある地域でティーチングアーティストとして活動している森永さんは、さまざまなバックグラウンドを背負った子供が一様に授業に取り組む様子を見て、「日本の若者にこそ、多様性を学び、自分自身の発見につながる演劇教育は必要だ」と悟った。
ただし日本での普及には、その町の教育委員会や自治体との連携が不可欠だ。森永さんは、日本の学校で演劇教育が必修科目になることを目指しているが、そのためには政府と連携し、ティーチングアーティストの育成に力を入れなければならない。
同時に、日本社会の「横のつながり」の弱さが、業界や立場の垣根を越える演劇教育の普及に、障壁として立ちはだかる。ただ、これはコロナ禍でオンラインワークショップに切り替えたことで、苦しくも改善の兆しが見えたという。さらに、日本では多様性が声高に叫ばれるようになってきたのも追い風になっている。
「日本のエンタメ業界の関係者と、『(演劇教育の普及のチャンスは)今じゃない?』と話しています」。そう笑う森永さんの目は、子供たちの明るい未来を目指し輝いている。
森永明日夏さん
俳優、ティーチングアーティスト
来米年: 2005年
出身地: 広島県
好きなもの・こと: 料理
特技: 地図なしでどこでも歩ける
桐朋学園芸術部短期大学演劇科卒業。
日本で俳優座などの活動を経て、2005年に来米。
歌舞伎や演出家、蜷川幸雄の作品の舞台通訳としても活躍。
20年より「Ping Chong + Company」ティーチングアーティストとして在籍。
日本の劇場でも演劇教育の講師を務める。
pingchong.org
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