ニューヨーク仕事人名鑑

ニューヨーク仕事人名鑑 #56 竹本樹一郎さん

困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。


日米両国でプロアスリートの施術経験を持ち、現在はスポーツマッサージと鍼灸、そしてリンパケアを取り入れた整体を提供している竹本樹一郎さん。既に経験と技術がありながらも、ケアの研究を重ね、全く新しい方法でアプローチをする施術を独自で開発。その評判が口コミで広がり現在予約が殺到しているそうだ。そんな竹本さんに開発するまでの道のりを聞いた。

母親の病気がきっかけで鍼灸師と出会い体験した奇跡

竹本さんが整体師の道へ進んだ理由は母親が子宮筋腫を患ったことがきっかけだったそう。「子宮摘出が必要だと医者に告げられました。そんな時、近所に住んでいる鍼灸師の方と母のことを話す機会があり、『針とお灸で治してあげるよ』と言われたんです。すると、通い始めてからすぐに腫瘍が消えて手術なしで完治しました。最初は信じられませんでしたが、話を聞くと、その鍼灸師の方の師匠が世界的に有名なトップアスリートの施術をされている方だったのです。それで、整体に可能性を感じました」

子供の頃から野球に打ち込んでいたこともあり、筋トレや筋肉のケアにも興味のあった竹本さんはスポーツトレーナーの道を目指すべく専門学校へ進学する。20歳の頃、語学留学を経験したこともあり、米国でスポーツ医学の進学を検討するもある問題に直面する。「大学を卒業してもビザの関係で就きたい仕事に就けず、技術を磨きたくても磨けず、夢を諦めざるを得ない先輩たちの姿を目の当たりにしました」。そこで竹本さんは、自身が思うベストな環境に身を置き、着実に技術を磨いてから海外で挑戦しようと決意し日本へ完全帰国することに。

「今だ」と思えるタイミングで永住権当選

帰国後、鍼灸院などで働き、スポーツトレーナーとしての経験も積んでいた34歳の頃、グリーンカードが当選。満を持してニューヨークで活躍の場を広げることになった竹本さん。いざ来てみて、ニューヨークの整体は日本と比べてライバルが少なく競争率が低いと感じたそうだ。しかし、現実は甘くなく、軌道に乗るまでかなり時間を要したそう。 「たくさん勉強して、努力もして、経験も積んできましたが、『ビジネスをする』という要素が自分に欠けていることに気がつきました。盲点でした。友人にウェブサイトを作ってもらったり、宣伝したりしましたが、それでも限界があります。そこで、誰にも真似できない技術を生み出して、『ビジネス』要素に左右されないよう、実力でぶち抜いたら面白いんじゃないかと考えついて、一から学び直すことに決めました。ここ数年、整体師やスポーツトレーナーの方たちに実際に会いに行き、いろいろ学ばせていただきました。そして、高齢者やプロアスリート、プロダンサーなどさまざまな方を施術してしばらく研究に没頭しました。」

その甲斐あって1年程前に、独自で新しい施術を生み出すことに成功。半年前から予約が殺到するまでになったそう。「苦手なことは勉強できませんが、好きなことならとことん突き詰めたくなるので」と勉強家で努力家の一面を見せる。竹本さんの成功の秘訣は、どんな状況においても学ぶ姿勢を大切にすることのようだ。

 

竹本樹一郎さん

スポーツ整体師、プロスポーツトレーナー

来米年: 2014年
出身地: 岡山県

好きなもの・こと: 野球

特技: 筋肉を緩めること

2002~03年に日本プロ野球チームのボディーケアに同行、05年には男子元賞金王プロゴルファーのサポート、来米後はラグビー米国代表選手の施術やUSオープンテニス出場選手、日本プロ野球選手の施術を担当するなど活躍。また、高齢者・障害者のリハビリ・マッサージに従事した経験もある。kiichiro-nyc.com

               

バックナンバー

Vol. 1318

私たち、こんなことやってます!

患者さまの歯を一生涯守り抜く、高品質で長持ちする歯科医療を目指すDental Serenity of Manhattanのチャン院長と、人と人とのつながりを大切にし、お客様に寄り添ったサポートを心がけるCOMPASS不動産エージェントの石崎さんに話を聞きました。

Vol. 1317

ソーバーオクトーバー 一カ月の休肝がもたらす静かな変化

お酒をやめることは、意志の強さの証しではなく、自分の調子を取り戻すためのセルフケアの一つ。世界中で広がる「ソーバーオクトーバー(禁酒月間)」は、心身のバランスを見つめ直す、穏やかな一カ月の習慣。飲まないことで見えてくる「自分」を、少しの勇気と共に体験してみませんか。

Vol. 1316

知りたい、見たい、感じたい 幽霊都市ニューヨーク

ハロウィーンまで残すところ3週間。この時期なぜか気になるのが幽霊や怪奇スポットだ。アメリカ有数の「幽霊都市」ニューヨークにも背筋がゾッとする逸話が数え切れないほど残っている。こよいはその一部をご紹介。

Vol. 1315

ニューヨークの秋 最旬・案内

ニューヨークに秋が訪れた。木々が色づきはじめるこの季節は、本と静かに向き合うのにぴったり。第一線で活躍する作家や編集者の言葉を手がかりに、この街で読書をする愉しさを探ってみたい。