巻頭特集

サンクスギビング特集ー ニューヨーカーに愛される手作りパイ

伝統も個性も味わえる、NYパイの名店セレクション

 

職人技が光る、“絶対外せない”パイスポット

ローワーイースト地区に本店を構える「ピーティーズ・パイ・カンパニー」は、“最高の素材から最高のパイを”を掲げる、ニューヨークでも屈指の人気パイ専門店。焼き上がりを待つ常連客が朝から列を作り、週末やホリデーシーズンには売り切れが続出するほどの人気ぶりだ。オールバターで仕上げた香ばしいクラストに、季節のフルーツやナッツをたっぷり使ったパイはどれも端正で、おいしさに妥協がない。看板のアップルパイはもちろん、ソルトキャラメルやチェリーなど、素材の風味をまっすぐに引き出した味わいは、多くのフードライターやスイーツ好きから“地元でもっとも信頼できるパイ”と評されるほど。手作りの温かみと熟練の技が同居した一皿は、訪れるたびに新しい感動を与えてくれる。いまやニューヨークのパイ文化を象徴する存在と言えるだろう。

Petee’s Pie Company

61 Delancey St.

TEL: 212-966-2526 / peteespie.com

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実食レポ 

同店のこの時期に人気のパイ 3品を実際に味わってみた。

パンプキンパイ

王道の秋を味わう、バランスの良いクラシックパイ

しっかり焼き込まれたフィリングが特徴で、トッピングがないぶん安定感があり、崩れにくい。重すぎず甘さも控えめで、シナモンの香りがほのかに広がる、まさに“アメリカンの秋”を象徴するような味わい。どんなシーンにも合わせやすい、王道の一品。

グァバマスカルポーネ

フルーティーな酸味が際立つ、華やかな一皿

ひと口目から広がるグァバの力強い酸味が印象的で、フルーツの存在感がしっかり。甘さ控えめのマスカルポーネが酸味を引き立て、淡いピンク色のビジュアルも魅力。グァバ好きにはぜひ試してほしい味。やや柔らかく崩れやすいので注意が必要。

バナナクリーム

まったり甘く、心ほどける優しいデザート

しっかり甘いバナナフィリングに、軽やかなホイップクリームが重なる王道パイ。全体にまろやかで角のない味わいは、誰もがほっとする親しみやすいおいしさ。フィリングとクリームのバランスがよく、最後まで重たくならずに楽しめる仕上がりがグッド。


 

焼きたての香りが広がるホリデーの贅沢スイーツ

同店人気のチョコレートバブカのパイ

マンハッタンに5店舗を展開する「ブレッズベーカリー」。同店のパイは“焼きたて”にこだわり、素朴でいて上質。サンクスギビング用メニューは26日(水)まで販売され、翌日分のプレオーダーは当日午前10時30分までの申し込みが望ましい。伝統的な米国の味を丁寧に仕立てたパイの中でも、しっとりと深い甘みのパンプキンパイや、果実の酸味とバター香るクラストが調和したアップルパイは、食卓に温かさを添える定番として親しまれている。

Breads Bakery(ユニオンスクエア店)

18 E. 16th St./TEL: 212-633-2253

breadsbakery.com


 

圧巻のショーケースが迎える、ホリデー気分を高める一軒

ドイツ伝統のパイ「アップルシュトゥルーデル」

クイーンズ区を中心に展開する人気店「マーサーズ・カントリー・ベーカリー」。ショーケースには、クリームやフルーツがたっぷりとのったアメリカンなケーキやパイがずらりと並び、その迫力は思わず圧倒されるほど。バターの香りがふわりと広がる焼き菓子は、どれも丁寧な手仕事を感じる温かな味わいで、夜遅くまで営業しているため、温かいコーヒーと共に甘い一皿を楽しめるのも人気の理由。

Martha’s Country Bakery(アストリア本店)

36-21 Ditmars Blvd., Astoria, NY 11105 /TEL: 718-545-9737

marthascountrybakery.com


 

クランブル好き必見。老舗が誇る濃厚アップルパイ

名物の「サワ ー・クリーム・ アップル・ウ ォルナッツ・ パイ」

今年で40周年を迎えたヘルズキッチンの老舗「リトル・パイ・カンパニー」で外せないのが、名物サワークリーム・アップル・ウォルナッツ・パイ。薄切りリンゴが甘いサワー・クリーム・フィリングにぎっしり詰まり、クルミ入りの厚めのクランブルが香ばしく、濃厚な味わいが特徴だ。ピーカンナッツやアップル、ミシシッピマッド、パンプキン、期間限定のスイートポテトなど、数量限定のパイも充実。店頭またはオンラインで予約ができる。

Little Pie Company

424 W. 43rd St./TEL: 212-736-4780

littlepiecompany.com


 

受け継がれる家庭の味、心温まるスイート・ポテト・パイ

「グランマの スイート・ポ テト・パイ」

ハーレム地区で愛され続けるソウルフードの老舗レストラン「メルバズ」。ここで味わえるのは、どこか懐かしく優しい家庭の味。中でも祖母のレシピを受け継いだ“グランマズ・スイート・ポテト・パイ”は知る人ぞ知る特製パイとしてファンが多い。ほんのりと焼き色の付いたクラストと、ふっくらとなめらかなフィリングのコントラストが絶妙で、食べ進めるほどに幸福感が広がる。

Melba’s

300 W. 114th St./TEL: 212-864-7777

melbasrestaurant.com


パイの歴史的背景・食文化ー なぜパイを食べるようになったの?

感謝祭(Thanksgiving)の起源は17世紀のピルグリム(清教徒)たちがニューイングランドに渡った時代にさかのぼる。当時、欧州からの移民が持ち込んだ「パイ」は保存性が高く、家庭で作りやすい料理だった。肉や野菜を詰めて焼く“セイボリーパイ”が主流で、やがて果物やかぼちゃなどを使った“スイートパイ”へと発展した。

秋の収穫と食材

感謝祭は「秋の収穫を神に感謝する祭り」。11月後半はちょうどりんごやかぼちゃ、ピーカンナッツ、サツマイモなど秋の食材が豊富な時期。これらの収穫物を使ったデザートとして、アップルパイ、パンプキンパイ、ピーカンパイ、スイート・ポテト・パイなどが自然に感謝祭の食卓に並ぶようになったといわれている。

パイを自宅で作りたい人におすすめの総合レシピ&技術系サイト

King Arthur Baking Company

創業230年以上の老舗製粉会社。パ イ生地やクラストの解説が圧倒的に 詳しく、テクニック記事が豊富。動画 付きで失敗しやすい工程(縮み・割 れ)も丁寧に解説している。

America’s Test Kitchen / Cook’s Illustrated  

科学的な検証で知られる料理研究 チームによるサイトで、『The Perfect Pie』著者陣によるレシピ動画も充実。 素材の温度、食感比較など理系アプ ローチで上達したい人向け。

Taste of Home 

米国中の家庭の“おばあちゃんレシ ピ”が集まる投稿型サイトで、地方 ごとの家庭の味が知りたい人にお すすめだ。「State Pies」「Best Pie Recipes of All Time」など特集も楽 しい。

 

 

               

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