在米日本人の健康と医療をサポートする「FLAT・ふらっと」がお届けする連載。アメリカで健康な生活を送るために役立つ情報を発信します。
3月は大腸がんの啓発月間です。運動不足や超加工食品の多い食事、体重過多などさまざまなリスク要因によって、大腸がんを発症することがあります。最近では若年での大腸がん発症が増えてきたことから、アメリカでは45歳から定期的な大腸がんのスクリーニング検査が推奨されています。
FLAT・ふらっとのサポートミーティングに参加しているニューヨーク在住の伊藤さんも、若年で大腸がんを体験しました。アメリカでの治療を経て、現在はフォトグラファーとしての仕事を再開し、妻とともに2児の子育てに励みながら元気に活躍しています。今回は、伊藤さんに大腸がん体験を語ってもらいました。
突然の大腸がん発覚
2024年の夏、私は1年ぶりに日本に一時帰国をした。妻は仕事の都合で休みが取れれず、娘と2人での帰国となった。滞在中、私の住んでる地域で無料で健康診断が受けられると知り、家からも近かったので受診することにした。その際、久しぶりに検便も行った。1週間後、検診結果を聞きに病院を訪れると、検便に血液が混ざっていることが分かり、念のため大腸内視鏡検査を受けるよう勧められた。まだ40代半ばで、痔の影響だろうと高をくくっていた私は、気が進まなかったものの、検査を受けることにした。
事前に下剤などで準備をして、いざ検査に臨んだ。開始から30分ほどたった頃だろうか。麻酔で意識が朦朧とする中、医師が画面を見ながら言った。「大腸がんがあります。おそらくステージ3くらいでしょうかね。まあ、あなたの場合は若いので、手術すれば問題ないでしょう」
その場では言われたことをすぐに飲み込めなかった。しかし帰宅後、徐々にその深刻さが身にしみてきた。どうしていいか分からず、あたふたしながら両親と妻に告げた。みんなショックを隠せない様子だった。
がんに人生を支配されない
翌日から娘とタイ旅行する予定だった。こんな時に旅行に行っている場合かとも思ったが、生検の結果が出るまで何もできない。お盆を挟むため結果は3週間後だという。そこで、ここはひとまずがんのことは頭から追い出し、旅行を楽しむことにした。
旅の前半は特に異変を感じなかったが、後半になると、謎の倦怠感に襲われるようになった。がんの告知を受けた影響なのかは分からない。その後、便の異常にも気付くようになった。
米国でがん治療に臨む
生検の結果を待たずにアメリカに戻らなければならなかった。日本で治療を受けることも考えたが、長期に及ぶ可能性を考え、家族のいるアメリカで治療を受ける決断をした。
アメリカに帰国後、主治医を決め、状況を説明するところから始めた。時間はかかったものの、主治医から腫瘍内科医(オンコロジスト)、そして外科医へとつないでもらい、比較的スムーズに手術日が決まった。
手術は7時間に及び、術後、麻酔が切れた時の痛みは強烈だった。2、3日は身動きもつらい状態が続いたが、1週間後に退院し、その後2週間ほどリハビリを行った。体が動けるようになってきた頃、約3カ月の抗がん剤治療が始まった。治療はそれで一区切りとなったが、抗がん剤は、私にとって決して楽な経験ではなかった。
がん体験での心の変化
診断を受けてからの心の変化を振り返ると、最も不安だったのは、手術が決まるまでの時期だった。手術後は、あとは踏ん張るだけだという思いで、比較的落ち着いていたように思う。
治療が全て終わった後は、CTスキャンなどで経過を確認してもらいながら、体をいたわって過ごしている。私の場合、幸い排便障害などはなかったので、比較的早く以前の生活に戻れたのだと思う。
がんを経験し死と向き合う中で、命の尊さを真摯に感じた。これからは惰性で日々を過ごすのではなく、やりたいことに全力で向き合う人生を送りたいとより強く思うようになった。
抗がん剤の治療を始めた頃、FLATの存在を知り、がん患者のサポートミーティングに参加するようになった。同じ経験をした人にしか分からない思いやささいな出来事を共有できる場は心強かった。治療を終えて1年が過ぎた今も、聞きたいことはなくとも、率直に語り合えるこの温かなグループへの参加を続けている。
FLAT・ふらっとの健康に関する過去のウェビナーは、YouTubeチャンネルでアーカイブを視聴できる。

伊藤純一 フォトグラファー
2005年に渡米。ニューヨークを拠点に活動している。2児の父。自身のがんの経験をきっかけに、FLATなどがん患者のサポートミーティングに定期的に参加している。インスタグラム @byjunichiito
●サポートミーティング情報●
乳がん、婦人科がん、その他のがん、転移がん、自己免疫疾患患者さんのためのサポートミーティング、シニアカフェなどをオンラインで定期開催中。参加費は無料。
スケジュールや詳細は、FLATのウェブサイトをご参照ください。この他にも、一般の方にもご参加いただけるウェビナーなども実施しています。

「FL AT・ふらっと」は、がん患者や慢性疾患、高齢者、特別支援が必要な子どもを持つ保護者、介護者など、在米日本人の健康を、広い範囲でサポートする団体です。
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