もう夏が終わ&#
米映画演劇界で活躍する日本人女優アコ・ダックスさんに聞いた
最新ブロードウェーの魅力
─ご出演された中で印象的な舞台劇は?
ペーパー・ミル・プレイハウス制作のSAYONARA(マーロン・ブランド主演の同名映画の舞台化)や、プライマリ•ステージズ上演しアジア人で初めてルシルローテル賞の主演女優賞にノミネートされたリア•ナナコ•ウィンクラー作の「God Said This 」のまさこ役、オレゴン・シェークスピア・フェスティバルで上演した『Throne of Blood』(『蜘蛛巣城』黒澤明監督の同名映画を著名演出家ピン・チョンが舞台化)などは素晴らしい経験でした。
─米国の映画演劇界で苦労されたことは?
演技面ではあまりありませんが、例えば日本が舞台の作品などでは、衣装部に和服の着こなしに理解が少なくて、なかなか意見を聞いてもらえず、最後には自宅に持ち帰って自分で直したりしたこともあります(笑)。
─他国の演劇とブロードウェーの違いは?
お芝居を演じることに関しては日本もブロードウェーも同じですが、もちろんここでは掛けるお金の規模が段違いです。実はミュージカルで大事なのはコーラスと呼ばれる脇役のダンサーたちです。ブロードウェーはその層が厚い。ここにしっかりしたベテランを集めれば、いい舞台になるのです。リハーサルのメーンもダンスの振り付け。その後で歌を入れて、最後に芝居部分を稽古します。うまいコーラスの役者の経歴をよく見ると多数の有名作品に出ています。ブロードウェーの見どころはそんなグループワークの成果だと思います。
「SHOGUN 将軍」に出演のアコさん
─アコさんにとってのブロードウエーの魅力とは?
ミュージカルもビジネスなので失敗しないためには、誰もがよく知っているポップス曲を使ったり、有名歌手を主役に据えるなどセーフティーネットを使って集客を図る作品が増えています。ショーとしては楽しいですが、個人的には、オフブロードウェーなどの小劇場での試験公演から始まって大劇場に勝ち上がってきたようなチャレンジングな舞台が好きです。現在上演中の作品では、「ヘイディズタウン」(2019年開幕。ギリシャ悲劇をベースにした意欲的な作品)、「ハミルトン」(2015年開幕。米国初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの一代記をラップでつづるミュージカル)、そして「ジプシー」がおすすめです。「ジプシー」は古典的な名作のリバイバルですが、主演のオードラ・マクドナルドは、輝かしいキャリアがあり今のブロードウェーを代表する歌手。最高に脂が乗った彼女の歌唱と演技は、一生に一度は見ておく価値があると思います。
宝塚音楽学校主席卒業。歌劇団月組で活躍。退団後は藤間紫門下となり師範名執「藤間公紫」をもらう。1981年にニューヨークに移住。その後、舞台、テレビ、映画と幅広く活躍し、2018年に日英語劇団『AMATERASU ZA』を設立。昨年米国で大ヒットしたドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」(Hulu/FX)に出演。昨年、半自叙伝「It’s Me Ako」(幻冬社)を刊行。
www. ako-actress.com
アコさんのおすすめ3作品
ジプシー
1959年にブロードウェーで初演された作品で、バーレスクスターとして知られるジプシー・ローズ・リーの回顧録を基にした物語。
【会場】Majestic Theatre(245 W. 44th St.)
【上演時間】2時間40分
gypsybway.com
ハミルトン
たったー人で多くの偉業を成し遂げた米国建国の立役者、アレクサンダー・ハミルトンの生涯をヒップホップやジャズに乗せて描く。
【会場】Richard Rodgers Theatre(226 W. 46th St.)
【上演時間】2時間45分
hamiltonmusical.com
ヘイディズタウン
2019年のトニー賞の作品賞を受賞した実力のある人気作。ギリシャ神話を元に、地下世界と地上世界で繰り広げられる愛を描く。
【会場】Walter Kerr Theatre(219 W. 48th St.)
【上演時間】2時間30分
hadestown.com
お得なチケットの買い方
TKTS券売所はタイムズスクエアの大階段下に。昼公演なら前日に買える演目もある
とかく「ミュージカルは高価」なイメージがあるが、当日券の残部を半額近い値段で提供するTKTSを利用すると便利。ちなみに前ページで紹介した4作品は全てこの制度で購入。平均1公演100ドルの出費で、1階席の前から15番目以内の良席で鑑賞できた。TKTSの営業時間は、タイムズスクエアは水・木・土曜の午前11時〜午後8時、日曜の午前11時〜午後7時、月・火・金曜の午後3時〜8時、リンカーンセンターは火〜土曜の午前11時〜午後6時。
チケットの入手可能性と割引率は日々異なるが、電光掲示板に情報が出る。一見、長い列にたじろぐも、意外に早く順番は回ってくる。見たい作品に迷ったら、列のそばでチラシを配る人たちに聞くのがいい。彼らは怪しい詐欺師ではなく観劇振興会のスタッフ。上演中の全芝居の内容を手短に説明してくれる。