アートシーンの最新情報 upcoming exhibition NY

アートシーンの最新情報 upcoming exhibition NY

ニューヨークのアート情報コラム「Upcoming Exhibition NY」

進化し続けるニューヨークのアートシーンの最新情報をいち早く読者の皆さまにお届け。

今月はThe Metで開催される注目のエキシビションとそのオープニングを飾るMet Galaについて解説

 

Costume Art   at The Met Fifth Avenue in Gallery 099

<開催期間 : 2026年5月10日〜2027年1月10日>

 

身体という名のキャンバス

 メトロポリタン美術館の服飾部門である、コスチューム・インスティテュートが手がける春の特別展「Costume Art」が、今年もオープニングを祝う「メット・ガラ(Met Gala)」を皮切りにスタートする。本展はファッションと美術の関係を根底から捉え直す意欲的な試みである。
展覧会はメトロポリタン美術館のグレートホールに隣接する、約1,115平方メートルにおよぶ新常設ギャラリー、「コンデ・ナスト・ギャラリー(Condé M. Nast Galleries)」の開館に合わせて開催される。“衣服をまとう身体”を出発点に据え、5,000年にわたる同館のコレクションを横断しながら、衣服と身体がいかに芸術の中心的役割を担ってきたかを浮かび上がらせる。絵画や彫刻、写真といった多様な作品と、歴史的・現代的な衣服を並置することで、従来分断されてきたアートとファッションの境界を揺さぶり、新たな視座を提示する。

 本展の特徴は、衣服の造形美にとどまらず、「身体」そのものの意味に踏み込む点にある。古典的なヌードや理想化された身体像に加え、老いや妊娠、解剖学的視点といった多様な身体のあり方を取り上げ、ファッション業界が提示してきた限定的な身体観を超えた広がりを示す。また、鏡面の頭部を持つマネキンや実際の身体のキャストを用いる展示手法により、鑑賞者自身の身体感覚を巻き込み、“見ること”の経験そのものを問い直す構成となっている。
ファッションを美術の周縁から中心へと押し上げると同時に、既存のヒエラルキーを解体し、身体と芸術を等価に捉え直す―その強い意志を体現する展覧会である。

 

メット・ガラとは  What is Met Gala?

 メトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュートの特別展オープニングを飾る、世界最高峰のファッションチャリティーイベント。1995年にスタートしたこのイベントは、毎年5月の第1月曜日に同美術館で開催され、今年は今月4日開催予定。米国版VOGUE誌編集長のアナ・ウィンターが主催する完全招待制のイベントで、テーマに沿った豪華絢爛なセレブ達の衣装が話題となる。正式名称は「コスチューム・インスティテュート・ガラ」で、コスチューム・インスティテュートの活動資金を集めるためのチャリティイベントという側面を持っている。招待客以外が席を確保する場合、チケット代は1名あたり数百万〜数千万円(約3万〜3万5000ドル以上)にものぼると言われ、その収益はすべて美術館の運営や収蔵品の維持に役立てられている。

 

Ensemble 
アンサンブル / リカルド・ティッシ(ジバンシィ)

2010–11年秋冬ジバンシィのオートクチュールコレクション作品。繊細なレース使いが特徴。

 

The Mortal Body 
暁斎漫画 / 河鍋暁斎

幕末から明治にかけて活躍し「画鬼」と称された絵師、河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい)の代表作品。

 

“Corset Anatomia” ensemble
アンサンブル:「コルセット・アナトミア」 / レナータ・ブッツォ

人体解剖図から着想を得た、2025年春夏コレクション「O Corpo(身体)」の作品。「Costume Art」のメインビジュアルの一つ。

 

The Anatomical Body 
解剖学的身体:《人体解剖書(第33図版)》 / ゴーファルト・ビドロー

医学史と美術史の両面で極めて重要な作品で、「ありのままの死体」を冷徹なまでに写実的に描いている。1685年アムステルダムで出版。

 

Ensemble
アンサンブル / 川久保玲(コム デ ギャルソン)

1997年春夏コレクションの一つ。服は身体のラインに沿うべき」という西洋ファッションの伝統的な美意識に対する鮮烈なアンチテーゼであり、既存の女性美の基準を解体する試みであった。

 

The Reclaimed Body: La Poupeé
再構成された身体:《ラ・プペ》(人形) / ハンス・ベルメール

1930年代、ナチス・ドイツの「理想的で統制された身体」への価値観に対抗するかたちで制作された人形作品。

 

 

The Metropolitan Museum of Art         1000 Fifth Ave.

 

※ 詳しい情報はホームページでご確認ください。

               

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