サミュエル・&#
「下着業界の異端児」そんな言葉が当てはまる一人の男がいる。ユニークなデザインと高品質を追求したアンダーウエアで大手メーカーの独占された市場に乗り込む「アルファベットシティー」の代表・渡辺成明さんにインタビュー。
15歳からラップや楽曲制作など音楽活動をしていた成明さんは、さらにスキルを磨くためニューヨークに拠点を移す。しかし、理想と現実、音楽に対する情熱に少しずつ変化が生まれ、25歳の時に活動を休止。これまでクラブ通いだった生活を一新すべく始めたワークアウトで、運動にも適したアンダーウエアの存在に着目した。 「肌触り、快適さと通気性、そしてデザイン性を兼ね備えた男性下着でスポーツウエアとしても着用できるものが周りにないことに気がついた瞬間でした。洋服作りをしている先輩に一度、自分が理想とするような下着を作って欲しいと依頼したら『生産がすごく難しいんだよ』と言われました。こんなに大きな市場なのに、どうして何年も大手メーカーばかりが売り場を占領しているのだろうと、その時に興味が沸いたんです。常に商品開発が進んでいる女性用に対し、男性用は1940年代くらいから大きく変わっていないんです。」と成明さんは、男性下着の市場規模やシェア、成長に関して可能性を感じ、遊び心のある斬新なデザインと機能美を追求したモノ創りをスタートさせた。
答えは一つじゃない、着こなしは自由
「ぼくが作る商品は下着として、またトレーニングウエアや部屋着として自由に楽しんでもらいたいです。実はデザイン上、男女兼用の構造をしているので、ショートパンツ、またはヨガウエアにも取り入れることが可能です。いろいろなカルチャーに精通したデザインのバリエーション展開をしているので、多くの人に手にとってもらえるようなブランドに成長できたらと願っています」
ブランド名である「アルファベットシティー」は、以前に成明さんが住んでいたイーストビレッジ地区の一角からインスパイアを受けて名付けたそうだ。人種やジェンダー、多様性と文化の交差点ともいえる場所で、大小や階級の違いに囚われず、オリジナルを主張するスタイルをブランドのコンセプトにしている。
CrossFitやHIITなどの高強度運動から、ヨガのような繊細な動きまで、抜群のフィット感を提供。1日中快適に過ごせるデザイン
ブランドを立ち上げてから早くも出た反響
「有難いことに、ハリウッド映画にも出演している方やメッツの選手、アスリートの方々などにもご愛用いただいて、また口コミで評判が広がっている感じです。現在はオンラインのみの販売ですが、先日ロサンゼルスでポップアップ販売をして、現地での反響がよかったので、今後もいろんな形でプロモーションができればと、検討中です」と気概を見せる。
しかし、ここまでの道のりは困難の連続だったと成明さんは話す。「縫製工程で工場とのやりとりは本当に苦労しました。そして、商品の開発から生産、配送、マーケティング、ウェブサイトの制作と、全て一人なので物理的に手が回らない時もあります。しかし、来米して自分がもっているスキルや将来について考える時間をもてたのが幸いで、『絶対に妥協しない。いいモノを創る』と冷静な気持ちで、ここまでブレずに丁寧に進めることができたのだと思います」
メッツ在籍時のジェフ・ブリガム選手。スタイリッシュなデザインと機能性で、一流アスリートの間で愛用者続出
業界の頂点を目指して
自身のブランドを大きく成長させることを目標に掲げる成明さんは、この一見成熟したように見える男性下着市場は、まだまだ未開発だと感じるそうだ。「夢は、男性下着業界の王様になりたいです。現在市場に出回っている男性下着ブランドを日々研究していますが、まだ僕が『すごいな』と思うブランドは見当たりません。ですから、トップを目指して挑んでいきたいです」と熱く語ってくれた。ニューヨークで新たな境地を開拓する成明さんの「アルファベットシティー」から目が離せない。
渡辺成明さん
ALPHABET CITYのCEO兼デザイナー。東京生まれ。2011年来米。ラップ、ビートメーキング、プロデュース、レコーディングエンジニアを経て、2023年に男性下着ブランドを立ち上げる。趣味は料理にトレーニング、アート。