毎日働き続け&#
私自身の体験「まさかのアキレス腱損傷」(Vol.45)
現代に生きる老若男女が健康でいるための生活のポイントを、カイロプラクターのドクターベルモンテが教えてくれる連載。
日々の繰り返しがある日…
加齢と負担の蓄積がけがに
いつもこのコラムでは患者さんの話ばかりしているので、たまには私自身のけがの体験を話そうと思います。とんでもない体験でしたが、自分がけがや病気を体験することで、患者さんの立場にも立てるわけで、ある意味いい勉強になりました。
日常生活が招くけが
昨年夏、イタリアを旅行してきたのですが、その間毎日長距離を延々と歩きました。平坦な道だけでなく、坂を上っては下りの繰り返し。そうやって現地では元気に旅の日程をこなし、ニューヨークに戻ってきて2カ月ほど経った10月のこと、右の足首のアキレス腱に少し違和感を感じました。そして数日後、突然激痛に襲われたのです。それまでの自分の人生で体験したことのない痛みで、足に体重を乗せることができず、歩くこともできませんでした。
しばらく抗炎症剤を飲むなどして様子を見ましたが、一向に治る兆しがないので、提携するスポーツ医学専門医とペインマネジメント専門医に診てもらうことに。MRI(核磁気共鳴画像法)を撮ったところ、右足首のアキレス腱一部損傷(英語ではtear)と、靱帯の損傷が示され、まさかの結果に驚きました。これまで捻挫もしたことがなく、けがの既往歴ゼロなのに、突然アキレス腱損傷とは。
しかし考えてみれば、こういったけがはある意味典型的なのです。スポーツで瞬時に起こるけがもあれば、長年の日常動作や趣味のスポーツでの繰り返し動作による負担が蓄積し、ある日突然「沸点」に達するのです。中年以降になると、そこに加齢という要素も加わります。私の場合、全部ですね。激痛はイタリア旅行の後に起こりましたが、そこまで行くにはおそらく何年もの下地があったものと思われます。
自分の治癒力が頼り
ところで、私の症状は手術の対象にもならなければ、特に治療法がなく、途方に暮れました。血小板を血管に注入し治癒を促進する療法や、ショックウエーブによるセラピーがあると説明を受けましたが、いずれも保険は効かない、治る保証もないという八方塞がり。つまりは、患部により多くの血液(治癒に必要な栄養分)を供給し、自己治癒を促すしか方法はないということでした。それなら私の専門分野。自分のクリニックでできることを試みることにしました。
血流を促すために私が毎日やったことは、お湯に足首を浸し、小型のマッサージガン(写真参照)で患部を刺激し、ふくらはぎを自分でマッサージすること。セラピストによる患部周辺のマッサージも受けましたが、これが痛かったこと。涙が出そうでした。
その上で、市販のヒールリフトを両方の靴の中に入れたことが功を奏したと思っています。アキレス腱は伸縮するゴムのようなもので、負担を軽減するには伸縮域を狭めてやる必要があるからです。そうすることで、無理なく歩くことができるようになりました。
結果的には、激痛が起こってから治るまで約3カ月。私の場合、アキレス腱の損傷だけで済んだのでまだ良かったですが、仮に放置して、完全に「切れて」しまうと手術するしかありません。そうするとギプスで3カ月、リハビリで半年です。それだけは避けたかったので、自己治癒とセラピーに励みました。
今はもう痛みもなく、この夏はスペインに行って歩いてきました。今でもマッサージガンによる刺激と、ふくらはぎの強化運動、ストレッチを続け、靴にヒールリフトも入れて足裏を保護することで、アキレス腱に負担がかからないよう気をつけています。
以上、日常動作による負担の蓄積が原因のけがもあること、その治療法など、参考になれば幸いです。
ジョン・J・ベルモンテ 先生
John J. Belmonte, DC
E. 53 Wellness院長。カイロプラクター(Doctor of Chiropractic)。全米カイロプラクティック協会会員、ゴルフPGAツアー・スポーツ医学チーム所属。アスリートのけがの治療、妊娠中の痛みの緩和、成長期の子供のカイロ治療も手掛ける。
E. 53 Wellness
211 E. 53rd St./TEL: 212-980-4211
e53wellnessnyc.com
今月の教訓!
「痛みの原因は数年前から」
痛みの部位は異なれど、来院される患者さんの多くは「昨日から痛い」と言われますが、その痛みの原因は多分数年前から始まっています。私が体験したアキレス腱の損傷もそうですが、ひたすら歩くゴルフや、瞬発力が必要なスポーツ、ジョギングやマラソンなど、趣味による負担の蓄積が原因のことが多々あります。特に中年以降は要注意。アキレス腱保護には足裏のケアが大事です。まずは市販のヒールリフトを試してみてはどうでしょう?
リクエスト募集中▶ドクターベルモンテへの質問や取り上げてほしいテーマについてはeditor@nyjapion.comまで!