ジャピオン編&#
野球の本場・米国で活躍する日本人メジャーリーガー。取材現場で感じた選手の“今”の思いや状況を深掘りするコラム。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が終わり、MLBが開幕した。私にとって、ニューヨークに移住してから11年目のシーズンを迎える。サンケイスポーツの社員時代とは違う労働環境だが、今も好きなメジャーリーグの環境で仕事ができることに感謝している。そして、早くも開幕から1カ月が過ぎた。
私は今季の開幕は、ホワイトソックスの取材でミルウォーキーに出張した。村上宗隆内野手(26)をヤクルト時代から長年取材し、米国に出張しているサンケイスポーツの赤尾裕希記者に同行しながら3試合を取材した。そして、日本選手初のメジャーデビューから3試合連続ホームランの現場に立ち会うことができた。印象的だったのは、一喜一憂せずに現状を見つめていたこと。大喜びする姿はなかった。「こっちで活躍することが僕にとって大事なことですし、ここで野球をして、スタメンに名を連ねるだけじゃないのでね。ここにいるすごい選手たちと戦って、倒していくしかない」。目標はただメジャーリーグの試合に出場することだけではなく、長く活躍すること、という試合後の言葉が印象的だった。ホワイトソックスとは2年契約だが、当然のようにその後も長期契約を狙っている。成績の浮き沈みはあるものの、持ち前の長打力は十分に発揮している。この原稿を書いている時点では、村上は「メジャーデビューから22試合時点で8本塁打は、歴代日本選手として最多」の記録を作った。さらに「1900年以降の近代野球史においてデビュー22試合で5本塁打以上、20四球以上」をマークした初めての選手となった。各種のデータ指標でも空振りやコンタクト率にやや弱点はあるものの、打球速度や平均打球速度などパワーヒッターを表す数値は、軒並みメジャーでも上位5%以内に入っている。確かに打率は2割台前半かもしれないが、メジャーで強打者の指標として一般化しているOPS(長打率と出塁率を足した数値)は、9割台に乗るなどパワーヒッターとして確かな評価を得つつある。
シカゴ、ニューヨーク、カリフォルニアを巡る
ホワイトソックスの開幕シリーズの取材を終えると私は、シカゴに移動してカブス対エンゼルスの取材。その後は、ホワイトソックスのホーム、シカゴでの開幕シリーズをカバーした。そして、ニューヨークに戻ってメッツの千賀滉大投手(33)の練習を取材。久しぶりに顔を合わせると「あれ? ホワイトソックスの取材じゃないんですか?」と笑って話しかけてくれた。インスタグラムなどで、私の行動はときどき把握しているようだ。それも、ありがたいことだ。
4月中旬はレンタカーを借りてフィラデルフィアに2泊3日でカブスを取材。自宅からフライトせずに取材できる土地への出張は経費効率もいい。右膝の負傷から復帰した鈴木誠也外野手(31)、好調な今永昇太投手(32)を取材した。そして、今度は2泊、ボストンに向かいレッドソックスの吉田正尚外野手(32)の元へ行く。この取材はJSPORTSさんからの業務委託。出場機会が限られるいわば、不遇な環境で何を考え、どうやって毎日を過ごしているのか。そんな吉田の思いに迫る取材ができたら、とボストンに向かう。その後は、ロッキーズの菅野智之投手(36)がメッツ3連戦のため、遠征でニューヨークを訪れる。ローテーション的には残念ながら先発するスケジュールではないので、登板日を取材することはできなさそう。しかし、これが私に取っては逆にチャンス。登板のない3連戦だからこそ、調整をじっくりとみることができる。さらに先発日が重ならないことでタイミングによっては、個別でインタビューをする機会があるかもしれない。次回のこの欄では、菅野とのやり取りや取材の収穫を書くことができるかもしれない。
その後は、約3週間のカリフォルニア出張へ行く。カブス、ホワイトソックス、ドジャース、エンゼルスを取材する。より多くの日本選手を取材して、独自の情報を得られるように頑張ってきたい。春季キャンプで左股関節を痛めたパドレスの松井裕樹投手(30)がメジャー復帰する頃かもしれない。幸い、サンディエゴには約1週間滞在する。カブスとホワイトソックスが入れ替わりでパドレス戦の遠征に訪れるからだ。毎年のことながら、完全オフのないシーズンの取材がスタート。気力と体力を充実させて、いい情報をお届けできるように走り回ってきたい。
山田結軌
1983年3月、新潟県生まれ。2007年にサンケイスポーツに入社し、阪神、広島、楽天などの担当を経て16年2月からMLB担当。25年3月より、独立。メジャーリーグ公式サイト『MLB.COM』で日本語コンテンツ制作の担当をしながら、『サンスポ』『J SPORTS』『Number』など各種媒体に寄稿。ニューヨーク・クイーンズ区在住。




